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第十一章:南の大陸
11-9田ウナギたち
しおりを挟む巨大な大蛇のような田ウナギはあぜ道の下に潜んでいた。
それがあちらこちらから姿を現す。
「こんな所に潜んでいたなんて!」
「お姉ちゃん、あれ見て!!」
ルラに抱きかかえられその場を飛び退いた私はそれを見る。
田んぼの端っこにある祠のようなモノが崩れてそこからひときわ大きな田ウナギが出てきた。
ばしゃっ
「うわっ膝まで浸かっちゃった」
「くっ、これじゃ身動きが出来ない!」
ルラと一緒に着地したそこは田んぼの中だった。
流石にあぜ道は崩れそこに着地する事は出来なかった。
なので泥んこの中に着地したはいいけど膝くらいまでめり込んでしまって動きずらいのなんの。
こんな所へ田ウナギの攻撃があったらひとたまりもない。
『リル、ルラっ!!』
ばしゃばしゃっ!
しかしそこへパキムさんが駆け寄って私とルラを抱きかかえてすぐに田ウナギたちから距離を取る。
ばっ!
「助かりました、パキムさん!」
「うわぁ~、泥だらけ~」
流石にリザードマン。
動きずらい泥んこの中でも通常に動き回れる。
私やルラを担いでもその動きは全く鈍らない。
『こんな事は初めてだ。いつも田ウナギどもは田んぼに現れてもあちらこちらを自由に動き回っているだけだったのに、今回はまるで何かに引き寄せられるかのようにここへ集まってきている』
「え? そうなんですか??」
パキムさんは群がる田ウナギを避けながら祠みたいなところからどんどん遠ざかる。
抱えられてその様子を注意深く見ると確かに田ウナギたちはある一点に向かっている。
「うわぁ、流石にこんなにぬるぬるぐちゃんぐちゃんじゃあたしもぬちょぬちょのぐっちゃんぐっちゃんにされちゃうよぉ~」
「いや、だからルラ言い方ぁっ! でも確かにこんなに田ウナギがいたらいくらルラでもぬちょぬちょにされてしまう。私の『消し去る』でも間に合わない!」
『いったん引くぞ、リル、ルラ!!』
そう言ってパキムさんはこの場を後にするのだった。
* * *
私たち冒険者ギルドに戻っていた。
既に外は暗くなっているがどうやら田んぼにはさらに田ウナギたちが集まってきている様だった。
「こんな事は初めてです。一体何が起こっているのやら……」
ギルドマスターはそう言って私たちの前で頭を抱えている。
『ギルドマスターよ、これではいくらリルやルラがいても間に合わない。闇夜で奴らと対峙するのは危険だ。今のうちに冒険者たちを集めて明日の朝明るくなったら総攻撃をするしかないだろう』
パキムさんはそう言ってシュルシュルと舌を出し入れしている。
もしかして怒っているのかな?
「ちょっと待ってください。いくら冒険者の人たちが集まってもあの数です、ただ単に総攻撃をかけても犠牲が増えるだけですよ」
パキムさんには悪いけど私はそう言って総攻撃をするのに待ったをかける。
すると不思議そうにパキムさんはこちらを見て首をかしげる。
『リルよ、しかしこのままでは被害が大きく成るばかりだぞ? ここは皆の力を合わせて田ウナギどもを倒さなければならないだろう?』
「そりゃ、そうですけどその前に聞きたい事があります。あの田んぼの中にあった祠って何なんですか? どう見てもあそこから現れた田ウナギは他の物よりずっと大きかった。そしてその田ウナギに向かって他の田ウナギも集まっているように見えたのですけど?」
「祠?」
私の質問にギルドマスターは首をかしげる。
そして隣にいるボビーさんに聞く。
「あの辺に祠なぞあったか?」
「祠ですか? いや、どの祠だか…… この水上都市スィーフの近辺には魔法王国時代からの様々な祠や遺跡が点在してますからな……」
なにそれ?
そんなに沢山の祠や遺跡があるの??
『ふむ、そう言えばあの祠は土の中から出てきたと仲間が言っていたな。何の祠だか分からぬが田んぼのあぜ道を修復していた時に出てきたそうだ。なので奇麗にしてあの田んぼの端に祀っておいたらしいがな』
シュルシュルと舌を出し入れしながらパキムさんはそう言う。
いやそれ、どう考えてもそれが原因なんじゃないだろうか?
私はそんな予想を感じながら恐る恐る聞いてみる。
「あの、もしかして田ウナギが田んぼに頻繁に現れるようになったのってその祠が出て来てからじゃないでしょうね?」
私がそう聞くとパキムさんは暫し沈黙して天井を見上げる。
そしておもむろに言う。
『あっ』
やっぱそーなんかいぃっ!!
原因あの祠じゃないの!!!!
「思い出しましたぞ、あの辺には確か『田ウナギ女の伝説』があった場所でしたな!」
「何それ!? 完全にそれが原因なんじゃないですか!?」
ボビーさんも自分でそう言ってから「あっ」とか言ってるしっ!!
私は大きくため息をついてからその「田ウナギ女の伝説」について聞くのだった。
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