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第十三章:魔法学園の日々
13-3絶望
しおりを挟むマーヤさんをお母さんと呼んだらもの凄く喜ばれた。
「それでですね、ユカ父さん」
「ぐっ、リ、リル、ユカ母さんでも良いのですよ……」
「え~、でもユカ父さんはユカ父さんだよぉ~」
「うふふふふ、そうだよね~ユカはお父さんだものね~♪」
晩御飯をみんなで囲みながら私が学園長の事を「ユカ父さん」と呼び出したら驚かれると同時に喜んで、ちょっと嫉妬もした気配がする。
少し目に魔力を流してユカ父さんの感情の精霊を見ると複数の精霊がぐるぐる回っていた。
うん、葛藤中なんだろう。
しかしやっと私からも「ユカ父さん」と呼ばれること自体は嫌がっていないようで、ルラと同じく一応は「ユカ母さん」でもいいとは言う。
なんかお決まりの文句になって来たよね?
「で、ソルミナ教授の研究なんですけど、マーヤ母さんにも聞いたらちょっと難しいかなって。私まだ十七歳だし恋愛対象なんてまだまだ」
「リル、もしかして意中の人がいるのですか? うちの娘に手を出す不埒者がいるのですか!?」
ユカ父さんはそう言いながら思わず刀に手を付ける。
「うちの可愛い娘に手を出す不埒者はこの私が叩き切ってやります!」
「まぁまぁ、ユカもそう興奮しない。リルに良い人がいたらちゃんと私に相談に来るから~」
ユカ父さんが刀に手をかけているとその手にそっと自分の手を重ねて押さえさせる。
そしてにこやかに言いながら私を見る。
「お母さんに何でも相談してね、男の落し方も教えてあげるから!」
「いや、そこは違うんじゃないですか……」
この後ユカ父さんがまた発狂したのは言うまでもなかったのだった。
* * * * *
「な、何ですって? リル、もう一度よく聞かせて!!」
放課後ソルミナ教授の研究室に行って昨日マーヤさんと話した内容を伝えた。
それを聞いたソルミナ教授は私の両肩に手を付け、鼻と鼻がくっつくほど近づいてそう言う。
「近い近い! お、落ち着いてくださいよソルミナ教授!」
間近にいるソルミナ教授を押し退けて私はそう言う。
「あ~、教授ずるいですよ一人で。私だってリルとキスしたいのに~」
「いや、違うから、今のキスしよとしたんじゃないから!!」
横にいるヤリスが口をとがらせてそう文句を言っている。
それを楽しそうにアニシス様も見ている。
「いいですわぁ~、やっぱりエルフ族は見ていて美しいので映えますわぁ~。エルフの女性同士での口づけもたまりませんわねぇ~」
いや、キスじゃないって言ってるでしょうに!
「しかし、リルの話が本当ならエルフの胸を大きくする要因ってエルフ族以外の男性と子作りをする必要があるってこと? はっ! そう言えばメル長老やロメ、ナミ、カナル長老たち最古の長老たちも立派なモノをお持ちだけど、お相手があの魔法王ガーベルだったはず。マーヤもアレッタも旦那は人族や異界の者だったはず……」
ソルミナ教授はそこまで言って腕を組んで悩み始める。
確かに、マーヤ母さんやアレッタさんの相手ってエルフじゃなかった。
村にいるエルフの女性たちはうちのお母さん含め、やっと膨らんでいるくらいの人がほとんど。
そするとエルフってどんなに頑張っても何も無ければあれが限界?
「ダークエルフは女性らしい体つきが多いと言う。あいつらはアマゾネス化していて今は人口を増やす為に男狩りをしているって聞くし、族長なんかその為に男を何人も囲っているって聞くし……」
いや、ダークエルフってそんなの?
確かにエルフの村にいた時には特に女性陣からは嫌われていたけど、そんなんだったの??
「あのぉ~、ダークエルフって元々は私たちエルフ族だったって聞いたんですけど、なんでダークエルフなんてのが出来たんですか?」
そう言えばダークエルフについて詳しく聞いた事が無かった。
村でその話をすると何時もみんな不機嫌になるからほとんどタブーに近かった。
「それはね、『女神戦争』って知ってるわよね?」
「はぁ、神話ですよね?」
「神話じゃないわよ? 実際に女神戦争にはメル様たち最古の長老は参加してたし」
はぁ?
あれって本当だったの!?
じゃあ、メル様たちって何万歳!?
「とにかくその『女神戦争』で暗黒の女神様、ディメルモ様側に着いたエルフがダークエルフになったの。そして闇の森で種族を増やす為にエルフ以外の血も入れていったから肉体的にもダークエルフの女性はあんなにうらやましい姿になったのよ!!」
やっぱうらやましいんですか。
ぐぎぎぎぎぎぎぃっとこぶしを握って悔しがるソルミナ教授。
もしかしてエルフ族の女性陣に毛嫌いされてる理由ってコレ?
「しかし、そうしますとリルさんやルラさんはずっとこのまま残念な胸のままですの?」
アニシス様、残念て言わないでぇっ!!
「これは由々しき問題ね。しかしマニー義姉さんはそこそこ大きいし…… 何が原因なのかしら?」
「ねえ、お姉ちゃんおっぱいって、そんなに大きい方がいいの?」
「ルラ、あんただってそのうち胸の大きさが気になるわよ。この世界では胸の大きな女の子が頂点に立つのだから!」
そう、おっぱいカーストでは私たちは最底辺。
ヤリスやアニシス様なんて身分的にも上なのにおっぱいカーストでも上位!
何故だ?
せめて生前くらい、揺れを感じられるくらいにはなってもらわないと!!
「だからと言って、兄さん以外の男なんて考えられないし……」
「そういえばソルミナ教授ってソルガさん以外好きになった事ってないんですか?」
「当り前じゃない! 私の身体は兄さんの為にずっと清らかなままよ!!」
え~と、それって何千歳にもなってまだ経験が無いと言う事?
そりゃぁ、一人の人を思い続けるってのは素晴らしいけど、ソルミナ教授って確かマーヤさんたちと同じくらいだから二千歳超えてるはず……
「行かず後家?」
「行かず後家言うな! いくら私だってお見合いの話の一つや二つあったわよ! 全部断っただけ!!」
「ほほぅ~、ソルミナ教授、その辺をもっと詳しく教えてください」
「ですわね、エルフの方のそう言ったお話は聞いた事がありませんもの」
なんかヤリスやアニシス様も興味を持ってにじり寄って来る。
まあ、分からなくはない。
女の子はこう言った恋バナとか恋愛話が大好きだもんね。
「おっぱいが大きいと世界の頂点に立てる……」
ん?
なんかルラがぶつぶつ言ってるけど、その時私はソルミナ教授のお見合い話に興味を持ってヤリスやアニシス様とソルミナ教授を取り囲むのだった。
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