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「空虚は積めないんです。」
しおりを挟む「逃げていてはいけません」
きっと見出した筈のその先は、鳴り止まない耳鳴りへと形を変えてしまった。
交差点の雑踏と、あの日夢見た海の向こう側。どちらも大して変わらないだろう。きっとそうだろうと思ったのだ。
衝動的に焼いた手首の温度と、心音は等価では無かった。
この部屋には悲しみが溢れていて、そう思いたいと、ただ願っていて。結局のところ、燻った肺だけがひとつ、取り残されていった。
「何も思い残すことなんてないんです。」
遺せるものなど、ありはしないので。
蔑んでいる自分と、ペットボトルだけがそこにはあって。
つまらない郷愁と比較しては、また溜息をつくのでした。
「ただ、それだけの人生でした。」
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