上 下
308 / 437
第十三章:魔法学園の日々

13-10晩餐会

しおりを挟む

「ジュメルがあたしたちの力を狙っているって、なんでですか?」


 ファイナス長老の言葉に私は思わずそう聞いていた。
 イージム大陸で関わったジュメルの連中は確かにエルフの魂とかは「賢者の石」を作るのに良い材料になるとか言っていたけど、私たちのスキル自体に目をつけていたとは。

「渡りのエルフや女神信教からの連絡を総合すると、リルとルラのそのスキルは異常です。話では黒龍からもその力は女神の力に劣らない、『あのお方』の力だと言われたそうですね?」

 そう言われ先日の大魔導士杯を思い出す。
 あの時暴走した精霊たちを押さえる為にチートスキル「消し去る」を使った。
 そしてルラを通してあの駄女神がやって来た。
 その時に言われたのが私の力がこの世界を滅ぼせるとか……
 
 私はファイナス長老のその問に頷きながら聞く。


「ジュメルって一体何を企んでるんですか?」


 ファイナス長老に向き直って改めて連中の意図を聞く。
 するとファイナス長老は軽くため息を吐いてから言い出す。


「結論から言うとこの世界の破滅ですね。その時代時代で多少はその意図は変わっていますが、根底にあるのはこの世界の破滅です」


 いや、破滅って。
 それに何の得があるというのだろうか?
 私が納得いかないような顔をしているとファイナス長老はゆっくりと語りだす。

「秘密結社ジュメル。歴史は古く魔法王国の時代ににさかのぼります。もともとは古い女神、ジュリ様を崇拝する者たちの一部がジュリ様の教えを歪曲し、解釈したのが発端でした。そして魔法王国の崩壊後時の有力者たちをも取り込んでいきその組織は根強く歴史の裏にはびこりました。約千年前にその力はピークに達し、異界の神をも呼び出しこの世界を破壊しつくそうとしました。それを止めたのが現在の女神、エルハイミさんなのです」

 ファイナス長老のその言葉に私は大いに驚いた。

 エルハイミさんってすごい事やっていたんだ!

 だってどう見てもほんわかした感じで女神っぽく無いし、何処か抜けているような感じさえする。
 大人バージョンのエルハイミさんが女神神殿に祀られていたけど、話によると何時もは私たちと同じくらいの年齢の姿で人々の前に出る時だけあの大人バージョンの姿になっていたとか。


「ジュメルってそんなに古くからいたんですか…… でも私はジュメルなんかに協力なんてしませんよ?」

「ジュメルって悪の組織でしょ? あたしがやっつける!」


 私やルラは元より世界の破滅何て望んでいないし、ジュメルには思う所がある。
 ジッダさんの仇は取ったけど、やはりジュメルは嫌いだし許せない。
 良い人だと思っていたイリカだってジュメルだったし……

「しかし二人の力に目をつけているのは事実です。あなたたちにこの学園に来てユカに修行をしてもらう意味を忘れないでください。あなたたちのその力は下手をすると女神の力ですら超えるかもしれないのですから」

 ファイナス長老はそう言て一旦静かに目を閉じる。
 そしてユカ父さんとマーヤ母さんを見る。

「もっとも、ユカの所で修行をしていれば大丈夫だと思っていますからね。何せユカはあのエルハイミさんの師匠なのですから」


「ばい”っ!?」

    
 私は思わずユカ父さんを見てしまった。
 ユカ父さんがエルハイミさんの師匠!?

「懐かしいですね、彼女はあの頃はまだ未熟な少女でした」

 ユカ父さんはそう言いながら湯呑のお茶をすする。
 思わずマーヤ母さんも見るけど、にっこりと頷いて言う。

「そうねぇ、その頃私はエルフの村に引きこもっていたけどすべてはエルハイミさんのお陰だったのかもしれないわね。彼女はエルフの村の恩人でもあるしね」

「え”っ!?」

 そ、そう言えば前にエルハイミさんもシェルさんもエルフの村を救った英雄であると聞いた事があったっけ。
 すっかり忘れてたけど、ユカ父さんもマーヤ母さんもみんなエルハイミさんとは深い付き合いだったんだ……


「とにかく、今は新たに動き出したジュメルに対してガレント王国、連合軍と協力をしなければなりません。早急にスィーフの問題も解決しなければなりませんしね」

 ファイナス長老はそう言ってお茶をすするのだった。


 * * * * *


「ふぅ~ん、マーヤがお料理上手なのは知ってたけどリルもなかなかやるのね?」

「あの、ソルミナ教授つまみ食いはやめてください。も少しで出来あがりますから」


 話しが終わって今は家にみんなを呼んで晩御飯を準備していた。
 台所でマーヤ母さんと一緒に お料理を準備しているとソルミナ教授が覗きに来て早速つまみ食いをしている。

「はいはい、分かってますよ。味見よ、味見。それよりマーヤ、あれ少し分けてもらえない?」

「あら? ソルミナには不要なモノだって思っていたけどどうしたの?」

「そりゃぁ、今晩こそ兄さんを襲いに行くから元気にしておかなきゃね。 兄さんの食事ってどれ? 早速仕込むから」

 こらこらこら。
 一体何を仕込むつもりなの?

「うーんそうねぇ。最近ユカもリルとルラの事ばかりで相手してもらえてないから、私もユカの食事に混ぜようかな?」

「マ、マーヤ母さん一体何をする気なんですか!?」

 思わずマーヤ母さんに聞くとにま~っと笑って奥から小さな小瓶を持ってくる。


「まだリルたちには早いけど、教えておいてあげる。これはエルフの秘薬でね、意中の人に飲ませるとそれはそれは元気になって翌朝まで眠らせてもらえない位になるモノなのよ!」

「なっ///////」


 あの、それって媚薬……
 淡白なエルフ族にそんな秘薬が有っただなんて!!

「本当は子供を作る時期に相手がその気になりやすいように使うのだけど、通常時に使ってもばっちりなのよね~。でもソルミナ本気なの?」

「勿論よ! 今晩こそ兄さんに女にしてもらうんだから! 待っててね兄さん、今晩こそは!」

 ぐっとこぶしを握っているソルミナ教授。
 いいのかこれで?



 マーヤ母さんとソルミナ教授は嬉々としてそのエルフの秘薬を意中の人の食事に混ぜるのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李
恋愛
『やぁ‥君の人生はどうだった?』86歳で俺は死んだ。幸せな人生だと思っていた。 死んだ世界に三途の川はなく、俺の前に現れたのは金髪野郎だった。もちろん幸せだった!悔いはない!けれど、金髪野郎は俺に言った。『お前は何も覚えていない。よかったな?幸せだ。』 何言ってんだ?覚えてない?何のこと?だから幸せだったとでも?死ぬ前の俺の人生には一体何が起こってた!?俺は誰かも分からない人物の願いによってその人生を幸せに全うしたと? 一体誰が?『まさに幸せな男よ、拍手してやろう』そう言って薄ら笑いを浮かべてマジで拍手してくるこの金髪野郎は一体なんなんだ!?そして、奴は言う。ある人物の名前を。その名を聞いた途端に 俺の目から流れ落ちる涙。分からないのに悲しみだけが込み上げる。俺の幸せを願った人は誰!? 分からないまま、目覚めると銀髪に暁色の瞳をもった人間に転生していた!けれど、金髪野郎の記憶はある!なのに、聞いた名前を思い出せない!!俺は第二の人生はテオドールという名の赤ん坊だった。此処は帝国アレキサンドライト。母親しか見当たらなかったが、どうやら俺は皇太子の子供らしい。城下街で決して裕福ではないが綺麗な母を持ち、まさに人知れず産まれた王子と生まれ変わっていた。まさか小説のテンプレ?身分差によって生まれた隠された王子?おいおい、俺はそんなのどうでもいい!一体誰を忘れてるんだ?そして7歳になった誕生日になった夜。夢でついに記憶の欠片が・・・。 『そんな都合が言い訳ないだろう?』 またこいつかよ!!お前誰だよ!俺は前世の記憶を取り戻したいんだよ!

初恋に敗れた花魁、遊廓一の遊び人の深愛に溺れる

湊未来
恋愛
ここは、吉原遊郭。男に一夜の夢を売るところ。今宵も、一人の花魁が、仲見世通りを練り歩く。 その名を『雛菊』と言う。 遊女でありながら、客と『情』を交わすことなく高級遊女『花魁』にまでのぼりつめた稀な女に、今宵も見物人は沸く。しかし、そんな歓声とは裏腹に雛菊の心は沈んでいた。 『明日、あちきは身請けされる』 情を売らない花魁『雛菊』×吉原一の遊び人『宗介』 華やかな吉原遊郭で繰り広げられる和風シンデレラストーリー。果たして、雛菊は情を売らずに、宗介の魔の手から逃れられるのか? 絢爛豪華な廓ものがたり、始まりでありんす R18には※をつけます。 一部、流血シーンがあります。苦手な方はご自衛ください。 時代考証や廓言葉等、曖昧な点も多々あるかと思います。耐えられない方は、そっとブラウザバックを。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...