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第十三章:魔法学園の日々

13-29アニシスのお部屋

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 ティナの国に来て早々に魔窟、アニシス様のお部屋に行く事となってしまった。


「ううぅ、本当に襲われないんでしょうね?」

「どうしたのお姉ちゃん震えて?」


 ニコニコ顔のアニシス様にくっ付いて行ってアニシス様のお部屋に向かう。
 そして着いたそこは観音開きの大きな扉の部屋だった。


「さあ着きましたわ、ここが私のお部屋ですわ!」


 ううぅ、きっと奇麗な女性があられもない姿で酒池肉林しているような部屋なんだ。
 そんな所に入って清らかな身体のまま出てこられるのだろうか?
 アニシス様自体は手を出さないとか言ってるけど、他の人たちが私に手を出さないとは言っていない。
 そんな魔窟に入って良いのだろうか?


「あ、あのやっぱり私辞退します!!」


 はしっ!


「ほら、お姉ちゃんいくよ~」

 思わず逃げ出そうとした私の手をルラははしっと掴み開かれる扉の中に入って行こうとする。

「いやぁ~っ! 犯されるぅっ!!」

「人聞きの悪い事言わないでくださいですわ、約束はちゃんと守りますわよ?」

 そう言って私たちはアニシス様の部屋に入っていくのだった。


 * * *


「まあ、アニシス様お戻りになられたのですの?」

「嬉しいですわ、アニシス様が夏休みの間は何時戻って来られるかやきもきしていましたのよ?」

「わーいアニシス様だ! 抱っこしてぇ~」

「アニシス様♡ よくお戻りくださいました」

「アニシス様!!」


 部屋に入ると途端にたくさんの女性たちがアニシス様に群がって来る。
 でもみんな普通の恰好をしていたり、アニシス様のようにドレスを着込んでいたりと。


「あ、あれ?」

「へぇ~、アニシス様の部屋って大きいんだねぇ~」

 ルラの言う通り、そこは部屋と言うよりは講堂の様な造りで、壁一面に本棚があり、所々にイスとテーブルがあって女性たちが各々に本を読んだり何かを書いていたりとしていた。

 なんかイメージと違う。


「皆様、ごきげんようですわ。そうそう新しく私に仕えてくれるスィーフからの皆さんをご紹介いたしますわね。こちらの方々ですわ。こちらがミリンディアさん、こちらの方がエレノアさん、こっちがハーミリアさんでこちらはクロアさんですわ。皆さん仲良くしてやってくださいですわ」


 はーいぃ!


 アニシス様がスィーフの皆さんを紹介すると全員がこちらを見て返事をする。
 その様子をアニシス様は嬉しそうに見ている。


「あの~、それでアニシス様。そちらのエルフの少女たちは? もしや念願のエルフの方も来たのですか!?」

「あらあらあら~、残念ながらこちらの方は私のお友達で、皆さんの様な恋人ではありませんのよ~」


 こ、恋人って!
 やっぱりこの人たちもうアニシス様に食べられちゃた人たち!?


「それは残念ですね、アニシス様の研究している新しい魔晶石核の元となる精霊魔法使いが手に入らないとは」

「理論上精霊が一番魔晶石核の効率を上げますが、四大精霊以外で魔晶石核を作ると言うアニシス様の研究がなかなか進みませんね」

「残念ですわぁ、アニシス様でしたらあのオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を越えられる『鋼鉄の鎧騎士』を作れるはずですのに」

「アニシス様~、また何かお手伝い出来る事ありませんか?」


 口々にそう言う女性たち。
 なんか更に違和感を覚える。


「まあまあ、皆さんそう言わずに。私のお友達のリルさんとルラさんですのよ、仲良くしてやってくださいですわ」


 はーいぃ!


 またまたみんなそろってアニシス様にお返事をする。
 アニシス様はそのみなさんの様子を見てもの凄くご満悦のようだった。


「所でアニシス様、先日ガレント王国に送り付けた連結型魔晶石核ですがあれを渡して大丈夫なのですか?」

「そうですわよ、あれはティナの国の秘伝中の秘伝。オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』に使われる技術の劣化版ですわよ?」

 はい?
 なんかいきなりきな臭い話に??

「大丈夫ですわよ、将来リルさんとルラさんが私の部屋に来ていただければきっとあれ以上の連結型魔晶石核が作れますわよ! もしかしたらあの伝説のマシンドール、『アイミ』も作れるやもしれませんわ!!」


 わぁあああぁぁぁっ!


 アニシス様がそう言うと皆さんもうっとりとしてアニシス様をたたえる。
 いや、なんか想像していたアニシス様の部屋とすごく開きがあるんですけど……


「と言う事で、リルさんとルラさんには私の部屋でやっている事についてもっといろいろ知っていただきたいのですわ。そうすればきっと理解して私の元へ来て下さりますわ!!」

 ぐっとこぶしを握って鼻息荒く瞳に星を輝かせアニシス様はそう言う。
 なんかお部屋って言うよりは研究室とか何かに見えるお部屋……

「へぇ~、アニシス様ってお部屋でいろいろ研究しているんだ~」

「ええ、そうですわ! 色々な事を研究しながら私好みの女性たちが一緒に手伝ってくれる。最高のお部屋ですわ!」

 ま、まあお部屋と言えばお部屋なんだけど、講堂のようなここでどうやってこんないもいる人たちが寝泊まりしているんだろう?
 私がそう疑問に思っているとアニシス様はくるりとこちらを向いて言う。


「さぁさぁ、リルさんもルラさんもスィーフの皆さんもここ以外にも部屋があるので案内しますわ~♪」


 そう言ってアニシス様は私たちを引き連れて奥の方へ行く。
 すると本棚の向こうにいくつかの扉が見える。


「はい、まずはこのお部屋はお食事を作る所ですわ! お城の食堂に行く暇がないと簡易で食事を作ってもらうのですわ」

 一つ目の部屋を開けるとちょっと小さめな部屋にかまどがあって、ニンニクとかトウモロコシ、唐辛子とかの乾物が壁からぶる下がっていた。
 調理器具も一応はあって、確かに簡単な料理ならできそうだ。

「へぇ~、お部屋にお台所があるんですか……」

「ここで毎日リルさんのご飯を作ってもらいたいですわぁ~」

 いや作りませんからね!

 心の中でそう答えているとアニシス様は次の部屋の扉に手をかける。
 そこはお手洗い?


「ここからお城のお手洗いは遠いの別に作ってもらいましたのよ~」

 まあ、これだけ人数いればそうかもしれない。
 私がそう思ているとアニシス様は次の部屋を開ける。


「ここは浴槽ですわ。一度に五人は一緒にお風呂に入れますの! ティナの国は寒いのでここで皆さんにしっかりと温まてもらいたく大きな湯舟にしましたのよ!」

 そこには広々とした場所の奥にゆったりと手足を伸ばしてもまだ広い湯船があった。
 確かにこれなら一度に五人は言っても大丈夫そうだ。
 いや、その気になればもっとは入れそう。 

 ガレント王国では湯あみと言ってもバスタブにシャワーみたいなのがあって、実質的にはシャワーで済ますの感じだった。
 でもここは完全に湯船につかるスタイルだった。
 まるで個人温泉みたい。

 私がそう思っているとアニシス様は次の部屋を開く。


「ここは皆さんの寝室ですわ、広く取っているのでまだまだたくさんの方がここで寝泊まり出来ますわ!!」

「ひろっ!」

 アニシス様がドヤ顔するくらいには広い。
 と言うか、なにこれ?
 まるで災害時の体育館みたいにだだっ広い所に整然と並べられたベット群!

「皆さんにはゆっくりと休んで頂きたいですもの、広く快適にしましたわ~」

 いや、広さは十分だけど、快適なのこれ?
 思わず首をかしげているとアニシス様は更に興奮して最後の扉に手をかける。

 
「そしてそしてここが私の寝室ですわ♡」


 ばがっ!


「がっ! ルラは見ちゃダメっ!!」


 思わずルラの目に手を当て目隠しする。
  
「え~、なんであたしだけ見ちゃダメなの~?」
 
「ルラにはまだ早い!!」

 思わずそう叫んでしまう私。
 だって部屋全面がダークピンクで統一されていて、レースのカーテンの向こうには天蓋のついた大きなベッド。
 多分同時に何人も上がっても問題無いくらいの大きさ。
 そして壁にかけられた怪しい道具の数々。

 更にあっちには服掛けに怪しいネグリジェや、おっとなぁーな下着なんかがぶる下げられている!!


「ア、アニシス様ここで何するつもりなんですか!?」

「何って、愛を語ったり深めたりするのですわ。リルさんもここへ来たらたっぷりと可愛がってあげますのに~♡」


 ぞわわわわっ!


 駄目だ、やっぱりアニシス様の部屋だ!
 酒池肉林だ!
 犯されるんだ!!


「え、遠慮します!! 断固としてぇっ!!」

 

 ルラの目を両手で隠しながら私はそう叫んで思い切り後ずさりするのだった。

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