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織田と徳川

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「さて、敵がせめて来る気配は無いか……」
 
 結城秀康は織田信雄の陣を見ながら言う。
 数の差は圧倒的。
 まともにぶつかれば勝ち目は無い。
 
「さて、時間稼ぎを……」
「と、殿!」
 
 すると、伝令が駆け込んでくる。
 
「どうした?」
「は、背後に敵勢、約一万が!」
 
 秀康は思わず立ち上がり、後方を見る。
 そこには確かに一万の兵がいた。
 旗印は、織田。
 
「織田だと!? 何故ここにおる!?」
「あ、あの織田は、織田秀則の物だと思われまする!」
 
 しかし、秀康は慌てない。
 
「上田城へと入っていたか!? ……動じるな! 全軍で持って後方の織田勢を蹴散らす! 上田城の包囲に戻るぞ!」
「ご、ご報告申し上げます!」
 
 すると、更に伝令が駆け込んできた。
 
「今度は何事だ!」
「ぜ、前方の織田勢に動きあり!こちらに向けて兵を進めてきておりまする!」
「な……」
 
 秀康は策に嵌った事を自覚した。
 深く息を吸い、椅子に座る。
 
「恐るべし、織田。……侮ったわ。第六天魔王の血筋は侮れんな」
 
 
 
「かかれ! この戦、勝ち戦ぞ!」
 
 織田秀則は自ら槍を振るい、結城勢を蹴散らす。
 秀則は夜陰に乗じて徳川軍の来訪前に上田城を脱出。
 状況次第で信雄を襲う敵の背後、もしくは上田城を包囲する軍を攻める予定であった。

「ぐあっ!」

 すると、前方の敵がみるみる内に突破されて行く。
 
「秀則殿! 良くぞ来てくれた!」
「福島様!」
 
 すると、敵勢をかき分けて福島正則が現れる。
 敵は浮足立っており、挟撃した両織田軍は容易に合流する事に成功していた。
 
「まさかこのような策を思いつくとは……軍師顔負けですな!」
「いやいや、どれも有楽斎様と昌幸様の知恵のお陰にござる」

 秀信は有楽斎の方を見る
 
「私は大したことはしておりませぬ。全ては秀則様のお力にございます」
「……成る程、ご成長なされたようにござるな! ささ、信雄様がお待ちですぞ! ご案内致す!」
 
 福島正則は馬を返すと立ちはだかる雑兵を蹴散らしていく。
 
「どけどけ! 織田秀則様のお通りだぞ!」
 
 その後を有楽斎と秀則は進む。
 
「凄まじいな……」
「それがあの福島正則という男。さ、ついていきましょう」

 秀則は頷く。

「皆の者! 福島殿の後に続け!」
 
 
 
「おお! 秀則殿! 此度の策、お見事にござる!」
「信雄様! お久しゅうございます!」
 
 信雄と秀則は対面する。
 
「信雄殿。お久しぶりですな」
「叔父上。お久しゅうございます。此度の策、叔父上のご助言のおかげですかな?」
 
 有楽斎は首を横に振る。
 
「いえ、助言は致したが、大きいのは真田殿のお力でしょう」
「成る程……儂の息子の秀雄はどうしておりますかな?」
 
 その信雄の言葉に秀則が答える。
 
「は。上田にて真田殿と共に徳川勢を翻弄しておりまする。」
「殿!」
 
 すると、信雄の本陣に伝令が駆け込んでくる。
 
「結城秀康、捕えましてございます!」
 
 信雄は頷く。
 そして、号令をかける。
 
「さて、この勝ち戦。纏めに参ろうか。上田へ参るぞ!」
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