上 下
437 / 437
エピローグ

エピローグ:腹ぺこエルフは今日も美味しい物を探します

しおりを挟む
「リル~、ルラ起こして来て~」

「は~いぃ」


 マーヤ母さんに言われてまだ寝ていルラを起こしに行く。
 私たちはボヘーミャでまた魔術を学ぶために学校へと通う事となった。


「ほらルラっ! 起きろぉーっ!!」

 かけ布団の端を持って一気に引っ張り上げる。
 すると布団にくるまっていたルラはころころと畳の上に転げだす。


 ばふっ!

 ごろん


「う~ん、もうちょっとぉ~」

「何言ってるのよ、マーヤ母さんの朝ごはん出来たわよ?」

「ん~、じゃあ起きるぅ~」

 ルラはそう言ってのそのそと起き上がり、寝間着である浴衣を脱ぎ始める。

 まったく、こんなだらしない格好を他の人に見られたらどうするのだろう?
 脱ぎ散らかす浴衣を拾い上げて私はそれをたたんでおく。

 と、何となく裸のルラを見てぎょっとする。


「ル、ルラ…… あんたもしかして胸大きく成った?」

「ん~? そうかもしんない。最近胸が張って来て邪魔だよぉ、ふわぁ~」

 こ、こいつ!
 同じ双子のくせしてなんでルラだけ胸が大きく成るのよ!?
 なんかあからさまに胸が大きく成って来ている!!

「くっ! なんでよ!!」

 
 がしっ!


「あひゃっ♡」

 思わすルラの胸を掴む。
 確実に大きく成っていた。
 少なくとも、温泉饅頭から酒まんじゅうくらいには大きく!

 わ、私なんか毎晩内緒で胸のマッサージとかして、ちょっと気持ち良くなるくらいまで頑張っているのに、いまだに温泉饅頭にも達していないというのに!!

 それなのにルラだけぇ~っ!!


 ふみょふみょ~


「んぁっ♡ 駄目だよお姉ちゃん、そんなに揉んだら変な気持ちになっちゃうよぉ~♡」

「くぅ~っ、うらやましいっ!!」

 思わず妹の胸を揉んでしまうが、本当になんで同じもの食べて同じ環境のはずなのにルラだけ大きく成る?


「リルにルラ、マーヤが朝食の準備が出来たと言ってますよ?」

 私がルラの胸を揉んでいると、ユカ父さんがやって来た。
 そして私たちを見てぎょっとする。


「リ、リル、それは禁断の姉妹愛ですよ!? その、気持ちは分からなくは有りませんが流石に姉妹でそう言う関係は……」

「ち、違います! ルラの胸が大きく成ってたんで確認しただけです!!」

「そ、そうなのですか? しかしルラの表情が……」

 ユカ父さんにそう言われ、ルラの顔を見ると頬を赤く染め、なんかうっとりとした感じになり始めていた。


 ふみょふみょふみょ~

 ばっ!


 揉んでいた手を慌てて放す。
 ルラはなんかはぁはぁと息が荒い。

「はぁはぁ、ん~、なんでやめちゃうのお姉ちゃん~♡ なんかすごく気持ち良かったのにぃ~♡」

「な、違う、そうじゃないってば!!」

「ふう、リルもこちらの世界に目覚めてしまいましたか…… 確かに同性どうしでと言うのは最初、私も抵抗がありましたが慣れるとそれはそれでまた///////」

「ユカ父さん、それ以上は言わないでぇっ!!」

 私は慌ててそれ以上言わせないようにする。
 と、マーヤ母さんも来た。

「どうしたのみんな? ご飯冷めちゃうわよ…… あらぁ~♡」

 マーヤ母さんはルラが裸で赤い顔してはぁはぁ言って、それを見ているユカ父さんも顔を赤くして、そして今しがたルラの胸から手を放したばかりの私の姿を見てにんまりとする。

「まだ早いけど、こっちの世界だとそう言う事覚えちゃうのよねぇ~」

「覚えてませんから、そう言うの!!」


 朝から騒がしい我が家であった。



 * * * * *


「何朝から疲れた顔してるのよ?」

「ああ、ヤリスおはようございます。いや、ちょっと朝からごたごたしたもので……」

「おはよ~ヤリス~」


 講堂で机に座っているとヤリスがやって来た。
 そしてぐったりしている私やルラにに挨拶をしてくる。

 ヤリスは私の隣に座りながら聞いてくる。

「そう言えばソルミナ教授がまた新しい研究を始めるから、受講が終わったら研究室に来いですって。大丈夫よね?」

「はぁ? またなんかやらかすんですか?」

 ソルミナ教授の研究は十回に一回くらいの割合で役に立ちそうなものもある。
 しかし言い換えれば残り九割は残念なものばかりだ。

 以前だって植物の中に複数の種類を封じ込めてパンの生る木とか作ろうとして、食人植物になっちゃったりとかして危うく食べられるところだった。
 そりゃぁ、パンなんて複雑な多くの栄養が必要な物だから、植物だって肥やしが必要になる。
 問題はその効率化がたんぱく質を根源とする動物を捕食して栄養源にするという風になってしまった事だ。
 
 あの時はルラがいなかったらヤバかった。


「分かりました、今度は安全なものがいいですね……」

「大丈夫よ、今度は私も助けるわよ」

 そう言ってぴょこんとこめかみの上に三つずつトゲのような癖っ毛を出して体をうっすらと輝かせる。
 ちゃんと女神様の力が使えるようになっているのをアピールするのは良いけど、これって目立つんだよなぁ~。


「はいはい、分かりました。その時はお願いしますね」

「うん♡」


 ヤリスは笑顔でそう答えてくれるのだった。


 * * * * *


「ソルミナ教授、来ましたよ~」

「こんにちわぁ~!」


 講義が終わって、昼食も取らずにヤリスに言われるままソルミナ教授の研究室へ来る。
 と、なんか良い匂いがふわっとしてくる?


「お、きたきた」

「いらっしゃいですわ、リルさんルラさん」

 見れば研究室の中にはソルミナ教授のほかにアニシス様やサ・コーンさん、ウ・コーンさん、スィーフの皆さんにエリリアさんたちがいた。
 更にユカ父さんやマーヤ母さんまで!?
 そして机の上には沢山のお料理。


「こ、これは……」

「うわぁ~、美味しそうなものいっぱい! あ、たこ焼きもある!!」


 驚き皆さんを見渡すとソルミナ教授が杯を持ち上げて言う。
 
「やっと帰って来たのにまだ帰還祝いしてなかったじゃない? このあいだの研究で臨時収入があったからね、今日は私のおごりよ! さぁジャンジャン飲んで食べて次の研究にもしっかりと協力してもらうわよ!! 今度は兄さんを落す為の媚薬よ媚薬! 今度こそはぁ~っ!!」

「はいはいソルミナ教授、それはまた後でですわ。はい、二人もどうぞ」

 そう言ってアニシス様は私とルラに杯を手渡して来る。 
 私とルラはそれを受け取りきょとんとする。

 
 でも。


「みんなありがとうございます!」

 素直にお礼を言う。
 

「それじゃぁ、リルとルラの帰還を祝ってかんぱーいっ!!」

『かんぱーいっ!!!!』


 ヤリスの音頭で一斉に杯をかかげ乾杯をする。
 



 そして美味しいものに舌鼓しながらあの後私たちがどうなったかを話しながらみんなと楽しく帰還祝賀会を楽しむのだった。
 



 

「腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~」

―― fin ――






************************************

あとがき:

 まずは、ここまでお付き合いくださった読者様に御礼申し上げます。
 ありがとうね!

 「腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~」これにて終了です。

 いやはや、長くなっちゃた。
 もともと「エルハイミシリーズ」と題するように、「エルハイミ‐おっさんが異世界転生して美少女に!?‐」の後日談でした。

 もっとも、主人公はリルとルラの双子のエルフの姉妹ですが。

 時系列的にはエルハミのお話から1000年後、「ぼくの姉は世界最強の師匠!-お姉ちゃんが立派な男にしてあげる!!-」のお話の300年前と言う、「世界の壁」が崩壊する原因のお話でした。
 本当はもっとサクッと終わるはずだったのですが、イージム大陸に飛ばされてから長かったり、エルフの村に戻ってから学園に留学したりと、詳細を書いていたらここまで長くなりました。
 
 私も料理好きなので、料理話とか書いてると楽しくてついつい長くなっちゃうんですよねぇ~。

 で、一応空白部分だった「世界の壁」崩壊原因も書けたので「エルハイミシリーズ」もひと段落ですね。
 ただ、この後「悪の女幹部(仮)」なんて更にもっと後の時代でのお話のネタもあるのですが、今は小休憩と言う事で(笑)。


 しばらくはコンテスト用の10万文字クラスの読み切りを書いて行こうかと思ってます。

 長いのって、今まではだらだらと大元の大プロットにその時期に修正で入れられた小プロット書いたりでやって来たんですが、もう少し物語の流れのメリハリとか仕掛けなんかを充実したいので、ちょっとお休みですね。
 大体にして100万文字クラスになるから、書くとなれば一日2500文字でも一年くらいはかかりますもんね~。
 現状活動は毎日更新が難しくなっているので、100万文字でも一年半はかかるかな?
 ブーストかかっていても、10万文字も大体ひと月くらいかかりますもんね~。


 2019年からそれまで書いた事の無い小説書き始めましたが、今年で6年目です。
 そろそろ勢いだけで書けるようにはなりません。
 いや、書くこと自体は楽しいのでやめませんが、もう少し万人向けになる様なものも書いて行かなきゃですね。
 プロ作家になりたいという訳ではないのですが、何処かで一回くらいは入賞してみたいという欲はあります。
 
 なので、今までは「楽しいから」書いていた小説を「一度は入賞」を狙った小説にして行こうかなと。


 ああ、勿論「楽しい」はやめるつもりはありません。
 基本、私は自分が楽しく無ければやりたがらない性分なので。

 ですのでこれからも思い付きや楽しそうなら短編や中編も書いていきます。

 そして「エルハイミシリーズ」も。

 
 少々お話が脱線しましたが、この後二人エルフの姉妹がどうなったか?
 いやいや、聞く必要ないですよね?
 きっと毎日美味しい物を探したり作ったりしてハチャメチャな学園生活を満喫する事でしょう。


 それではみなさん、長々とお付き合い頂きありがとうございました!

 またどこか他の物語でお会いできることを願って。




 さいとう みさき 
 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

くど
2022.11.18 くど

能力隠す方針はまあいいと思うけど、ドラゴン的なのが居る世界なら隠しすぎると能力活かせないまま周りの人が居なくなってく(死んだり主人公達を信用出来なかったり)からこの先難しいことになりそうだ…。
かといって重大な事が起こった後に能力明かしてもなんで今さら的なことにもなりそうなんだよなぁ。

解除

あなたにおすすめの小説

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李
恋愛
『やぁ‥君の人生はどうだった?』86歳で俺は死んだ。幸せな人生だと思っていた。 死んだ世界に三途の川はなく、俺の前に現れたのは金髪野郎だった。もちろん幸せだった!悔いはない!けれど、金髪野郎は俺に言った。『お前は何も覚えていない。よかったな?幸せだ。』 何言ってんだ?覚えてない?何のこと?だから幸せだったとでも?死ぬ前の俺の人生には一体何が起こってた!?俺は誰かも分からない人物の願いによってその人生を幸せに全うしたと? 一体誰が?『まさに幸せな男よ、拍手してやろう』そう言って薄ら笑いを浮かべてマジで拍手してくるこの金髪野郎は一体なんなんだ!?そして、奴は言う。ある人物の名前を。その名を聞いた途端に 俺の目から流れ落ちる涙。分からないのに悲しみだけが込み上げる。俺の幸せを願った人は誰!? 分からないまま、目覚めると銀髪に暁色の瞳をもった人間に転生していた!けれど、金髪野郎の記憶はある!なのに、聞いた名前を思い出せない!!俺は第二の人生はテオドールという名の赤ん坊だった。此処は帝国アレキサンドライト。母親しか見当たらなかったが、どうやら俺は皇太子の子供らしい。城下街で決して裕福ではないが綺麗な母を持ち、まさに人知れず産まれた王子と生まれ変わっていた。まさか小説のテンプレ?身分差によって生まれた隠された王子?おいおい、俺はそんなのどうでもいい!一体誰を忘れてるんだ?そして7歳になった誕生日になった夜。夢でついに記憶の欠片が・・・。 『そんな都合が言い訳ないだろう?』 またこいつかよ!!お前誰だよ!俺は前世の記憶を取り戻したいんだよ!

初恋に敗れた花魁、遊廓一の遊び人の深愛に溺れる

湊未来
恋愛
ここは、吉原遊郭。男に一夜の夢を売るところ。今宵も、一人の花魁が、仲見世通りを練り歩く。 その名を『雛菊』と言う。 遊女でありながら、客と『情』を交わすことなく高級遊女『花魁』にまでのぼりつめた稀な女に、今宵も見物人は沸く。しかし、そんな歓声とは裏腹に雛菊の心は沈んでいた。 『明日、あちきは身請けされる』 情を売らない花魁『雛菊』×吉原一の遊び人『宗介』 華やかな吉原遊郭で繰り広げられる和風シンデレラストーリー。果たして、雛菊は情を売らずに、宗介の魔の手から逃れられるのか? 絢爛豪華な廓ものがたり、始まりでありんす R18には※をつけます。 一部、流血シーンがあります。苦手な方はご自衛ください。 時代考証や廓言葉等、曖昧な点も多々あるかと思います。耐えられない方は、そっとブラウザバックを。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。