26 / 66
リベート
26
しおりを挟む
「Dグループ、構え!」
遂に魔物が目と鼻の先に。近接戦闘型の人達が得物を構える。
「行けえ!」
「おおお!!!!」
雄叫びと共に魔物に向かって飛び出していく。重い一撃で屠り、回転斬りによって周りを一掃し、時には飛び退いて間合いを稼ぎ…。誰が見ても熟練された動きだと分かる。
「Cのc!前へ!」
しかし、少人数パーティならともかく、妨害魔法は多数対多数勝負の場合味方を援護出来ない。最悪味方の邪魔をし、命を危険に晒す事もあるからだ。故に私達妨害役は、少し後ろに控えている敵に的を絞って魔法を放つ。こうすることにより、少しでも前衛の味方に時間的余裕をもたせるのだ。
「……っ?」
敵の半数ほどを屠ったその時、気味の悪い悪寒に襲われた。しかし周りを見ても私と同じように感じてる人はいない…いや、リーダーのシャーネさんも顔色を悪くし、辺りを警戒している。
『…気をつけて。強敵が迫ってる。』
(え?それって…。)
その時、誰かの怒声が聞こえた。
「か、カルヴァーンだ!!」
慌てて上空を見上げると、コウモリのような翼に緑色の皮膚、鋭利な爪に真っ赤な瞳の四足歩行生物…紛い竜とも呼ばれる魔物、カルヴァーンがそこにいた。
「嘘…。」
カルヴァーンはこの世で最も力のあるドラゴン種に似た体躯と、それに準ずるパワーがある。しかし純粋なドラゴン種と違って魔法を扱わない。それが紛い竜と呼ばれる所以だ。しかしその脅威度はA。とてもじゃないが、ろくにお互いの戦闘スタイルも知らず訓練もしていないメンツで勝てる相手ではない。
「まさか、今回のスタンピードはあいつが原因か!?」
「そんな馬鹿な!じゃああいつを倒さねえとダメって訳かよ!」
カルヴァーンの登場は味方に衝撃と失意を植え付けるには十分すぎた。既に戦意消失し逃走を図っている人までいる。しかしカルヴァーンは逃走先の街道に降り立つと、その尾を横に薙ぎ払った。
「…!?」
それだけで、逃亡した味方は吹き飛ばされ、ピクリとも動かなくなった。中には痙攣している人もいるが、動かない人はもしかしたら…。そんな最悪の想像が脳内を駆け巡る。
「各分隊長、集合せよ!」
「…呼ばれちゃったわね。あなたたち!あくまであなたたちは魔物の妨害。雑魚どもの足を少しでも多く止めるのよ!」
そう言い残して、シャーネさんは隊長の元に行ってしまった。多分、隊長と分隊長、そして自衛隊員が連携してカルヴァーンを討伐しようとしてるのだろう。しかし、上手くいくのだろうか。相手は魔法を使わないとは言え竜だ。一撃でも攻撃を喰らえば、瀕死又は即死。
『迷ってる暇は、ないんじゃない?』
その声に顔を上げると、既にシャーネさん達は陣形を組みカルヴァーンに攻撃を仕掛けている。しかし回避と防御に専念しているせいで、中々攻撃に転じれない様子だった。
「…っ!ミラ、ここは頼んだわ!」
「へ?あ、ちょっと!?」
ツインテールの女の子、ミラに言い捨て、私は駆け出した。
遂に魔物が目と鼻の先に。近接戦闘型の人達が得物を構える。
「行けえ!」
「おおお!!!!」
雄叫びと共に魔物に向かって飛び出していく。重い一撃で屠り、回転斬りによって周りを一掃し、時には飛び退いて間合いを稼ぎ…。誰が見ても熟練された動きだと分かる。
「Cのc!前へ!」
しかし、少人数パーティならともかく、妨害魔法は多数対多数勝負の場合味方を援護出来ない。最悪味方の邪魔をし、命を危険に晒す事もあるからだ。故に私達妨害役は、少し後ろに控えている敵に的を絞って魔法を放つ。こうすることにより、少しでも前衛の味方に時間的余裕をもたせるのだ。
「……っ?」
敵の半数ほどを屠ったその時、気味の悪い悪寒に襲われた。しかし周りを見ても私と同じように感じてる人はいない…いや、リーダーのシャーネさんも顔色を悪くし、辺りを警戒している。
『…気をつけて。強敵が迫ってる。』
(え?それって…。)
その時、誰かの怒声が聞こえた。
「か、カルヴァーンだ!!」
慌てて上空を見上げると、コウモリのような翼に緑色の皮膚、鋭利な爪に真っ赤な瞳の四足歩行生物…紛い竜とも呼ばれる魔物、カルヴァーンがそこにいた。
「嘘…。」
カルヴァーンはこの世で最も力のあるドラゴン種に似た体躯と、それに準ずるパワーがある。しかし純粋なドラゴン種と違って魔法を扱わない。それが紛い竜と呼ばれる所以だ。しかしその脅威度はA。とてもじゃないが、ろくにお互いの戦闘スタイルも知らず訓練もしていないメンツで勝てる相手ではない。
「まさか、今回のスタンピードはあいつが原因か!?」
「そんな馬鹿な!じゃああいつを倒さねえとダメって訳かよ!」
カルヴァーンの登場は味方に衝撃と失意を植え付けるには十分すぎた。既に戦意消失し逃走を図っている人までいる。しかしカルヴァーンは逃走先の街道に降り立つと、その尾を横に薙ぎ払った。
「…!?」
それだけで、逃亡した味方は吹き飛ばされ、ピクリとも動かなくなった。中には痙攣している人もいるが、動かない人はもしかしたら…。そんな最悪の想像が脳内を駆け巡る。
「各分隊長、集合せよ!」
「…呼ばれちゃったわね。あなたたち!あくまであなたたちは魔物の妨害。雑魚どもの足を少しでも多く止めるのよ!」
そう言い残して、シャーネさんは隊長の元に行ってしまった。多分、隊長と分隊長、そして自衛隊員が連携してカルヴァーンを討伐しようとしてるのだろう。しかし、上手くいくのだろうか。相手は魔法を使わないとは言え竜だ。一撃でも攻撃を喰らえば、瀕死又は即死。
『迷ってる暇は、ないんじゃない?』
その声に顔を上げると、既にシャーネさん達は陣形を組みカルヴァーンに攻撃を仕掛けている。しかし回避と防御に専念しているせいで、中々攻撃に転じれない様子だった。
「…っ!ミラ、ここは頼んだわ!」
「へ?あ、ちょっと!?」
ツインテールの女の子、ミラに言い捨て、私は駆け出した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
「魔物肉は食べられますか?」異世界リタイアは神様のお情けです。勝手に召喚され馬鹿にされて追放されたのでスローライフを無双する。
太も歩けば右から落ちる(仮)
ファンタジー
その日、和泉春人は、現実世界で早期リタイアを達成した。しかし、八百屋の店内で勇者召喚の儀式に巻き込まれ異世界に転移させられてしまう。
鑑定により、春人は魔法属性が無で称号が無職だと判明し、勇者としての才能も全てが快適な生活に関わるものだった。「お前の生活特化笑える。これは勇者の召喚なんだぞっ。」最弱のステータスやスキルを、勇者達や召喚した国の重鎮達に笑われる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ
春人は勝手に召喚されながら、軽蔑されるという理不尽に怒り、王に暴言を吐き国から追放された。異世界に嫌気がさした春人は魔王を倒さずスローライフや異世界グルメを満喫する事になる。
一方、乙女ゲームの世界では、皇后陛下が魔女だという噂により、同じ派閥にいる悪役令嬢グレース レガリオが婚約を破棄された。
華麗なる10人の王子達との甘くて危険な生活を悪役令嬢としてヒロインに奪わせない。
※春人が神様から貰った才能は特別なものです。現実世界で達成した早期リタイアを異世界で出来るように考えてあります。
春人の天賦の才
料理 節約 豊穣 遊戯 素材 生活
春人の初期スキル
【 全言語理解 】 【 料理 】 【 節約 】【 豊穣 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】 【 快適生活スキル獲得 】
ストーリーが進み、春人が獲得するスキルなど
【 剥ぎ取り職人 】【 剣技 】【 冒険 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】【 快適生活獲得 】 【 浄化 】【 鑑定 】【 無の境地 】【 瀕死回復Ⅰ 】【 体神 】【 堅神 】【 神心 】【 神威魔法獲得 】【 回路Ⅰ 】【 自動発動 】【 薬剤調合 】【 転職 】【 罠作成 】【 拠点登録 】【 帰還 】 【 美味しくな~れ 】【 割引チケット 】【 野菜の種 】【 アイテムボックス 】【 キャンセル 】【 防御結界 】【 応急処置 】【 完全修繕 】【 安眠 】【 無菌領域 】【 SP消費カット 】【 被ダメージカット 】
≪ 生成・製造スキル ≫
【 風呂トイレ生成 】【 調味料生成 】【 道具生成 】【 調理器具生成 】【 住居生成 】【 遊具生成 】【 テイルム製造 】【 アルモル製造 】【 ツール製造 】【 食品加工 】
≪ 召喚スキル ≫
【 使用人召喚 】【 蒐集家召喚 】【 スマホ召喚 】【 遊戯ガチャ召喚 】
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる