悪魔の誓い

遠月 詩葉

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「とうとう来やがったか…!」

あれから二日後の正午。計算通りに北門の遥か遠くから魔物の群れがこちらに向かってきていた。
結局リーダーらしき影は見当たらない。偵察にも限界があるから、見つけられていないだけの可能性もあるが。

「まずはBグループ!攻撃用意!」

四つ立てた高台のうち、一番右側に配置された魔術師が魔力を練り上げる。

「放てぇ!」

ゴオオォ!と炎が立ち上り、雷が敵の脳天を貫く。一気に数十体を屠った。しかし魔力消費が激しいのか、連発は出来ないようだ。

「次!Aグループ!放て!」

ビュンッと空気を切り裂く音が何重にも聞こえ、矢と銃弾の雨が敵に降り注ぐ。

「補給隊!どんどん矢と弾丸を持ってこい!いくらあっても足りねえぞ!」
「はい!」

後方からは支援物資の補給がなされている。そうこうしている内にBグループの準備が整ったのか、またもや攻撃魔法が炸裂。
しかし、どんなに倒しても後から後から湧いてくる。いつの間にか先程よりも半分程距離が縮まっていた。

「Cのa!妨害魔法準備!放て!」

aチームは水、闇、木、地属性を主軸としたメンバーだ。どうやら水と木、地と闇で効果範囲を分けたらしい。植物の蔓で足を絡め取り、巨大な水球を作り上げ、窒息させる。もう片方は地面を泥にして足をすくい、闇魔法で出来るだけ魔力を吸い取る。威力は低いが、それでも塵も積もればなんとやら。確実に敵の勢いを削いでいた。

「Cのa、後退!次、Cのb!前へ!」

魔力を2割ほど消費したところで交代。bは火、雷、光だったはず。

「放て!」

まず光術者が目くらましと治癒遅延の魔法を使う。治癒遅延とは自然治癒力や治癒魔法の効果を遅らせる魔法だ。雷で大気にプラズマを起こし、身体を痺れさせたと同時に炎で足元を炙る。確かあれは、マグマパネルという地面を火傷効果のある熱い床に変える魔法だ。

チラリとAグループがいる高台に目を向けると、怒声の中、二丁銃を撃ちまくるセインの姿が一瞬だけ見えた。

「Cのb後退!Cのc前へ!」

私達の番だ。私の作戦が通用するのか緊張しながら、魔力を練る。今回私は風魔法を使う。どうしてもパワー不足になりがちなこの役目に回ったのだ。

「放て!」

地面が一面凍り、敵の足を縫い付ける。音属性の術者が広範囲に混乱魔法をしかけ、風魔法で対象を押し戻す。

「スライドウィン!」

周りの人達は皆単純な「ウインド」を使っているが、私は相手をほんの少し浮かせ強制的に吹き飛ばす魔法を唱えた。一気に相手の隊列が瓦解し、味方を攻撃し始める魔物。

「やった!メノウさん、やったよ!」
「うん!」

cチームの中で一番最初に発言していたツインテールの女の子は、私の手を握りピョンピョンと跳ねた。何だこの可愛い生物。まるで小動物みたいだ。
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