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第十六章:破滅の妖精たち

16-24女神と言う存在

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「詳しくその話を聞かせてくれ!」

「え、ええぇとぉ……」



 私とルラはジルの村の学校でどんな授業を受けているか見に来て、体験で授業を受けていた。
 そして午後の「身体を動かす授業」と言う名の実戦さながらの組手で、ルラがスキル「最強」を使ってもアインさんに勝てなかったと言う衝撃を受けながら、私がつぶやいた言葉で何故か大反響を受けていた。


「あの女神様に一矢報いるとは!」 

「一矢報いるって、なんでみんなもエルハイミさんにそのような感情を?」

 一応エルハイミさんは女神だし、敬われる事はあっても一矢報いるとか仇敵のような扱いって何?


「あたしは四世代前に女神様にコテンパンにやられてここへ転生させられたの。当時は敵対関係だったけど今は感謝しているわ」

「俺も! でも、あの女神様相手に一矢報いられるなってすごいな!!」

「女神様反則の強さだしなぁ~」


 みんな私たちの周りに集まってそんな事を言っている。
 何世代前とか言ってるけど、その当時の記憶は戻っているのかな?


「リル、女神様に一体どうやったらそんな事が出来たんだ?」 
  
 アインさんは改めて私にそう聞いてくる。
 どうやったらって言われても、私たちの持つスキルでやった訳で……


「えーと、ルラと同じく私も駄女神……じゃなくて、『あのお方』からスキルをもらっているんですよ。何でも『消し去る』事が出来るスキルを。それでエルハイミさんの『女神の力』を『消し去る』したんですが、すぐにエルハイミさんは『あのお方』とつながって元の力を取り戻し、更に今後私のスキルがエルハイミさんに対しては効かないようになっちゃったんですよ」


 私はありのままの事を告げると周りから感嘆のため息が上がる。


「はぁ~、すごいね、やっぱり『あのお方』ってすごいんだ!」

「でも女神様って『あのお方』のこの世界での端末なんだろ? それじゃぁ何やったって勝てっこないじゃん!!」

「まあでも、そのおかげで変な呪縛から解放されて、この村に何度も転生させてもらっているんだからいいけどね~」


 みんなはそんな事をあっけらかんと言っている。
 いや、転生前の記憶がよみがえって、昔の事さらりと言われても。


「あの、みんなは転生前の記憶があるの?」


 思わずそう聞くとみんなが一斉に私を見てから首を縦に振る。

 
「うん、思い出したよ! あ、でも今は今の自分だと思ってるから昔の記憶はあくまで記憶。今のあたしは先生に勝ってお嫁さんにしてもらうの!! そして今度こそ私の初めてをもらってもらうの!」

「まあ、女神様にもう盾突くつもりはないよな。なんだかんだ言って救ってもらったしな」

「うんうん、それにこの村だとみんなも凄い力もっているからこれが普通で気兼ねしなくていいもんね」

 
 なんかすごい事言ってるし。
 私は思わずアインさんを見る。
 するとアインさんは苦笑しながら言う。


「俺も女神様には救ってもらった口だな。それまでは神など信じず、敵だとさえ思っていた。あちらの世界でもな」

「あちらの世界って…… そう言えばアインさんも異世界転生者だったんですよね?」

「俺はあちらの世界では中東にいたんだ。神を信じそしてそれに裏切られ、こちらの世界でも最初散々な目にあってな…… しかし俺の望みと女神様の望みは同じだった。平穏で温和な普通の生活が出来る世界。向こうの世界でもこちらの七百年前でも手に入れられなかったものが今ここで現実になりつつある。だから俺は女神様には感謝している。そしてみんなをより良い方向へと指導するつもりだ。この子らも今ではすっかり温和になったからな」

 そう言って子供たちを見る眼差しはやたらと優しかった。


「アインさんもあちらの世界から…… 中東って、私がいた時も結構争いが絶えなかった…… そう、なんだ……」


 アインさんがあちらの世界からの異世界転生者で中東と言う特別な地区からとは驚いた。
 そしてエルハイミさんと同じ思いでこの村の子供たちを指導している。

 確かにアインさんは凄いと思う。

 そして転生した子供たちを見ていると、みんな穏やかな表情をしている。
 たとえ過去に何があっても、今はこの村で温和に穏やかに過ごしている。

 だとすれば、静香もここへ転生すればいずれは……


「エルハイミさん、強いんだもんなぁ~。赤竜のセキさんもアインさんも。あたし『最強』のスキルあるのにぃ~」

「ははは、ルラはちゃんとここで学べばもっと強く成れる。元が凄いんだからな。だが、慢心は良く無いぞ。足元をすくわれるからな」

 私が静香の事を思っているとルラが唇をとがらせてそう言う。
 でも確かにそうだ。
 みんなすごいのにここでは何故か空気がゆるい。
 いや、優しいと言うか。


「はいはい、今日は誰もケガしてないわね?」 

 ラーシアさんはぱんぱんと手を打って話に入って来る。
 午後の「体を動かす授業」はどうやら終りのようだ。
 そして私は思う、もっとこの村が知りたいと。


「何となくシェルさんが言った意味が分かったような気がします。この村は確かに良い所ですね」

「ああ、俺もそう思うよ」

 そう言いながら私たちはまた校舎へと戻って行くのだった。


 * * *


「ここなら静香も大丈夫かな?」

「アリーリヤ? 後イリカも?」

 校舎に戻って私はそう言うとルラが聞いてくる。
 私は頷き言う。

「うん、まだ全部見てないけどここへ転生すればアインさんの所で更生出来そうだしね。イリカも」

 それにここへ転生できるとなればまた静香に会える。
 何度輪廻転生しても今の私には十分な時間があるから。

「ん~でもそうするとエルハイミさんにお願いに行かなきゃだよね~」

「そうだね、あ、そう言えばティアナ姫の転生者の人ってもう子供産まれたのかな?」


 びきっ!


 何気に私がそう言うといきなり周りの空気が変わった。

「え? え?? 私なんか変な事言った?」

「い、いや、そうではないのだが……」



 おろおろする私にアインさんは重苦しそうにそう言うのだった。

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