悪魔の誓い

遠月 詩葉

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カネール

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「お願いディラン君!昨日何かに気付いたんでしょ?どんな些細なことでも良いから教えて!」

涙目になりながら私はディラン君に頭を下げた。呆然と立ち尽くす彼を急かしている事実に罪悪感が込み上げてくるが、こちらも必死なのだ。

「兄さんが…?それならやっぱり、あの時の感覚は…。」
「メノウ、落ち着いてください。一旦状況を整理しましょう。はい、深呼吸して。」

ブツブツと何かを呟き、考え込むディラン君と、その両肩に手を置いて懇願する私という、混沌とした光景にセインが待ったをかける。でも、と口をつきかけてすんでのところで呑み込んだ。真剣な眼差しをこちらに向けてくる彼の気迫に押されたのもある。しかし、それよりも本気で案じてくれているのが否応なしに伝わってきたからだ。

「っ…、ごめん…。」
「いえ、ずっと一緒にいた家族の様な存在だったのでしょう?それが突然姿を消して取り乱さないはずありませんから。」

そう言って一つ、大きくため息を吐く。それを視界に入れながらも、何処か夢見心地なまま現実を第三者視点で見ているような感覚に陥る。これが本当に夢であったならどれだけ良かったか。しかし、そう思い込む事は許されない。もしここで現実逃避してしまったら、私はずっと後悔する。二度とディルに会えなくなる。そんな本能的な直感が働いていた。

「…多分、兄さんは姉さんの所に行ったんだ。」
「え…?で、でも、あなたのお姉さんってディルを殺そうとした張本人なんでしょ!?」
「うん、だからすぐにどうこうって訳じゃないと思う。でも、何かしらの準備が終われば、間違いなく兄さんは姉さんに会いに行く。」

そんな…。確かに今の悪魔側の情勢を鑑みれば、いつかは行動に移す必要があるだろう。だが、何故今なのか。一言言ってくれれば、もしかしたら手助け出来る何かがあったかもしれないのに。

「メノウお姉ちゃん…。姉さんはね、残酷なんだ。」
「…?」

ディランの言葉の真意が掴めず、首を傾げる。そんなの、ディルの話を聞いた時から察している。しかし彼が言いたいのはそれではないだろう。

「昨日現れたあの人…。彼は本来なら扱えないはずの魔法を使った。そして、彼に懐かしい波長の魔力がほんの少し混ざってた。気のせいかもしれないって思ってたけど…。多分お姉ちゃんの弟は、カリア姉さんの能力を分け与えて貰ってる状態なんだ。」
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