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第十一章:南の大陸
11-4湿地帯
しおりを挟む港町ツエマから少し北上したここはすぐにその雰囲気が変わり始めてやがて木々が少ない場所になってきた。
「うーん、なんか水の精霊力が強いね?」
「あれ、ルラ精霊力が分かるの?」
オオトカゲの上でのんびりと周りの風景を見ていたルラは突然そんな事を言いだした。
この子、精霊魔法自体をあまり使わない。
出来ない訳じゃないけど、その操作がうまくいかないのであまりやりたがらないのだ。
私は目に魔力を込めて周りを見てみる。
確かに水の精霊が陸地だと言うのに結構といる。
小さな水溜まりとか有っても結構そう言うところにもいるからだんだんと湿地帯に近づいているのだろう。
「ほんとだ、ウンディーネたち結構いるね? 土の精霊ノーム君たちの力がだいぶ弱まっている」
「じゃあ、湿地帯に入り始めたのか~」
まだまだ地面はしっかりとしているけどそろそろじめじめし始めるかな?
街道らしきものはある事はあるけど、うっすらと草が生えていてこのままでは道が分からなくなるんじゃないかって感じ。
そんな事を思っているとオオトカゲが勝手に街道から離れ始める。
「あ、あれ? どうしたの??」
「お姉ちゃん、あれ見て!」
ルラに言われてその先を見ると岩がごつごつとして少し小高い場所があった。
オオトカゲはそこまで行くと乾いた土の上で座って動かなくなる。
「え、えーともしかして今日はここまでって事? 確かにそろそろ日も傾いてはきたけど……」
このオオトカゲ、冒険者ギルドの話ではかなり人になついていて更に旅慣れしていると聞く。
そうすると野営する場所とかも覚えていてその都度最適な場所で休息するのかな?
「お姉ちゃん、このオオトカゲ寝てるみたいだよ?」
オオトカゲから降りたルラはオオトカゲの顔を見ている。
私も降りて様子を見ると前足に自分の頭を載せて目を閉じ鼻ちょちんを膨らませて寝ている。
「ほんとに今日はここで休めってことなんだ。凄いねこのオオトカゲ!」
「うん、オオトカゲさんお疲れ様~。お姉ちゃんあたしたちも野宿の準備しよ!」
言われて私たちはここで野営の準備を始めるのだった。
* * * * *
ぱちぱちと燃える焚火にポーチから追加の薪を出してくべる。
地面が乾いている場所なので大地の精霊ノーム君を呼び出し何時もの土で出来たベッドを作ってもらう。
地面から少しでも高くしておくと虫とか寄って来ないんだよね~。
なので毎回野宿の時は最低でもベッドを作る。
土壁で出来たドームを作ってもいいけど、ここは結構温かい。
だからドームは今回作らないし、オオトカゲが周りの警戒をしてくれている様だ。
晩御飯も食べ終わり片づけをするとオオトカゲがのっそりと動き出し草むらの草を食べ始める。
「本当にその辺の草をご飯にしているんだ~」
「うん、草食性だって言ってたもんね。ツエマの港町と水上都市スィーフの間ではオオトカゲが良いって言うのはこう言う所らしいからね」
移動手段であるオオトカゲの食事はその辺に生えている草で良いと言われた。
馬車とかだったら馬用の食料は別に準備しなければならないけどオオトカゲは現地でそれが調達できる。
それは旅をするのに対してとても便利ではある。
オオトカゲはある程度その辺の草を食べ終わるとまたこちらに戻って来て先ほどの場所で寝始める。
うーん、本当に手間いらずね。
「さてと、一応警戒しながら休みましょう。ルラ、先に寝ていいよ」
「ん~、それじゃ先に寝るね。お休み~」
ルラはそう言って土のベッドの上で毛布にくるまって寝る。
私はその様子を見てから焚火に又薪をくべる。
ぱちぱちと踊る炎を見ながら思う。
水上都市スィーフにはお米がある。
エルフのいる迷いの森から水上都市スィーフは二番目に近い都市。
なのにエルフの村にはお米が知らされていない。
保存だって効くし、取り扱いも便利、更にエルフでも受け入られると思う味なのになんであの村では出回ってなかったのだろう?
いや、港町ツエマでも見なかった。
もしかしてこの世界の人には不人気なのだろうか?
「でも何が何でもお米は手に入れたいなぁ~。出来れば二百年分くらい……」
エルフの村に戻ったら最低でも二百歳くらいになるまで外の世界には出してもらえないだろう。
あの村にいると変化を望まない人たちばかりだし、食事だって変わらない物ばかり食べている。
そう言えば昔よりは開放的になったとは聞いたけど、それってメル長老たちの息子さんたちがいるせいかな?
確かロンバさんだけど、どう見てもメル長老の方が若く見える。
ロンバさんはハーフエルフらしいけど、耳がちょっと短いくらいにしか外見上は変わりがない。
ロンバさんには家族が多いってのは聞いた事あるけど、精霊都市ユグリアに住んでいてたまに村に来るからよくわからない。
お孫さんとか曾孫さんとかも連れて来るけど、人間族に近かったりエルフに近かったりするらしい。
私はちらっとしか見たことが無いけどね。
「精霊都市にいるならロンバさんたちはエルフの食事じゃないもんねぇ~。そう言えばメル長老たちが食事している所見た事無いなぁ。やっぱりエルフ豆とかなんだろうなぁ~」
薪を放り込みながら独り言を言う。
二百年かぁ……
シャルさんに相談してもう少し食生活の改善してみようかな?
エルフの村で取れるものや栽培できるものとかも増やして。
じゃなきゃ二百年も食材買いこんでそれでまかなうのって大変だよ。
それにエルフのお母さんやお父さんだって一緒以食べるだろうし、シャルさんも……
うーん、お米ってエルフの村でも栽培できないかなぁ~。
そんな事を考えていたらオオトカゲがいきなり立ち上がった。
そして私の前に来て背を見せなんか立ち塞がるような感じがする。
オオトカゲが見るその先は草むら。
もしかして何かの魔物が来たのだろうか?
「ルラ、ルラ起きて! もしかしたら魔物よ!!」
「ううぅ~ん、お姉ちゃん?」
ここはサージム大陸。
今までいたイージム大陸に比べたら魔物の出現率は低い。
でもそれは全くないという訳ではない。
私はルラを叩き起こしオオトカゲが見据えるその先の草むらを睨むのだった。
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