上 下
23 / 36

急変

しおりを挟む
「さぁ、早く吐いた方が楽だぞ。」
「……。」
 
 拷問を始めてからも大統領は頑なに口を開かない。
 友軍の進軍も一時停止している。
 前線では小競り合いが続いている程度に過ぎない。
 
「……爪、伸びてるな。」
「ぐぅっ!」
 
 爪をペンチで挟み、剥がしていく。
 
「どうだ?言う気になったか?」
「……。」
 
 俺はため息をつく。
 椅子に縛り付けられている大統領と目線を合わせる。
 
「……大統領。俺もこんな事はしたくない。やり方はどうあれあんたは世界に平和をもたらした男だ。」
「……じゃあ、やらなければ良い。」
 
 俺はもう一枚爪を剥がした。
 
「ぐうっ!」
「でもわかって欲しい。味方してくれた国も、自国の安全が脅かされると思っているんだ。」

 大統領がこちらを睨む。

「敵対しなければ、侵略はしない。」
 
 俺は爪を剥がした指を掴む。
 
「なぁ、この指どうなると思う?」
「……知らんな。」
 
 そのまま本来曲がるはずの無い方へ曲げる。
 
「がぁっ!」
「そろそろ吐け!段々と手荒になっていくぞ!」
 
 俺は合図を出す。
 
「大統領。これを見てくれ。」
「……っ!」
 
 兵の一人が大統領の前にモニターを持ってくる。
 モニターには目隠しされ、両腕を縛られた一人の女性と一人の少女が写っていた。
 付近には銃を持った男が数名。
 
「き、貴様ぁ!」
「妻と娘が危険にさらされているのなら喋る気も出るだろう?」
 
 俺は合図を出す。
 それを見た仲間は無線を使う。
 すると、モニターに映し出されている親子へ銃が向けられた。
 
「ま、待て!分かった!話す!話すからやめてくれ!」
 
 それを聞いた兵は無線を使い、やめるように指示を出した。
 
「と言っても私が知っていることは……少ない。陸軍参謀総長が管理しているとだけしか。私は上げられた提案を許可するだけだ。」
「そうか。」
 
 ……正直これだけではない気がする。
 直感だがまだ何か隠している気がする。
 
「……まだ話すことがあるんじゃないか?」
「……AIについては……ない。」
 
 俺は拳銃を引き抜く。
 
「含みのある言い方だな。AIについては聞き出せた。俺はいつでも引き金を引けるぞ。今話せば慈悲を与えてやっても良いんだが。」
「……核兵器。」
 
 渋々大統領は口を開く。
 その言葉に反応してしまう。
 
「何だと?」
「数年前の核実験暴発事件。あれは公的には実験中止としているが、本当は続いていた。それがこの事件が始まる数日前に完成した。」
「隊長!大変です!」
 
 尋問室にマイクが入ってくる。
 物凄い慌てようだ。
 大統領は続ける。
 
「前線の友軍が壊滅しました!詳細は不明!ただ、あれは恐らく……。」
「その核兵器は歩兵が携帯できる核兵器。過去のデイビー・クロケットを参考に開発した。核汚染や爆発の威力を抑え、局所的に使えるようにしたものだ。復興も数年で出来るようになっている。」
「まさか……。核か!?」
 
 恐ろしい事が頭をよぎる。
 
「使ったのか!?自国に!?自国民に!?」
「あぁ。我々は敗北しない。それにアメリカ人は核シェルターを持っているものが多いからな。人的被害も少ない筈だ。」
「隊長!友軍より救援要請が!敵が攻勢を仕掛けてきたようです!」
 
 俺は銃をしまう。
 
「総員出撃用意!友軍の支援に回る!マイク!コイツを見てろ!」
「り、了解!」
 
 まさか、このような暴挙に出るとは。
 今はとにかく一人でも多く味方を救おう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話

赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。 「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」 そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...