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第十二章:留学

12-20頓挫

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「ううぅ~ん、変化ないわねぇ~」


 ソルミナ教授は唸りながら水晶の中に映し出された「命の木」を見ている。
 あれから約ひと月、イメージトレーニングと言っていろいろやって来たけど変化が見られない。
 おかしい、あれだけ色々とイメージトレーニングしていたのに。

 その間様子を見に来ていたヤリスとアニシス様は事有る毎に私たちにちょっかいを出して来ていた。

「リル、ここはやはり私の恋人になってもっと親密な仲になるしかないわよ。リルもルラと同じく私に色々と任せてくれればいいのよ!」

「ヤリスって本当におっぱい触るの好きだよねぇ~、くすぐったいんだけど~」

 なんか既に妹の胸がさんざんもてあそばれているような気がする。
 私は機械から離れてルラをグイっと引っ張ってヤリスから離す。


「ヤリス、これ以上ルラに変な事教えないでください。昨日お風呂に入ってこの子ったら人の胸触りまくるのだもの」


「なんですって? し、姉妹でそんなうらやまけしからんことをしてるの!?」

「あらあら~そこに私も混ぜて欲しいですわねぇ~」

 警告や注意が全く効かない二人。
 ため息を吐きながらルラも機械に座らせてルラの「命の木」を見てみる。
 ソルミナ教授は機械を起動させてそれを見ながら言う。

「う~ん、やっぱりほとんど変わらないわね。わずかに幹が太くなったようには感じるけど、どうなのかしら?」


 もみゅっ!


「あひゃひゃひゃひゃ、ソルミナ教授くすぐったいよぉ~」

「いや、これって……」


 もみゅもみゅ!


「駄目だよぉ、くすぐったいんだからぁ~、んっ、くすぐったいよぉ~」

 ソルミナ教授はルラの胸を揉みながら愕然としてこちらを見る。


「わ、わずかだけど大きくなっている……」

「な、何ですってぇっ!?」


 ソルミナ教授のその言葉に私は思わず声を上げる。
 そしてすぐにルラの胸を触り確認をする。


「そ、そんなっ! 確かに誤差範囲にも感じるけどわずかに大きくなっているぅ!?」


 それはほんのわずかだけど確かに膨らみが大きく感じる。
 もともとルラの方が大きいけど、更に大きく成っただとぉ!?

「もう、お姉ちゃんもいい加減にやめてよ。くすぐったいんだから。そんない触りたいならお風呂で触らせてあげるから~」

「い、いや、しかしなんで? ルラあんたイメージトレーニングって何やったのよ!?」

 ほとんど肉まんの事しか考えていなかったはずのルラの方に効果があるだなんて!
 もしかしてあんまんじゃ駄目で肉まんじゃないと効果が無いの?

「うーん、双子でもこうも差が出るとはね。このまま成長したらマーヤやアレッタのようになっちゃいそうね。うらやましい」

 ソルミナ教授はそう言いながらルラの「命の木」を確認する。
 そちらは私ほど瑞々しさは感じられないけど、幹自体がなんかつやつやしている。

「うーん、精神的以外にもやはり物理的刺激も必要なのかしら? ルラは最近しょっちゅうヤリスに胸を触られていたものね。しかしそれにしては一人でしているリルには何の変化も無いってのはおかしいわね?」


「ソ、ソルミナ教授ぅっ///////!!」


 いや余計な事は言わなくていいですから。
 お願いだからやめて。
 じゃないとまたヤリスとアニシス様が興奮するから!!


「しかしこうなるとまた抜本的に方法を考えないといけないわね? 一体何が作用するのかもう一度洗い直しよ!」

 ぐっとこぶしを握ってそう言うソルミナ教授。
 この人本当に大丈夫なのだろうか……

 私はルラの胸が大きくなった事にショックでうなだれるのだった。


 * * * * *


「うーん、どうしたもんかなぁ……」


 翌日教室に行くとヤリスが一枚の紙を見ながら唸っている。
 珍しい事もあるもんだ。
 どうしたのか聞いてみる。


「おはようヤリス。どうしたの難しい顔しちゃって?」

「おはよぉ~」

「ああ、リルとルラ。おはよう。実はねこれなのよ」


 そう言ってヤリスは手に持っていた紙を手渡して来る。  
 そこには大きく「魔術総合実演会」と書かれていた。

「なにこれ?」

「ああ、リルたちは知らないか。これって年に一度あるこの学園の催し物なのよ。通称『魔演会』。まあ学園祭なんだけど問題はそのメインイベントなのよね~」

 ヤリスはそう言ってソのチラシの下の方を指さす。
 そこには「大魔道士杯」と書かれていた。

「なんなのこれって?」

「お祭りなの?」

 私は首を傾げ、ルラは単にお祭りっぽいので嬉しそういしている。

「うん、魔演会自体は普通のお祭りと同じでマジックアイテムの即売や各クラスの出し物が有ったり、研究の発表があったりでいいんだけどね……」

 ヤリスはそう言ってそのチラシを持ち上げてため息をつく。

「今年こそはこの『大魔導士杯』に出席していい結果を残せってカムリグラシアお父様が言うのよね~。出るとなればきっとお姉さまたちの誰かが来るだろうし、無様な姿は見せられないよなぁ~。でも参加するには四人一組が決まりだからね、私には一緒に出てくれる人がいないからねぇ~」

 そう言いながらチラチラこちらを見る。
 もう、手伝ってくれと言わんばかりの視線で。

「でも四人必要なんでしょう? だったら難しいよね、ヤリスと私、ルラだけじゃ三人だもんね?」

 はい残念でした。
 ただでさえ学園長の朝練が忙しいのにそんな催し物に出てる暇ないもんね。
 それに早くソルミナ教授の方も胸を大きくする方法を見つけてもらわなきゃいけないし……


「話は聞かせてもらいましたわ! ここは同じく始祖母エルハイミ様の血を引く者同士、協力しますわ!!」


 にょきっ!!


 私とヤリスの間にいきなりアニシス様が生えた!?


「うひゃぁ、ア、アニシスス様??」

「アニシス様、何ですかいきなり?」


 驚く私とヤリスを置いてアニシス様はびっと人差し指を立てて言う。

「我がティナの国はガレント王国とは深い友好関係を持つ国ですわ、ここは両国の為に力を合わせて『大魔導士杯』を制しましょうですわ!!」

 え、えーとぉ……



 その日の午後、強制的にアニシス様とヤリスに連れられて参加登録をさせられるのだった。

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