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第十二章:留学

12-15植物の育て方

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 廊下でヤリスとアニシス様がにらみ合っているとソルミナ教授がやって来た。
 そして成り行きで私たちはソルミナ教授の研究室へと招かれたのだった。


「まあ適当にその辺にでもすわってね」

 ソルミナ教授はそう言って植木鉢をテーブルの上に置く。

「ウ・コーン、サ・コーンはこれを教授の所へ持って行ってくださいですわ」

「しかしアニシス様……」

「アニシス様の元を我らロイヤルガードが離れるわけには」

 一緒にいた男の上級生はそう言ってアニシス様に詰め寄るも彼女はにっこりと笑いながら言う。

「ここにはヤリスもいますわ。何か有ってもヤリスがきっと助けてくれますもの、私は大丈夫ですわ」

「しかし、アニシス様……」

 なんかもめてたけど、ヤリスに対しての信頼はあるんだ、アニシス様って。
 アニシス様は手に持つ資料を二人に手渡し「早く教授の所へ持って行きなさいですわ。終わればここへ戻ってくればいいのですから」と言って二人を追い出す。
 そしてソルミナ教授に向かって頭を下げてから言う。

「お騒がせ致しましたわ、ソルミナ教授」

「うーん、あなたちエルハイミさんの子孫も大変ね。しかも王族は特に」

 そう言うとヤリスもアニシス様も苦笑を浮かべる。

「それでもあのエルハイミ様は尊きお方、今もし始祖母様の復活を望まれています」

「そうですわね、また我が王国に始祖母様が復活なされると良いのですわ」

 二人ともそう言って軽くため息を吐く。


「あ、あのぉ~その始祖母様ってもしかしてティアナ姫の事ですか?」

 私が何となくソルミナ教授にそう聞いてみるとヤリスとアニシス様が目を向いて私に詰め寄って来る。


「何!? リルってティアナ様の転生者が何処にいるか知っているの!?」

「すみません、リルさんその辺のお話をもっと詳しくですわ!!」


 二人はやたらと興奮している。
 何なのよ、これっ!?


「あ~、リル余計な事を。その事は本来王族にも内緒だったのよ? 仕方ないなぁ、二人ともよく聞いて、ティアナさんはもう二度とあなたたち王族に転生はしません。それをしてしまうとまた王家での悲劇が始まってしまうからね。でもエルハイミさんたちはちゃんとあなたたちの事も気にしてシェルと一緒に様子を見に行ってるでしょう? 下手に女神の教えを歪曲して七百年前のオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』復活なんかされちゃったらまた世界は大騒ぎになってしまうわ」

 ソルミナ教授はそう言いながらお茶を入れる。
 そしてヤリスとアニシス様の目に出しながら言う。

「取りあえず落ち着きなさい。そしてこの事は他の人に言ってはダメよ?」

 そんなソルミナ教授に私は思わず聞いてしまった。

「ソルミナ教授って何処まで知ってるんですか……」

「あなたたちこそ。レミンの子供でイージム大陸から戻って来たって言うけど、これほどの若木が二人だけで戻って来られるなんてありえないわ。ファイナス長老からある程度は事情を聴いているけど、あなたたちって何者なの? あなたたちのスキルだって、エルフにはスキルがつく事なんてありえないのに……」

 ソルミナ教授はそう言って目をすぅっと細める。
 いつもはあっけらか~んとしているソルミナ教授だったけど、この時だけは殺意に近いものを感じた。

「わ、私たちは……」

「うーんと、転生者だよ~。他の世界から来た転生者だよ~」

 そんな緊張感が走る空気をルラが一気にぶち壊した。


「転生者? 異世界の??」

「うん!」


 あ~。
 どうしよう。
 もっとルラに言い聞かせるべきだったかな?
 この秘密はあまり他の人には話さない方がいいっぽいのに。


「リルとルラが転生者? まさかあなたたちがティアナ姫!?」

「違います! 私はいたってノーマルで、女の子が好きになる事はありません!!」

 ヤリスのその言葉に思い切り否定をしてしまった私。
 だって、ティアナ姫とエルハイミさんってそういう関係で、何度転生してもそうなんでしょ?
 
 そりゃぁ、友達とかなら分かるけど同性を恋愛対象に見るのなんて無理無理!


「え~、あたしはお姉ちゃんのこと好きなんだけどなぁ~」

「そこっ! 家族愛と恋愛を一緒にしない! ルラは私とずっと一緒だからそう感じてるだけだけど、恋愛ってのはもっと違うのよ!」

 そう、私が好きになったのはトランさんだけ。
 死んでしまったけど、それは本当に好きになった思い出だ。
 確かに思い出すと悲しいけど、トランさんの魂はエルフの村に持ち帰った。
 
 だから私は新たな一歩を歩みだせる。


「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ前世の記憶も残ってるんだ。それでエルフに転生かぁ。なるほど、だからスキル持ちなんだ」

 ソルミナ教授はそう言って茶を飲む。
 そしてみんなを見渡してから言う。

「この事は皆他言無用よ。まあここに居る人たちはルラ以外には口が堅いだろうから大丈夫だろうけど、これで方針は固まったわ。ルラは今の転生の事他の人に言っちゃだめよ? それとエルハイミさんたちの事もね」

「駄目なの? 分かった~もう言わないぃ~」

 ルラはそう言って自分で自分の口に手を当てる。
 それを見てソルミナ教授は表情を緩め、笑ってから先程の植木鉢を取り出す。

「教授、これは一体何なのですの?」

「これ? ただの植木鉢に種を植えたものよ」

 アニシス様は首を傾げそれを見る。
 ただの植木鉢?
 種を植えたモノ??

「あの、これで何をするんですか?」

「うん、この植物を育てるの」

 言っている意味が分からない。
 さっきまで結構と重要な話をしていたのに、いきなり植物を育てるだなんて……

「これと私たちの胸を大きくするのと何の関係があるんです?」

「まあ見てなさいよ。ちょっとした実験ね」



 ソルミナ教授はそう言って何時ものにっと笑って何時もの笑顔を見せるのだった。
 
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