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第十四章:脈動

14-6新型の魔晶石核

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 アリーリヤさんの事は気になるけど私たちは受講後ソルミナ教授の研究室へ行く。


「ソルミナ教授~来ましたよ~」

「きょうじゅ~」


 私とルラは研究室に入りながらそう言うも何か静かだ。

「あれ? ソルミナ教授いないのかな?」

「おかしいですね、いつもこの時間ならいるのに」

「おかしいねぇ~」

 ヤリスも研究室をきょろきょろ見渡すけど教授の姿が見えない。
 私も首を傾げ、ルラも同じく首をかしげる。
 
 大体この時間はソルミナ教授はもう研究室に来て今日の研究用の道具とかを準備している頃だった。

「今日はやらないって言ってなかったし、何処行ったんだろう?」

「うーん、とりあえず待ってましょう」

 もう一度きょろきょろと探すも、理科室みたいな広さのこの研究室にソルミナ教授の姿は見えない。
 仕方なくヤリスの言う通り椅子を引っ張り出して三人で座って待つ事にする。


「そう言えば今日から精霊を呼び出して魔晶石に閉じ込める作業を始めるんですよね?」

「昨日はそう言ってたよね。そもそも精霊を魔晶石に閉じ込めるって技術自体が珍しいのに」

「そうなんだ~」

 今日から始める予定の精霊を魔晶石に閉じ込める作業は誰にでも出来るものじゃないらしい。
 不慣れな人だと数人がかりでしないといけないらしいけど、その辺は流石にソルミナ教授。
 魔力総量もそこそこあって、技術的にも高いものがあるのでその辺は一人でも出来るらしい。
 もっとも、一日二個くらいが限度だとか言っていたけど。


「お姉ちゃんは何の精霊呼び出すの?」

「私は水の精霊かな? ルラは?」

「あたしは土の精霊~」


 ルラとなんの精霊を呼び出すかを話していると、ヤリスが興味を持ったか聞いてくる。


「ねぇねぇ、精霊って見た事無いけど姿があるの?」

「えーと、受講であったように一般的には土の精霊は土のスライムみたいで、水は透明な女性、火は体に炎をまとったトカゲで、風は透き通った私たちエルフみたいな女性ですね」

 そう言いながら私は水槽の水に向かってエルフ語で魔力を載せながら水の妖精に語り掛ける。


「お願い水の精霊よ、私の友人に姿を見せてやって」


 すると水槽の水がぶるっと震えてぐぐぐぅ~っと持ち上がり、透明な女性の姿になる。


「へぇ~、これが水の精霊ウンディーネね? 裸なんだ、眼福眼福♬」

「いや、透明な精霊の裸見て何が楽しんんですか? 普段はこの姿で出て来る事は少ないんですよ。精霊魔法を使うとこの姿にならずにすぐに手伝ってくれるんです」

 ヤリスに説明していると物珍しそうに水の精霊をあちらこちらから見まわす。
 そしてチョンと指で触る。


 ぴちゃん


「うわっ、肌が水で出来ている!?」

「そりゃ、可視できるようにお願いしているから水を媒体に姿を作ってますもん。今の彼女は水で出来た体ですよ」

 まあ、こう言った可視できる姿になってもらうのは稀なんだけどね。
 私たちが精霊魔法を使う時はその効力を直接出してもらうから、人の姿になってもらうのなんか魔力の無駄なんだけどね~。

「ありがとう、水の精霊」

 私がエルフ語でそう言うと水の精霊ウンディーネは頷いてまた元の水槽の水に戻る。


「へぇ、初めて精霊を見たけど、人と変わらない大きさなのね? でもあんなに大きなものを魔晶石に閉じ込められるの??」

「実際にはあそこまで大きく成る必要はないんですけどね、何と言うか私たちの精霊に対する概念は光の精霊ウィルオーウィプスみたいに小さな丸い光の球の様な物なんですよ。でも可視してもらうとさっきみたいに媒介を使ってね」

「ふ~ん、そう言うもんなんだ。やっぱり普通の魔法とはちょっと違うのね?」

「ですね~」

 ヤリスとそんな話をしていたら扉が開いてソルミナ教授が入って来た。


 ばんっ!


「ごめんごめん、媒介を持ってくるのに手間がかかちゃったわね。早速始めましょうか」

 ソルミナ教授は色々なものを持って来ていた。
 そしてお皿に土や、お椀に水、ろうそくに窓を開け風が入ってくるようにする。
 それから魔晶石を取り出す。

「取りあえず今日は二個までよ。私の魔力だとそこまでが限界だからね。リルとルラにはこれら媒介を使ってもらって一つづつ精霊を呼び出してもらいたいの。ああ、実体化はさせなくていいからね。呼び出すだけでいいわ。そうしたら私がすぐに魔晶石に封印するから」

 そう言って私とルラの前に魔晶石を一つづつ置く。

 私とルラは頷いてから土と水の精霊を呼び出す。
 すると程無く土の中から茶色い光の球体が浮かび上がり、水の中からは水色の球体が浮かび上がる。


「上出来上出来。ほんと、十七歳とは思えない精霊の制御ね。助かるけど」

 ソルミナ教授はそう言いながら呪文を唱えて手をかざす。
 途端に魔晶石の下に魔法陣が現れて光り輝く。
 そして精霊たちは吸い込まれるように核魔晶石に引き寄せられて行く。


「うわぁ、凄い魔法陣の構築! なにこれ、多重魔法陣!?」

「この技術は積層魔法陣によるコントロールよ。他の人には内緒だからね?」


 ソルミナ教授はそう言ってヤリスにウィンクする。
 確かに私たちのレベルでは一つの魔法陣を書くのがやっとだ。
 それを多重に魔法陣を重ねて一気に制御出来るだなんて流石に教授。

 程無く精霊たちは魔晶石に取り込まれ、輝きを増して表面に脈打つかのように茶色い動脈みたいな輝きと水色の動脈みたいな輝きを残す楕円形の魔晶石核になる。


「ふう~、やっぱ魔力使うわぁ~。でも取りあえず別々の魔晶石核が出来たわね。お疲れ様、今日はここまでね」

「はい? これだけでいいんですか??」

「私が魔晶石核を作れるのは一日最大二個まで、それ以上は魔力不足で気絶しちゃうからね。精霊を呼び出す魔力でさえ足らない位に消耗してるのよ」

 そう言ってお茶を用意してカップに入れてみんなに配りながら自分もそれを飲む。


「ぷはぁ~、疲れた疲れた」


「でも、ソルミナ教授こんなに簡単に出来ちゃうならこれで終わりですか?」

 ヤリスがお茶を飲んでからソルミナ教授に聞く。
 するとソルミナ教授は変な顔をして言う。

「まだまだ始まったばかりよ? アニシスの言う新型連結型には最低でも魔晶石核が百個は必要になるわ。各精霊二十五個づつ準備しなきゃよ?」

「百個っ!?」

 ヤリスは驚きの声を上げる。

 ええ~?
 聞いてないよぉ~。
 そうすると毎日二個だからひと月半以上かかる計算になっちゃう。

 道理でアニシス様がお部屋にエルフの人をお抱えに欲しがっている訳だ。


「とにかくこれから先どんどん作って行かなきゃだから二人ともお願いね! それとヤリスは魔晶石の買い付けお願い。あんたのルートなら容易でしょ?」

「それはうちの連中に言えば出来ますけど……」

 なんか嫌そうな顔するヤリス。
 しかしそんなヤリスを気にもしないでソルミナ教授は言う。


「とにかく景気づけよ、これからご飯に行きましょう、おごっちゃうからね!! 私も回復の為にしっかりと食べなきゃだからね!」

「うわぁ~いぃ、ソルミナ教授のおごりだぁ~!」


 一人大喜びするルラだけど、マーヤ母さんたちに外食する事言っておかなきゃね。



 私たちはこうしてしばしソルミナ教授の魔晶石核作成に付き合う羽目になるのだった。 
 
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