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第十七章:世界の為に

17-2戦いの中で

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「あのひび割れを『消し去る』!」


 私は壊れた「世界の壁」のひびから出て来る異界の者たちを止める為にひび割れを「消し去る」ようにスキルを使う。
 これで少しでも出て来る異界の者が減れば。

 しかし私のチートスキルを使ったはずなのに上空のひび割れは消えない。
 

 パキッ、パキパキパキッ!!
 パキーンっ!!!


「なっ!?」

 それは消えるどころか逆にガラスが割れるような音がしてひび割れが広がってしまった!?
 そして更に大量の異界の悪魔たちがあふれ出す。
 

『どう言う事だ!?』

「分かりません、私のスキルが効かない!?」

 アインさんの質問に私は首を振りながら答える。

 ここは何とか撃破は出来ているけど、数が多すぎる。
 アインさんは「鋼鉄の鎧騎士」を操作しながらどんどんと悪魔たちを粉々にして消し去っている。
 他の村のみんなも各個撃破しているけど、数に押されてケガ人も出始めている。



「ダメですわ! リルは『世界の壁』に対してその力を使ってはいけませんわ!! あなたの力はこの世界限定ですから次元を超えたモノに対しての効果はほとんどありませんわ!!」


 ぶんっ!


 どこからともなく声が聞こえてきて、上空にエルハイミさんが現れる。
 そして手を振りひび割れを一瞬黒くして破壊するとすぐにそこへまた新たな背景を作り上げる。

 どう言う事?
 もしかして私余計な事しちゃった??


「くぅ~! 忙し過ぎですわ! ここは私が修復しますから、みんなはこちらに来た異界の悪魔たちを排除してくださいですわ!! そいつらはこちらの世界の魂を喰らい、その内包する魔素を自分の世界へ持ち去ろうとしてますわ!!」

 そう叫びながらエルハイミさんはどんどんとひび割れを破壊して再生をしている。
 だがそんなエルハイミさんの背後に異界の悪魔の影が!

 
『やらせるか!!』


 エルハミさんに襲いかかろうとする異界の者を、瓦礫の高い場所を足場に飛び上がったアインさんの駆る「鋼鉄の鎧騎士」がぶちのめす!


『【爆炎拳】!!』


 異界の悪魔がアインさんの「鋼鉄の鎧騎士」に手のひらを押し付けられると同時に爆炎が体の中に伝達して燃え上がる。 
 だがそれまででアインさんの「鋼鉄の鎧騎士」は自由落下を始める。


 
『くそっ! 誰か次のやつを頼む! 飛び上がるにはもう一度足場が無いと!!』

 一体はアインさんが倒したけど、もう一体はまさに今エルハイミさんを襲おうとする。
 エルハイミさんは「世界の壁」を修復する事に集中していて、異界の悪魔に対処できない!?



「あたしはエルハイミさんより『最強』! お願いケベルさん!!」

「任せておけ! そらっ、とんでけっ!!」


 ぶんっ!


 しかしそこへ円盤投げのように回転してルラを放り投げるドワーフのケベルさん。
 もの凄い存在感を振りまくルラはまるで投擲された槍のように真っ直ぐにその異界の悪魔へと飛んで行く。


「必殺ぱーんちッ!」



 ぼすっ!!



 渾身の力を込めたその一撃は異界の悪魔の胸に風穴を開けて突き抜ける。


「よっと!」

 そしてルラはさらに近くにいた異界の悪魔を足場に蹴り上げて他の悪魔に攻撃をかける。
 が、その軌道を読まれ火炎を吐き出される。


「ルラっ! 火炎を『消し去る』!!」


 ぼわっ!
 しゅっ!!
 

 完全には消しきれなかったけど、ルラを包もうとした炎はほとんど消し去った。


「あっつぃっ! けど、ありがとお姉ちゃん! このぉっ!」

 ルラは落下をしながらも近くにいる異界の悪魔をなぎ倒す。
 
 落下するルラに続き上空へ向かって魔法を使い攻撃をする村の皆さん。
 おかげでエルハイミさんの周りには異界の悪魔たちは近寄れないでいる。


「よし、ここは修復終わりましたわ! でも今のですべての『世界の壁』を破壊して再生させないと、どんどんリルの力で『世界の壁』が速度を上げて崩壊を連鎖してますわ。私は世界の壁の修復に全力を注ぎますわ、みんなはとにかくこの異界の者たちを掃討してくださいですわ、お願いしますわ!!」

  
 エルハイミさんはそれだけ言ってこの場から消える。
 多分崩壊を始める「世界の壁」をどんどんと破壊して再生する作業に入ったのだろう。



「となれば、後はここに湧いて出た連中を排除すればいいのだな? みんな、気合を入れろ!!」



『はいっ!』


 アインさんはそう言ってみんなに気合を入れる。
 どうやら異界の悪魔たちはここだけに集中して漏れ出していたようだ。
 ならばここに出た連中だけを倒せばこの世界への脅威は無くなる。


「お姉ちゃん、次来る!」

「残りざっと八百! みんな連携をして!!」

 戻ってきたルラはまたケベルさんに飛ばしてもらう準備をしている。
 ラーシアさんは地上にいる村の人たちに声を掛け連携をして上空の悪魔たちに攻撃を繰り返している。

 このままいけば!




『ぐるぅぁあああああぁぁぁぁぁっ!』



 しかし、流石に不利になりつつあることに気付いた異界の悪魔たちは、魔人らしき悪魔の叫び声で一所に集まり始めた。


「何を!?」

 私がそう叫ぶ目の前で空中にいる悪魔たちは何と共食いのような事を始めて行く。
 いや、共食いではない、まるで一つに融合するように……


『まさか、魔人共や悪魔どもが集まって、ジェネラルクラスになろうとしているのか!? まずい、ジェネラルクラスでは我々には対抗手段がなくなるぞ!!』   


 アインさんはそう叫ぶ。

「ジェネラルクラスって!?」

『魔人よりも更に強い存在だ。こちらの世界に依り代無しで湧き出たからには相当な奴になるぞ!!』

 見上げたそれはどんどんと集まって一つの形になって行く。
 それは正しく悪魔の将軍。

 形になってきたそれは全身を漆黒の鎧でまとい、まるでオーガの様な顔つきで大地にその足を着く。


 どーんッ!


 ゆっくりと起き上がるそれは、「鋼鉄の鎧騎士」の倍以上はありそうなその巨体で私たちを見下して来る。




「それでもこいつだけは!」





 私たちはその悪魔将軍を見上げるのだった。
 

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