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リベート
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「まず状況を確認する。現在魔物の群れは北に位置する、グラッグ山岳からこのリベートに向かって侵攻している。その数およそ六千。ランクはEからC。衝突は二日後の正午と予測している。こちらの戦力は自衛隊三千に有志が二千。正直に言うが、圧倒的にこちらが不利だ。しかし、ここを落とされれば、別の街にまで被害が及ぶ。」
ザワザワと不安の波が広がる。思っていたより自体は深刻だ。放棄して逃げようとしても今からでは間に合わない。それどころか避難民の足にまで追いつかれ、蹂躙される。
「作戦だが、街の北門の前に堀を作り、即席のバリケードを積み上げる。魔物が見えてきたら、魔術師が妨害魔法と攻撃魔法で遠方から攻撃。詠唱や交代している間に弓士や銃士が攻撃。それを掻い潜って堀を乗り越えた魔物を近接戦闘型の人員が排除する。」
シンプルだがそれくらいしか対応策はないだろう。
「リーダーさんよ、相手の親玉はいないんですかい?」
「高ランクの魔物、もしくは悪魔、その両方が未確認だ。故に今回の騒動の原因は不明。現状では敵勢力の殲滅しかないと踏んでいる。」
「ちっ…。」
通常のスタンピードの場合、原因となる高ランクの魔物がいる可能性が高い。そいつさえ沈めてしまえば魔物は散り散りになり、解決出来る場合が多いのだが…。今回に限って言えばその作戦は不可能。
「ここまで聞いた上で尋ねる。今からでも逃げたいやつはいるか?」
その場がシーンと静まり返る。今更逃げたところで自分だけじゃなく家族まで死ぬかもしれないのだ。それだけは絶対に阻止せねばならない。そんな思いからか、ここから動く人はほとんどいなかった。
「…よし、諸君達の勇気、心より感謝する。それでは今から複数のグループに分ける。各々指示に従ってくれ。全体の指揮は自衛隊隊長である私が、各グループには分隊長が指示を出す。皆、何がなんでも生き残るぞ!」
おおおぉー!!!
全員が己の得物を掲げながら雄叫びをあげる。その振動は大気を揺るがし、不思議な高揚感が呼び起こされる。
「…メノウ。多分私達は別のグループになると思います。近接戦闘はしない分危険もそれほどないかもしれませんが、油断はできません。絶対に、二人とも無事に切り抜けましょう。」
「セイン…。うん!」
私が返事をした直後、係員がセインを呼ぶ声が聞こえた。
「おっと、呼ばれたみたいです。それではまた後ほど。」
そうして彼は呼ばれた方へと小走りに駆けていく。
「…出し惜しみしている場合でもないしね…。」
『メノウ、分かってると思うけど…。』
(大丈夫。本当にピンチの時以外は使わないよ。もしもの時に備えて魔力も温存しておくし。)
『なら良いけど…無理だけはしないでよ?君が死んだら僕も死ぬんだからね。』
多分後半の言葉は照れ隠しだ。あくまで憶測だが…ディルは自分の死に関してそこまで頓着していない気がする。本人から聞いたわけじゃないから確定は出来ないが。
私の思考が何となく伝わったのだろう、小さく舌打ちの音が頭の中に響いた。本当に、身体の持ち主は私なのに何となく釈然としない。
「あ、私も呼ばれた。行かなくちゃ。」
私の名前を呼んだ、大きくCの文字が書かれた紙を両手で持っている係員の側まで小走りで向かった。
ザワザワと不安の波が広がる。思っていたより自体は深刻だ。放棄して逃げようとしても今からでは間に合わない。それどころか避難民の足にまで追いつかれ、蹂躙される。
「作戦だが、街の北門の前に堀を作り、即席のバリケードを積み上げる。魔物が見えてきたら、魔術師が妨害魔法と攻撃魔法で遠方から攻撃。詠唱や交代している間に弓士や銃士が攻撃。それを掻い潜って堀を乗り越えた魔物を近接戦闘型の人員が排除する。」
シンプルだがそれくらいしか対応策はないだろう。
「リーダーさんよ、相手の親玉はいないんですかい?」
「高ランクの魔物、もしくは悪魔、その両方が未確認だ。故に今回の騒動の原因は不明。現状では敵勢力の殲滅しかないと踏んでいる。」
「ちっ…。」
通常のスタンピードの場合、原因となる高ランクの魔物がいる可能性が高い。そいつさえ沈めてしまえば魔物は散り散りになり、解決出来る場合が多いのだが…。今回に限って言えばその作戦は不可能。
「ここまで聞いた上で尋ねる。今からでも逃げたいやつはいるか?」
その場がシーンと静まり返る。今更逃げたところで自分だけじゃなく家族まで死ぬかもしれないのだ。それだけは絶対に阻止せねばならない。そんな思いからか、ここから動く人はほとんどいなかった。
「…よし、諸君達の勇気、心より感謝する。それでは今から複数のグループに分ける。各々指示に従ってくれ。全体の指揮は自衛隊隊長である私が、各グループには分隊長が指示を出す。皆、何がなんでも生き残るぞ!」
おおおぉー!!!
全員が己の得物を掲げながら雄叫びをあげる。その振動は大気を揺るがし、不思議な高揚感が呼び起こされる。
「…メノウ。多分私達は別のグループになると思います。近接戦闘はしない分危険もそれほどないかもしれませんが、油断はできません。絶対に、二人とも無事に切り抜けましょう。」
「セイン…。うん!」
私が返事をした直後、係員がセインを呼ぶ声が聞こえた。
「おっと、呼ばれたみたいです。それではまた後ほど。」
そうして彼は呼ばれた方へと小走りに駆けていく。
「…出し惜しみしている場合でもないしね…。」
『メノウ、分かってると思うけど…。』
(大丈夫。本当にピンチの時以外は使わないよ。もしもの時に備えて魔力も温存しておくし。)
『なら良いけど…無理だけはしないでよ?君が死んだら僕も死ぬんだからね。』
多分後半の言葉は照れ隠しだ。あくまで憶測だが…ディルは自分の死に関してそこまで頓着していない気がする。本人から聞いたわけじゃないから確定は出来ないが。
私の思考が何となく伝わったのだろう、小さく舌打ちの音が頭の中に響いた。本当に、身体の持ち主は私なのに何となく釈然としない。
「あ、私も呼ばれた。行かなくちゃ。」
私の名前を呼んだ、大きくCの文字が書かれた紙を両手で持っている係員の側まで小走りで向かった。
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