432 / 437
第十七章:世界の為に
17-5戦いの終わりに
しおりを挟む上手く行くと思ったナディアさんがティアナ姫としての覚醒と言う事実を「消し去る」ことで、過去から未来を変えようとした。
しかし、それはその時点から先である現在が無かった事となってしまい、その後の世界は消されるところだった。
勿論、覚醒する事が無かった世界は、その後の未来が枝分かれするように並行世界へと分岐して、あちらの世界は何事もなかったようになる。
消されるのは今のこの世界だった。
私のチートスキルはこの世界では絶対的な力を誇る。
それは「あのお方」と呼ばれる駄女神から与えられた絶対的な力。
この世界でこのスキルの力に抗えるのは同じく「あのお方」の端末だった女神エルハイミさんだけだった。
見込みが甘かったのは認める。
でも、もしそれが上手く行けば色々と私たちにとって都合のいい世界になった気がしていた。
「はぁ~、魔人くらいなら何とかなるけど、流石にジェネラル級は歯が立たなかったわね」
ラーシアさんはそう言ってその場で座り込み、槍を放り投げる。
他の村の皆さんも同じようにほっとしてその場に座り込んでいた。
と、「鋼鉄の鎧騎士」に乗っていたアインさんが「鋼鉄の鎧騎士」から降りてこちらにやって来る。
「よくやってくれた、リルにルラ。俺たちだけではジェネラル級を倒す事は出来なかったからな」
「いえ、元はと言えば私の見込みが甘かったせいです…… ごめんなさい」
私はそう言ってアインさんやラーシアさん、近くにいる皆さんに頭を下げる。
しかし、アインさんは笑って言う。
「リルのせいじゃない。これはみんなで話し合って決めた事だ。それに女神様はちゃんとこの世界を維持するためにフォローしてくれている。多分今なお世界の壁の崩壊を一歩先に破壊して再生する事により崩壊自体を止めているのだろう。俺には世界の壁とやらがどれだけ大きいかは分からんが、あの女神様の事だきっと全てを修復して元どうりにしてくれるだろう」
アインさんはそう言ってへこんでいる私の頭に手を置く。
「リルはエルフではまだまだ子供だ。子供の失敗に大人はいちいち怒らんよ。ただ、正しい道を示して導いていくだけだ」
「アインさん……」
アインさんにそう言われても、精神年齢だけは三十路を越えているのでもの凄く恥ずかしい。
頭を撫でられているけど、今はそれが何となく心地いい。
エルフの村以外で子ども扱いされるのも久しいから。
「しっかし、先生、この子たち女神様が連れてきたから普通じゃないと思ってましたがあんなにすごい力を持っているなんて」
「異世界からの転生者だからな。しかも『あのお方』からスキルをいただいている。今回はそのスキルのお陰で助かったがな」
「あの、もし私たちにスキルが無かったら?」
「流石にこのジルの村も全滅していただろうな。魔人クラスなら数人で倒せるが、悪魔将軍ともなれば歯が立たない。俺の知る限りジルの村で最大の危機だったな」
アインさんはそう笑いながら言うけど、それってもの凄く大事なんじゃ……
「とにかく終わった。避難したみんなに伝えて後片付けを始めよう」
アインさんはそう言って破壊された村を見渡すのだった。
* * * * *
「ごめんなさい!」
「ごめんなさい」
私とルラは長老のラディンさんとその奥さんのロマーさんに頭を深々と下げていた。
あの後坑道に逃げ込んでいた人たちも戻って来たけど、帰る家が押しつぶされたりしてその処理でみんな大忙しになってしまった。
その中にラディンさんの家もあって、現在私たちはそれについて謝っていた。
「なに、かまわんよ。あのジェネラル級悪魔を倒したのじゃ、これくらいの被害で済んだのは奇跡的じゃからな」
「そうですねぇ、ここじゃこんなのは日常茶飯事ですし」
そう言いながらロマーさんは杖を持ちだし振ると、瓦礫が音を立ててゴーレムになって行く。
ごごごごごごご……
「はいはい、あなたたちこの辺の瓦礫をまとめてね」
ロマーさんがそう言うとゴーレムは崩れた家のがれき撤去作業を始める。
「二、三日あれば片付くかしら?」
「ふむ、必要な者だけ先に回収して集会場に行くかの?」
「そうですね、とりあえずはそこで寝泊まりですね」
そう言ってラディンさんは崩れた家の中から必要なものを先に引っ張り出す。
私は慌ててそこへ行って「手伝います!」と言ってルラと一緒に瓦礫の中から必要なものを引っ張り出すのだった。
* * * * *
村はロマーさんと同じくロックゴーレムを作り瓦礫撤去が始まっていた。
今回の騒動は流石に被害が大きく、村の修復には一週間くらいかかりそうだと言う事だ。
あれだけの大騒ぎで死人が一人も出てないのは凄い。
ケガ人も魔法ですぐに治って村の復旧作業に従事している。
「リルさんとルラさんには申し訳ないが、数日寝泊まりはここで頼むのじゃ」
集会場は神殿だった。
エルハイミさんがいたあの神殿。
神殿の裏には宿舎があって、空き部屋も結構残っていた。
なので臨時でそこで寝泊まりをするのだが……
「みんな復旧作業で忙しくて炊き出しをする人員が足りないわ、リルちゃんルラちゃん悪いけど炊き出しをするのを手伝ってもらえないかしら?」
ロマーさんがそう言うので、私とルラはすぐに頷いて炊き出しのお手伝いをするのだった。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。
広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ!
待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの?
「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」
国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる