340 / 437
第十四章:脈動
14-6新型の魔晶石核
しおりを挟むアリーリヤさんの事は気になるけど私たちは受講後ソルミナ教授の研究室へ行く。
「ソルミナ教授~来ましたよ~」
「きょうじゅ~」
私とルラは研究室に入りながらそう言うも何か静かだ。
「あれ? ソルミナ教授いないのかな?」
「おかしいですね、いつもこの時間ならいるのに」
「おかしいねぇ~」
ヤリスも研究室をきょろきょろ見渡すけど教授の姿が見えない。
私も首を傾げ、ルラも同じく首をかしげる。
大体この時間はソルミナ教授はもう研究室に来て今日の研究用の道具とかを準備している頃だった。
「今日はやらないって言ってなかったし、何処行ったんだろう?」
「うーん、とりあえず待ってましょう」
もう一度きょろきょろと探すも、理科室みたいな広さのこの研究室にソルミナ教授の姿は見えない。
仕方なくヤリスの言う通り椅子を引っ張り出して三人で座って待つ事にする。
「そう言えば今日から精霊を呼び出して魔晶石に閉じ込める作業を始めるんですよね?」
「昨日はそう言ってたよね。そもそも精霊を魔晶石に閉じ込めるって技術自体が珍しいのに」
「そうなんだ~」
今日から始める予定の精霊を魔晶石に閉じ込める作業は誰にでも出来るものじゃないらしい。
不慣れな人だと数人がかりでしないといけないらしいけど、その辺は流石にソルミナ教授。
魔力総量もそこそこあって、技術的にも高いものがあるのでその辺は一人でも出来るらしい。
もっとも、一日二個くらいが限度だとか言っていたけど。
「お姉ちゃんは何の精霊呼び出すの?」
「私は水の精霊かな? ルラは?」
「あたしは土の精霊~」
ルラとなんの精霊を呼び出すかを話していると、ヤリスが興味を持ったか聞いてくる。
「ねぇねぇ、精霊って見た事無いけど姿があるの?」
「えーと、受講であったように一般的には土の精霊は土のスライムみたいで、水は透明な女性、火は体に炎をまとったトカゲで、風は透き通った私たちエルフみたいな女性ですね」
そう言いながら私は水槽の水に向かってエルフ語で魔力を載せながら水の妖精に語り掛ける。
「お願い水の精霊よ、私の友人に姿を見せてやって」
すると水槽の水がぶるっと震えてぐぐぐぅ~っと持ち上がり、透明な女性の姿になる。
「へぇ~、これが水の精霊ウンディーネね? 裸なんだ、眼福眼福♬」
「いや、透明な精霊の裸見て何が楽しんんですか? 普段はこの姿で出て来る事は少ないんですよ。精霊魔法を使うとこの姿にならずにすぐに手伝ってくれるんです」
ヤリスに説明していると物珍しそうに水の精霊をあちらこちらから見まわす。
そしてチョンと指で触る。
ぴちゃん
「うわっ、肌が水で出来ている!?」
「そりゃ、可視できるようにお願いしているから水を媒体に姿を作ってますもん。今の彼女は水で出来た体ですよ」
まあ、こう言った可視できる姿になってもらうのは稀なんだけどね。
私たちが精霊魔法を使う時はその効力を直接出してもらうから、人の姿になってもらうのなんか魔力の無駄なんだけどね~。
「ありがとう、水の精霊」
私がエルフ語でそう言うと水の精霊ウンディーネは頷いてまた元の水槽の水に戻る。
「へぇ、初めて精霊を見たけど、人と変わらない大きさなのね? でもあんなに大きなものを魔晶石に閉じ込められるの??」
「実際にはあそこまで大きく成る必要はないんですけどね、何と言うか私たちの精霊に対する概念は光の精霊ウィルオーウィプスみたいに小さな丸い光の球の様な物なんですよ。でも可視してもらうとさっきみたいに媒介を使ってね」
「ふ~ん、そう言うもんなんだ。やっぱり普通の魔法とはちょっと違うのね?」
「ですね~」
ヤリスとそんな話をしていたら扉が開いてソルミナ教授が入って来た。
ばんっ!
「ごめんごめん、媒介を持ってくるのに手間がかかちゃったわね。早速始めましょうか」
ソルミナ教授は色々なものを持って来ていた。
そしてお皿に土や、お椀に水、ろうそくに窓を開け風が入ってくるようにする。
それから魔晶石を取り出す。
「取りあえず今日は二個までよ。私の魔力だとそこまでが限界だからね。リルとルラにはこれら媒介を使ってもらって一つづつ精霊を呼び出してもらいたいの。ああ、実体化はさせなくていいからね。呼び出すだけでいいわ。そうしたら私がすぐに魔晶石に封印するから」
そう言って私とルラの前に魔晶石を一つづつ置く。
私とルラは頷いてから土と水の精霊を呼び出す。
すると程無く土の中から茶色い光の球体が浮かび上がり、水の中からは水色の球体が浮かび上がる。
「上出来上出来。ほんと、十七歳とは思えない精霊の制御ね。助かるけど」
ソルミナ教授はそう言いながら呪文を唱えて手をかざす。
途端に魔晶石の下に魔法陣が現れて光り輝く。
そして精霊たちは吸い込まれるように核魔晶石に引き寄せられて行く。
「うわぁ、凄い魔法陣の構築! なにこれ、多重魔法陣!?」
「この技術は積層魔法陣によるコントロールよ。他の人には内緒だからね?」
ソルミナ教授はそう言ってヤリスにウィンクする。
確かに私たちのレベルでは一つの魔法陣を書くのがやっとだ。
それを多重に魔法陣を重ねて一気に制御出来るだなんて流石に教授。
程無く精霊たちは魔晶石に取り込まれ、輝きを増して表面に脈打つかのように茶色い動脈みたいな輝きと水色の動脈みたいな輝きを残す楕円形の魔晶石核になる。
「ふう~、やっぱ魔力使うわぁ~。でも取りあえず別々の魔晶石核が出来たわね。お疲れ様、今日はここまでね」
「はい? これだけでいいんですか??」
「私が魔晶石核を作れるのは一日最大二個まで、それ以上は魔力不足で気絶しちゃうからね。精霊を呼び出す魔力でさえ足らない位に消耗してるのよ」
そう言ってお茶を用意してカップに入れてみんなに配りながら自分もそれを飲む。
「ぷはぁ~、疲れた疲れた」
「でも、ソルミナ教授こんなに簡単に出来ちゃうならこれで終わりですか?」
ヤリスがお茶を飲んでからソルミナ教授に聞く。
するとソルミナ教授は変な顔をして言う。
「まだまだ始まったばかりよ? アニシスの言う新型連結型には最低でも魔晶石核が百個は必要になるわ。各精霊二十五個づつ準備しなきゃよ?」
「百個っ!?」
ヤリスは驚きの声を上げる。
ええ~?
聞いてないよぉ~。
そうすると毎日二個だからひと月半以上かかる計算になっちゃう。
道理でアニシス様がお部屋にエルフの人をお抱えに欲しがっている訳だ。
「とにかくこれから先どんどん作って行かなきゃだから二人ともお願いね! それとヤリスは魔晶石の買い付けお願い。あんたのルートなら容易でしょ?」
「それはうちの連中に言えば出来ますけど……」
なんか嫌そうな顔するヤリス。
しかしそんなヤリスを気にもしないでソルミナ教授は言う。
「とにかく景気づけよ、これからご飯に行きましょう、おごっちゃうからね!! 私も回復の為にしっかりと食べなきゃだからね!」
「うわぁ~いぃ、ソルミナ教授のおごりだぁ~!」
一人大喜びするルラだけど、マーヤ母さんたちに外食する事言っておかなきゃね。
私たちはこうしてしばしソルミナ教授の魔晶石核作成に付き合う羽目になるのだった。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。
広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ!
待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの?
「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」
国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる