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第十三章:魔法学園の日々

13-24鋼鉄の鎧騎士改修型

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「もごもご、これも美味しいわね」


 なんだかんだ言って私の作ったサンドウィッチは好評だった。
 ヤリスもルラも、スィーフの皆さんやサ・コーンさん、ウ・コーンさんなんかもサンドウィッチをどんどん食べてくれている。


「この卵のやつ美味しいね。あたしはこれが気に入ったな」

「え~ミリンディアはこっちの海鮮マリネの方が好きかと思ったのに~」

「私はこれが好き。シンプルだけど美味しい。マスタードの辛味が絶妙」

「意外だね、クロアはローストビーフの方が好きかと思った」


 スィーフのお姉さん方はキャイキャイ言いながら食べている。
 皆さん好みが違うのは分かるけど、意外な人が意外な物を好むというのは驚きだ。

「うむ、リル殿この卵のやつ作り方教えてもらえないだろうか?」

「私はこちらのジャムが気に入ったな。意外や甘いものもイケる」

 うん、サ・コーンさんとウ・コーンさんも意外なのが好みだったようだ。
 筋肉隆々の雷門の左右にいる仏像みたいな二人だけど、食べ物の好みが意外とお子様向けとか女性向けとか。


「やっぱり卵サンドが一番好き~。お肉のもいいけど、卵サンドサイコー!」

「はいはい、じゃあ私のもあげるから。ほら、口の横ついてる」

 言いながらルラに卵サンドをあげる。
 そして口の横についていた食べかすを手で取ってぱくっと口に入れる。


「あ~、いいなぁ。ルラとの間接キッス。しかも姉妹で何て見てるだけで尊いわぁ~」

「いや、間接キッスって何ですか? ただのお弁当をとっただけじゃないですか」

 私がそんな事しているとヤリスがうっとりとこっちを見ている。


「やはりリルさんだけでなくルラさんも欲しいですわ! ああ、この二人が私のモノになったら毎晩二人と一緒に寝て、左右両手に花でその後は…… ぐふっ、ぐふふフフフですわぁ~」


 私が口に突っこんで食べさせたサンドウィッチを食べ終わったようでアニシス様もうっとりとした目でこちらを見ている。
 ……もう食べ終わったか。


「とにかく、ご飯は私も手伝いますからちゃんと食べてくださいね。じゃないと体を壊しますよ? それでアニシス様あとどれ位で終わりそうなんですか?」

「そうですわね、部材はそろっていますし、ヤリスが魔力供給してくれているのでこの調子でいけば明後日には完成しそうですわ」

「相変わらずアニシス様の魔改造は早いわね……」

 進捗状況がどうなのか聞いてみれば明後日には出来上がるとか。
 ヤリスじゃないけど、骨組みまでばらばらにしてそこから組み直すなんて実際にはゼロスタートのような物だと聞いた。
 なんか最初に見た時より骨組みも一回り大きくなったような感じさえする。


「さて、それでは続きを始めましょうですわ」


 アニシス様はそう言ってまた「鋼鉄の鎧騎士」の方へと向かうのだった。


 * * * * *


 ヤリスが魔力供給をすると言う事で私たちもここにとどまっている。
 ルラもたまに手伝いに駆り出されていくけど、ご飯を作っている間になんかまた進み具合が凄い事になっている。


「それでは駆動用の魔晶石を取り付けますわよ。ルラさんはここを押さえて置いてくださいですわ」

「うん、分かった。あたしは持ち上げるのも『最強』!」


 本来はクレーンか何かで腕とか足を持ち上げるらしいけど、ルラがいると重いそれらもひょいっと持ち上げられる。
 たまにヤリスも覚醒状態で手伝っているのであれよあれよという間に組み上がって行く「鋼鉄の鎧騎士」。
 同じくここで整備しているスタッフの皆さんなんか唖然としている。

 そしてとうとう頭の部分も組み立てられるのだけど、何故だろうやたらと頭だけは生物的だ。


「何で『鋼鉄の鎧騎士』って頭だけあんなに生物的なんでしょうね?」

「おや、リルは知らないのかい? 『鋼鉄の鎧騎士』はもともと魔物なんかの素材も使っていたんだよ?」

「はぁ? 魔物??」

「そっか、エルフは魔道ついては精霊魔法以外あまり興味を持たないもんね。あれこそが人類が作り上げた究極の魔道兵器の一つよ」

 不思議に思ってそんな事を言ったら隣にいたミリンディアさんやハーミリアさんが教えてくれた。
 ゴーレムとかとは違うってのは何となく知っていたけど、確かに魔道の塊である「鋼鉄の鎧騎士」は複雑かつ強力な魔道具の塊だ。
 しかも素材に魔物とかも使っているとは正直驚く。

「腐らないんですかね、魔物とかの部材って?」

「防腐処理もしているし、魔力が流れ込んでいると腐らないらしいな」

 私は頭部に取り付けられてゆく三つの目を見ながら疑問のを口にするとまたまたミリンディアさんが教えてくれる。
 防腐処理とかされていて魔力が流れていると腐らないんだ。
 と、その三つの瞳のうちの一つがこちらを見る。


 ぎろっ 


「うっ、なんか分かっていても生物的な目がこちらを見ると身構えちゃいますね」

「まあな、生物は目でモノを言うと言うからな。目の動きとかでそいつの動きや思考が読み取れる場合もあるしな」

 ミリンディアさんはそんな事を言いながら仮眠できるアニシス様用の寝袋を開いて行く。
 しかし何故その寝袋がニ、三人は入れそうな大きなやつなのだろう?
 ミリンディアさんやサ・コーンさん、ウ・コーンさんの寝袋はちゃんと準備しているというのに?


「あの、なんでアニシス様の寝袋だけそんなに大きいのですか?」

「ん? そりゃぁ何時でもお呼びがかかっても大丈夫なようにだよ。この中に入ればいい夢見れるんだよ?」

 いやいやいや。
 ここ他の人もいるんだからそう言うの駄目でしょうに!

 と、ルラが戻って来た。
 そしてその大きな寝袋を見て開口一番に言う。

「うわぁ~おっきな寝袋。これならお姉ちゃんと共一緒に寝れるね?」

「ルラ、誤解を招くから外ではしっかりと別々に寝るわよ」

「え~なんで?」

 不思議がるルラにそう断言して私は食事の準備を進めるのだった。


 ◇ ◇ ◇


「完成しましたわ! これでアイザック様の『鋼鉄の鎧騎士』は連合軍最強の『鋼鉄の鎧騎士』になりましたわ!!」

 二日後、アニシス様はアイザックさんの「鋼鉄の鎧騎士」改修型を完成させていた。

 前の細身の感じから少しがっちりした感じになっていた。
 素体が前よりがっちりしたので外装の一部も変えていて、正直前の「鋼鉄の鎧騎士」と同じなのって頭周りとか膝下あたりくらいかな?
 全体的に細マッチョになった感じなので前のひょろっとした感じとは大幅に印象も違う。


「アニシス様、お疲れ様です。おおぉ、これがあのおんぼろだった私の『鋼鉄の鎧騎士』とは! 見違えましたぞ!!」

「お疲れ様、アニシス。どうやらうまく行った様ね?」

「ほほぉ、これが我が軍の切り札になる『鋼鉄の鎧騎士』ですかな?」

 アニシス様が完成した「鋼鉄の鎧騎士」の前でニコニコとしていたらアイザックさんやアイシス様、ロディマス将軍もやって来た。
 そして「鋼鉄の鎧騎士」改修型を見上げる。


「流石アニシス、あの骨とう品をここまで改修するとは」

「ずいぶんと勇ましくなりましたが、どう変わったのですかな?」

 アイシス様とっロディマス将軍は見上げたままアニシス様に聞く。


「そうですわね、端的に言うと全てですわ。基礎フレームはミスリル合金でしたのでエルリウムΓを要所要所使いながらもバンドを施しミスリル合金自体も補強しましたわ。関節は全て入れ替え、それに伴い駆動系の魔晶石も総入れ替えですわ。これにより従来の物とは比べ物にならない程のスピードとパワーが発揮できますわ。そしてその動力源となる物には我が国の連結型魔晶石核を使い従来とは比較にならない出力を発揮できますわ!」


 アニシス様は饒舌に説明を始める。


「さらに各種外部感知にはグリフォンの目を使ったり、補助思考回路を強化する為にスフィンクスの脳みそを使ったりと抜かりはありませんわ。魔力伝達回路も~」


 更に更に饒舌になりもう何を言っているのか理解できない事まで言い始めた。

 駄目だ。
 このままじゃちんぷんかんぷんな話を永遠とされるパターンだ!

 魔術師は自信の知識をこうやって繰り広げる事が好きな人が多い。
 それはそれで重要な事だけど、私が付いて行けないんじゃ困る。


「あ、アニシス様。とりあえずここは完成を祝って乾杯をしませんか!?」

 私はポーチから良く冷えた蜂蜜酒のミードを取り出す。
 これはエルフの村での特産品で、シャルさんの手作りしたものだ。

 なにか良い事があったら飲みなさいと餞別で手わされていたものだった。


「あら、これはエルフの村の特産品、ミードではないですの? 私これ大好きですのよ!」

 よっし、乗って来た。
 私はすぐさま小さなグラスを沢山引っ張り出し皆さんにそれを注いで配る。


「そ、それじゃ改修型完成を祝って、カンパーイ!」

「「「「「カンパーイ」」」」」」




 私たちは完成した「鋼鉄の鎧騎士」改修型の前で乾杯をするのだった。

  
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