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第一章:転生

1-6:誕生日会

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 この世界では五歳ごとに誕生日を祝う風習がある。
 五歳、十歳、そして成人を迎える十五歳までお祝いをするらしい。

 その後はあまり誕生日は気にしないらしく、生前の私のように誕生日ごとに寂しく女友達呼び出して自分へのご褒美と称して、良いお酒を飲むと言う事は無いらしい。



 さて私こと、アルムエイド=エルグ・ミオ・ド・イザンカは本日五歳の誕生日を迎える。
 この国、イザンカ王国の第三王子。
 微妙な立ち位置だけど、今はまだ小さいので王位継承権やらお見合いやらと言う話はない。
 でもこの先、色々と宮廷の厄介事に巻き込まれるのだろうなぁ~。
 乙女ゲーなどでも知っている限り、そうしたドロドロした話って確実にあるだろうし、やっぱりリアルでもあるんだろうなぁ。

 
 そんな事を思いながら控室でおめかしされる。
 五歳児にびしっとしたタキシードとか何の罰ゲーム?
 これ、襟元とかきついんだけど……



「アルム! まぁ、なんて可愛らしく、そして凛々しいの!! 流石私の弟よ!!」

 控室で着替えが終わる頃、真っ先にやって来たのは長女のエシュリナーゼ姉さん。
 姉さんもついぞ先日十五歳の成人を迎え、とうとういっぱしのレディーになったはずなのに、お見合いの話は全てお断りしている。
 そして何か有るごとに私の所へ来て、こうして抱き着き頬すりキスをしてくる。

 うっとうしい事この上ない。

 と、うざい姉の相手してるともう一人の姉、実姉であるアプリリア姉さんもやって来た。


「あ”~っ! エシュリナーゼ姉さん、アルム君を放してください!!」

「何よアプリリア、いいじゃなの! アルムがとうとう五歳の誕生日を迎え、また一歩この私にふさわしい男なるのよ!」

「何言ってるんですか! アルム君は姉さんのモノじゃありませんっ!!」


 そう言ってアプリリア姉さんも私を奪い取って、同じく抱きしめ頬ずりをしてキスしてくる。
 まったく、この姉たちの弟への溺愛は行き過ぎと言うモノだ。



「アルム、そろそろ時間だが準備は出来たか?」

 姉たちにいい様にもてあそばれていると、アマディアス兄さんがやって来た。
 今年十七歳になる兄さんは、もの凄いイケメン、青い長髪に涼やかなまなざし、すらっとした長身で物静かな感じがする。
 場合によってはややも冷たい印象もあるが、何故か私に対してはとてもやさしい。

 と言うか、こんな美系に相手されたら中の私は、はぁはぁしちゃいそう!
 お兄様、私ずっとついて行きますぅっ!!


「あれ、みんなもう来てたんだ。アルムぅ~お誕生おめでとうね! 僕からの誕生日プレゼントだよ~」

 次兄のシューバッド兄さんもやって来た。
 いつもニコニコしている優しい感じの兄さん。
 相変わらずアプリリア姉さんと私を取り合っているけど、今年十三歳かぁ~。
 生前の私ならぎりぎりOkだったわね。
 まだ半ズボンがぎりぎり似合いそうな美少年なら、生前のお姉さんなら手取り足取りと////////

 そんな事を顔を緩め思っていたら目の前に長細い箱が手渡される。
 受け取りシューバッド兄さんの顔を見ると、にっこりと笑って言う。


「アルムに必要かと思って、作ってもらったんだ」

 そう言ってそのプレゼントを指さす。

「あ、あのシューバッド兄さん開けても良いの?」

「もちろん♪」

 言われて私はリボンをほどき、その箱を開ける。
 するとそこからは片手で持てる銀色の三十センチくらいの杖が出て来た。
 握る所に宝石が埋め込まれていて、真っ黒になっている。


「これね、アルムの魔力を押さえて発動させる効果があるんだよ。その黒い宝石に魔力がだんだんとたまると最後に金色になるから、そうしたら誰かに消費してもらえばまた余剰魔力をこの杖で制御できるんだよ」

「え? それ本当ですかシューバッド兄さん!?」


 実は私はその魔力総量が多すぎて漏れ出す現象に悩んでいた。
 そして魔法を使ってみると、その莫大な魔力のせいで同じ系統の魔法でも数ランク上の魔法が発動してしまう。
 はっきり言って、力加減が出来ていない状態だった。

 しかし、この杖で余剰魔力を押さえられるなら、想定している魔法が使える!


「何よ、シューバッド。一人だけアルムに良い物プレゼントした気になってるんじゃなわよ? 私だってこれをアルムにあげるんだから!」

 そう言ってエシュリナーゼ姉さんは私に首飾りをかけて来る。
 それはちょっとごついけど見るからに骨董品の様なものだった。


「【身代わりの首飾り】よ。もしアルムに何か有っても一度だけその首飾りが装着した者の身代わりになって、例え命を落としても代わりになってくれる古代魔法王国のアイテムよ!」

 エシュリナーゼ姉さんそう言ってドヤ顔をする。
 以前に魔導書で見た事があるけど、これって古代魔法王国時代でもそうとう上の人しか装着できないと言うレアアイテムなのでは?


「ぶぅ~、エシュリナーゼ姉さんそれ先日お父様からもらった成人の祝いのプレゼントですよね? 良いのですかそれ程の物をアルム君に渡して?」

「何を言っているのよ、アルムは私の可愛い弟。アルムの為なら処女だってあげてもいいわ!!」


 いや、薄々は感じていたけどエシュリナーゼ姉さんってやっぱりブラコン?
 しかも齢《よわい》五歳の少年に発情する?

 やっぱり王族って変態なんだ!!


「くっ、わ、私だってアルム君の為なら初めてでも何でも捧げます!!」

「あらぁ、まだ初潮もなにも来ていないような小娘が何を言うの? アルムの事はこの私に任せておきなさい!」


 い、いや、やっぱりアプリリア姉さんもだったのか。
 やたらとスキンシップが多いなとは思っていたけど、まさかのダブルブラコン!!


「アルムお兄ちゃん『しょじょ』って何?」

「あー、エナリアはもう少し大きくなってからね……」

 いつの間にか来ていた妹のエナリアが袖を引っ張って聞いてくるけど、今は頭が痛くて答える気にもならない。



「まったく、お前たちも落ち着け。今日はアルムの社交デビューでもあるのだぞ? 我がイザンカ家の第三王子として貴族界にも我が弟のすばらしさを広めなければならんのだ」

 しかしここにきて収集がつかなくなりそうなので長兄のアマディアス兄さんがこの場をまとめる。
 確かにいよいよ私の五歳の誕生日会。
 そして同時に貴族社会への社交界デビューでもある。

 この世界の住人は知る限り美男美女が多い。
 そして、貴族社会、王宮ではイケナイ恋愛もしばしばあると聞く。


 リアル乙女ゲー。


 それが今私の目の前で開かれようとしている!!

 ぐっふっふっふっふっふっ、男性同士のイケナイ関係や情熱的なざまぁ恋愛もあるとも聞くからもの凄く楽しみだ。

 マリーが開く扉を見て、私たちは会場へと向かう。



 さぁ、ここから私の望むイケナイ恋愛が見られるのだ!
 私はウキウキしながら会場へと向かうのだった。

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