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出会い
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目の前に立つ金髪の男性は、セイン・ロンハーツと名乗った。細身故にそこまで強そうには見えないが、先程の銃弾は的確に魔物の急所を捉えていた。意外と腕は立つのかもしれない。
「それで、セインさんはなんでこの森に?」
「恥ずかしながら…今朝方職場をクビになってしまいまして…。一文無しなんです。それで、魔物の核を換金して何とか食い繋ごうと…。」
「でも、囲まれてましたよね?無策で飛び込むのは流石に危険ですよ?」
「うう…申し開きのしようもない…。」
しょんぼりと項垂れるセインは、まるで子犬の様だ。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ま、まあ私が偶然通りかかったので良かったですけど…。」
「所で、メノウさんは何故ここに?」
「あ、私は依頼所で薬草採取の依頼を受けて来たんです。路銀を稼がなきゃいけなかったので…。」
「路銀?一人で旅をしているんですか?このご時世です、危険では?親御さんも心配しているでしょう。」
一瞬、顔が強ばったのが自分でも分かる。何気なく発された彼の言葉が、鉛の様に私の胸へと重くのしかかる。
「…大丈夫です。それに、護衛を雇うにもお金が必要じゃないですか。流石に破産しちゃいますよ。」
そう言って笑い飛ばす。上手く、笑みを作れているだろうか。セインは小首を傾げたが、深くは聞かない事にしたようだ。今は、それがとても有難かった。
「そうですか…。因みに、どちらまで?」
「えっと…。人探しをしてるんです。だから、これと言った目的地はなくて。」
「…その方の情報はあるんですか?」
「…。は、ははは…。」
そう…弟の情報は皆無に等しい。あの日、私の前から去った後、暫くは親戚の家を転々としていると小耳に挟んだ。だが、一年前に忽然と姿を消したのだそうだ。
手がかりは昔撮った写真と名前。たったそれだけを頼りに、いくつもの町を渡り歩いてきた。
「……なら、俺もメノウさんの人探しを手伝います。」
「え…?」
「どちらにしろ、次の職場が見つかるまで生活の保証はない。それなら、メノウさんについて行った方が生存率は格段に上がると思います。どちらにしろ依頼でもこなさないと稼ぐ方法がないですから。それに…あなたは命の恩人ですしね。」
そう言ってセインは優しく微笑んだ。
「お、恩人なんてそんな…!でも…正直一緒に行動する仲間がいるのは心強いです…。よ、良ければよろしくお願いします!」
「決まりですね。あ、それと、俺のことはセインで良いですよ。」
「じゃ、じゃあ私もメノウで!」
「はい、メノウ。改めて、よろしくお願いします。」
そう言ってセインは右手を差し出してきた。私もおずおずとその手を握り返す。
『ふーん…。ま、一人よりは良いかもね。』
そんな第三者の声は、聞こえないフリをした。
「それで、セインさんはなんでこの森に?」
「恥ずかしながら…今朝方職場をクビになってしまいまして…。一文無しなんです。それで、魔物の核を換金して何とか食い繋ごうと…。」
「でも、囲まれてましたよね?無策で飛び込むのは流石に危険ですよ?」
「うう…申し開きのしようもない…。」
しょんぼりと項垂れるセインは、まるで子犬の様だ。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ま、まあ私が偶然通りかかったので良かったですけど…。」
「所で、メノウさんは何故ここに?」
「あ、私は依頼所で薬草採取の依頼を受けて来たんです。路銀を稼がなきゃいけなかったので…。」
「路銀?一人で旅をしているんですか?このご時世です、危険では?親御さんも心配しているでしょう。」
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「…大丈夫です。それに、護衛を雇うにもお金が必要じゃないですか。流石に破産しちゃいますよ。」
そう言って笑い飛ばす。上手く、笑みを作れているだろうか。セインは小首を傾げたが、深くは聞かない事にしたようだ。今は、それがとても有難かった。
「そうですか…。因みに、どちらまで?」
「えっと…。人探しをしてるんです。だから、これと言った目的地はなくて。」
「…その方の情報はあるんですか?」
「…。は、ははは…。」
そう…弟の情報は皆無に等しい。あの日、私の前から去った後、暫くは親戚の家を転々としていると小耳に挟んだ。だが、一年前に忽然と姿を消したのだそうだ。
手がかりは昔撮った写真と名前。たったそれだけを頼りに、いくつもの町を渡り歩いてきた。
「……なら、俺もメノウさんの人探しを手伝います。」
「え…?」
「どちらにしろ、次の職場が見つかるまで生活の保証はない。それなら、メノウさんについて行った方が生存率は格段に上がると思います。どちらにしろ依頼でもこなさないと稼ぐ方法がないですから。それに…あなたは命の恩人ですしね。」
そう言ってセインは優しく微笑んだ。
「お、恩人なんてそんな…!でも…正直一緒に行動する仲間がいるのは心強いです…。よ、良ければよろしくお願いします!」
「決まりですね。あ、それと、俺のことはセインで良いですよ。」
「じゃ、じゃあ私もメノウで!」
「はい、メノウ。改めて、よろしくお願いします。」
そう言ってセインは右手を差し出してきた。私もおずおずとその手を握り返す。
『ふーん…。ま、一人よりは良いかもね。』
そんな第三者の声は、聞こえないフリをした。
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