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第十一章:南の大陸

11-30親孝行

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「さあ出来ました、カレーライスです!!」


 私はご家庭の定番、カレーライスを作ってテーブルに並べる。
 ルラが甘口がいいからと言うので、甘口風にしているけど初めての人にもそっちの方がいいかもしれない。


「へぇ、私も昔に外の世界に行っていたけどこんな料理は初めて見たわね。あ、これってお米でしょ?」

「あれ? シャルさんってお米を知っていたんですか??」

「うん、欲しければファイナス長老に言えば分けてもらえるのよね、でも料理方法が良く分からないから村ではみんな使いたがらないのよね」


「え”っ!?」


 いや、ちょと待って。
 エルフの村でもお米が手に入って、食べることが出来たですってぇ!?

 何それ聞いてないっ!
 じゃあ今までの私の苦労は!?


「ほう、リルが作ってくれた手料理か? お父さんうれしいぞ!!」

「あら、リルが何やらやっていると思ったらお料理してくれたの?」

「ほらほら、お母さんお父さん、早く早く! カレーだよカレー、あたしこれ大好きなの~」

 シャルさんの言葉に衝撃を受けていた私は暫し固まってしまっていた。
 そんな中ルラがお母さんとお父さんを引っ張って来てテーブルに着かせる。


「お姉ちゃん、早く食べようよ!」


「えっ、あ、ああ。それじゃぁ食べましょうか。どうぞ召し上がれ」

 それでもまずはお母さんとお父さん、そしてシャルさんに私が作った料理を食べてもらいたい。

「いただきまぁ~す! はむっ!」

 ルラは早速スプーンでカレーを口に運ぶ。
 それを見てお母さんもお父さんも、そしてシャルさんもカレーを食べ始める。

「はむっ! あら、これ美味しいじゃない?」

「本当ね、複雑な味だけどこのお米ってこう言う食べ方が出来るのね?」

「お父さんは感動だぞ、娘が手料理を作ってくれるなんてなっ!!」

 どうやらシャルさんもお母さんもお父さんも喜んでくれているみたいだ。
 まあ、カレーはご家庭の味みたいなもんだから、本格的なものでもない限り食べやすいはず。

 私も気を取り直してカレーを口に運ぶ。

「はむっ! んっ、ちゃんとご家庭のカレーになってる」

 ちょっと大きめにカットした野菜は煮崩れしてもしっかりと残っているので素材の味もちゃんと楽しめる。
 お肉も先に焼いているから肉汁もしっかりと残っていておいしい。
 そしてスパイスも基本である物を入れたのでカレーを知っている私たちには可もなく不可もなく正しく普通にカレーであった。


「リル凄いわね、私も外の世界では色々食べたけどこんなのは初めてよ?」

「えへへへ、シャルさんも食べた事無かったんですか、カレーライス?」

 シャルさんはスプーンでカレーをすくいながらまじまじとそれを見て言う。

「そうね、精霊都市ユグリアではファイナス長老お抱えの調理師でイチロウ・ホンダって異世界から召喚された人がいるけど、確か『ニホンリョウリ』とか言うモノにはこれは無かったわね?」

「え”っ!? あの学園長の他にも異世界召喚者っているんですか!? しかも日本料理って、和食ですか!?」

 いやいやいや、何かエルフの村に戻ってから驚きの連続なんですけど!!
 
 灯台下暗し?
 いや、そんなレベルじゃないかった。
 すぐ近くに和食を作れる人がいる?
 しかも異世界召喚者?
 何それずるい!!


「お姉ちゃんおかわり~」

「ルラ、聞いた!? ユグリアに異世界召喚者で和食作れる人がいるって!!」

 スプーンを口に咥えたままお皿を差し出すルラに私は興奮気味にそう言う。
 だって、和食だなんてもしかしてお醤油とか、お味噌とかそう言ったモノがあるかもしれない!!

「ん~、あたし和食ってあんまり好きじゃ無いから別に~」

「いやいやいや、もしお醤油とかお味噌とか持っていたらどうするのよ!? ご飯にお味噌汁とかお醤油かけたお豆腐とかも食べられるのよ!!」

 私がそう言うとルラはしばし考えてから「お~」とか言っている。
 こっちの世界に転生して食文化の違いに翻弄されて、どれだけ白米やお味噌汁なんかに恋い焦がれた事か!!


「リル、あなたが作ってくれたこれは異世界の料理なの?」

「え? あ、うん、そうだよお母さん」

 ちょっと興奮気味にルラにおかわりのカレーをよそっているとお母さんがそう聞いてくる。
 私はお母さんに答えると、お母さんは少し寂しそうに言う。

「そっか、これだけ美味しい料理を作れるのならボヘーミャに行っても大丈夫ね? エルフとして見たらあなたたちはまだまだ若木、ちゃんとできるか心配だったけどこれなら大丈夫ね……」

「お母さん?」

 お母さんは私の頭に上に手を載せ優しく撫でる。

「リルはしっかり者だからちゃんとルラの面倒を見てあげてね。学園にはソルミナやマーヤがいるから何か有ったら彼女たちを頼るのよ? 二人は私の古くからの友人だからきっとあなたたちの力になってくれるわ」

 そう言うお母さんの目元には涙が浮かんでた。


「お母さん……」


 なんかちょっと申し訳ない。
 私たちが転生者でチートスキルなんか持っているから親元を離れてスキルをうまく使えるようにならなければならない。
 本来私たちの年齢のエルフは村では幼子あつかい。
 とてもではないが、自分一人で何かを出来る子の方が少ない。
 私たちよりちょっと年が上のエルフだって私から見れば外観は私たちと同じような感じだけど、百歳でもまだまだわがまま言っているおこちゃまな感じだった。


「大丈夫だよお母さん、ちゃんとスキルを扱えるようになって帰って来るから」

「うん、そうね。リルとルラは私たちの自慢の娘だもんね」


 涙をぬぐってお母さんはそう言う。
 なので私も務めて元気に言う。

「ほら、まだまだたくさんカレーもあるからおかわりしてね!」



 そう言う私にみんなも笑顔でおかわりのお皿を差し出してくれるのだった。   

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