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第十三章:魔法学園の日々

13-4ルラのお悩み相談

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 ソルミナ教授のエルフの胸を大きくすると言う研究は、実例のあるマーヤさんからの情報で頓挫していた。


「やっぱり私たちエルフは大きな胸と言うのは無理なんでしょうか……」

「兄さん以外に、エルフ以外にお相手を探すだなんて考えられないわよ……」

 研究室で私とソルミナ教授は机に二人して突っ伏していて唸っている。
 現在分かった事は胸の大きなエルフはお相手がみんなエルフ族以外だってことだった。
 唯一そこまで大きくないけどエルフの中では大きい方のソルガさんの奥さん、マニーさんと言う実例はあるけど、外の世界であるこっちでは小さい部類だ。

 多分ギリギリ揺れるかどうかって感じかも。
 「B」サイズあるか無いか、多分「A」に限りなく近いはず……


「ねえリル、だったら私と一緒になれば胸を大きくできるわよ?」

「ヤリス、それは聞き捨てなりませんわ。リルさん、私のお部屋に来れば毎晩しっかりと協力させていただきますわ、もう私が忘れられない位にですわ!」

 はぁはぁとにじり寄る二人に私は思い切りお断りをする。
 もう何で私の周りにはこんなのばかりなのよ?

 ああ、トランさんみたいなステキな男性っていないのかなぁ……


「お姉ちゃん、おっぱいを大きくする方法って他に無いの?」

「ルラ?」

 私がヤリスとアニシス様を撃退しているとルラがいきなりそんな事を聞いて来た。
 一瞬何を言っているのか理解出来なかったけど、間違いなくルラが言った言葉だ。

「ルラ、あんたもしかして胸大きくしたいの?」

「うん、あたしもおっぱい大きくしたい…… だってそうすれば……」

 もじもじとそう言うルラ。
 ちょっと待て。
 今まで胸なんか邪魔だとか言ってたルラが胸を大きくしたいだって?

 一体どう言う風の吹き回しよ!?


「ル、ルラ、なんで胸を大きくしたいのよ?」

「だって、胸が大きいと(強さで)一番に成れるんだよね?」

「い、一番って、いや、確かに誰にも負けないわよ……」

「だからあたしも胸大きくしたい! 他の誰にも負けたくないから!」

 
 ががぁーんッ!!


 ま、まさかルラにも誰か好きな人が出来た?
 いや、あのルラが?
 確かに胸の大きな女の子なら告白とかした時にもの凄く有利だ。
 それを武器に意中の相手にアピールする女性だった沢山いる。

「ル、ルラ…… 本気なの?」

「あ、あたしだって本気だよ! 誰にも負けたくない、だから(強さで)一番になりたい!」


「そんな、ルラが(好きな人の為に)一番になりたいだなんて…… 分かった、お姉ちゃんも絶対に協力する! ルラのその(男性に対する)思い、応援するね!!」


 ああ、まさかこんな日が来るだなんて。

 確かにこっちに転生して十七年。
 もともとは小学生一年生で男の子だったルラも十七年間も女の子して、そして私たちに囲まれていれば考えだって女の子になる。
 こっちの世界に転生して何時も一緒にいて、私の妹であるルラがとうとう異性に興味を示した。
 学園のこの環境ってのもあるだろうけど、ルラが気になる男の子がいるだなんて今まで全く気付かなかたった。


「ヤリスにおっぱい揉まれると大きくなるって聞いたから揉ませたけど、ヤリスだけ楽しそうで全然大きくならないし、アニシス様に聞いたら『全て私に任せて下さるとお約束いただけるなら』とか言って部屋に来いって言うし、そんなので大きくなるの?」

「いやちょっと待て、ヤリスとアニシス様に先に相談したの?」

「うん、ソルミナ教授にも自分で胸をマッサージすれば効果あるかもしれないよって言われたけど、くすぐったいだけだしなんか変な気分になって来るだけだし…… こんなので胸大きくなるの?」

 私はギギギぎぃっと後ろにいるヤリスとアニシス様、ソルミナ教授を見る。 
 それを見ていたヤリスやアニシス様、ソルミナ教授は視線を逸らす。



「もうっ! ルラに変な事教えないでくださいっ!!」


  
 私の叫びがこだましたのだった。


 * * * * *


「ほんとう? ルラが誰かに恋してるって!?」

「ええ、多分間違いないでしょう。しかも相手はもてると思います。だってルラは彼の一番になりたいって言ってましたから!」


 家に戻ってマーヤ母さんに今日の出来事を話する。
 一緒にお台所で晩御飯の準備をしながらそんな話をしていると瞳を輝かせて私にもっと詳しくと聞いてくる。
 勿論私もそういう話は大好きなので自分なりの分析を踏まえてマーヤ母さんに言う。


「ルラは正義感が強くて、強いモノに憧れる訳ですから、きっとそう言った人だと思います」

「学園にそんな子いるのかしら?」

「分かりませんが、ルラってたまに一人でふらふらと他の教室に行ったり、アニシス様の所にも行っているからもしかしたら上級生かもしれませんね!」

 ああ、憧れの先輩ってのいいかも!
 特に部活とかのキャプテンとかは競争率高いんだよね。
 
「ふんふん、それで?」

「後はこのあいだの大魔導士杯で気になる人が出来たとか、あとはあとは~」

 台所に立ちながらそんな話で盛り上がってきたら後ろから声がかかって来た。


「お姉ちゃん、マーヤ母さんお腹すいたよぉ~。晩御飯まだぁ?」

「あらルラ、いい所に来たわね。ねぇねぇ、お母さんにだけ内緒で教えて、一番になりたいって誰の為?」

 マーヤ母さんはにっこりと笑いながらルラにそう聞く。
 するとルラはぱちくりと瞳をしてから上目遣いに唇に指を着けながら言い出す。

「うーん、誰の為って、あたしが一番(強く)になれば(大好きなお姉ちゃんと)ずっと一緒にいられるかなぁって。だから頑張って胸大きくしてあたしが一番になりたいの!」

「うんうん、それでそれでその人って誰?」

「え? それは……」

 ルラはそう言いながら私の方を見る。
 なんで私を見るの?
 でもルラのその表情からは真剣さが伝わって来る。

 まさか……


「ルラ、それはダメだよ! いくらヤリスやアニシス様と仲がいいからって女の子同士はダメっ!」

「あら、ルラはヤリスやアニシスが良いの?」

「え? 違うよ、あたしは……」

 慌ててぶんぶんと手を振って否定するルラ。

 良かった、ルラが間違った道を進まなくて済みそうだ。
 でもそうすると一体誰を……



「只今戻りました。おや? みんなしてどうしたのですか??」

「ユカ父さん、お帰りぃ~」

 玄関から声がしてそのままこちらにユカ父さんがやって来た。
 
「ぐっ、ル、ルラ、ユカ母さんでも良いのですよ?」

 ユカ父さんが何時も通りルラとそんな会話をしている横で私とマーヤ母さんは内緒でコソコソいう。


「ユカが来ちゃったからこの話はまた後でね」

「はい、ユカ父さんってこう言った話を聞くと刀振り回しますもんね」 



 私とマーヤ母さんはこっそり頷きあってまた晩御飯の準備を進めるのだった。

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