上 下
221 / 437
第十一章:南の大陸

11-4湿地帯

しおりを挟む

 港町ツエマから少し北上したここはすぐにその雰囲気が変わり始めてやがて木々が少ない場所になってきた。


「うーん、なんか水の精霊力が強いね?」

「あれ、ルラ精霊力が分かるの?」

 オオトカゲの上でのんびりと周りの風景を見ていたルラは突然そんな事を言いだした。
 この子、精霊魔法自体をあまり使わない。
 出来ない訳じゃないけど、その操作がうまくいかないのであまりやりたがらないのだ。
 
 私は目に魔力を込めて周りを見てみる。

 確かに水の精霊が陸地だと言うのに結構といる。
 小さな水溜まりとか有っても結構そう言うところにもいるからだんだんと湿地帯に近づいているのだろう。


「ほんとだ、ウンディーネたち結構いるね? 土の精霊ノーム君たちの力がだいぶ弱まっている」

「じゃあ、湿地帯に入り始めたのか~」

 まだまだ地面はしっかりとしているけどそろそろじめじめし始めるかな?
 街道らしきものはある事はあるけど、うっすらと草が生えていてこのままでは道が分からなくなるんじゃないかって感じ。

 そんな事を思っているとオオトカゲが勝手に街道から離れ始める。


「あ、あれ? どうしたの??」

「お姉ちゃん、あれ見て!」


 ルラに言われてその先を見ると岩がごつごつとして少し小高い場所があった。
 オオトカゲはそこまで行くと乾いた土の上で座って動かなくなる。

「え、えーともしかして今日はここまでって事? 確かにそろそろ日も傾いてはきたけど……」

 このオオトカゲ、冒険者ギルドの話ではかなり人になついていて更に旅慣れしていると聞く。
 そうすると野営する場所とかも覚えていてその都度最適な場所で休息するのかな?

「お姉ちゃん、このオオトカゲ寝てるみたいだよ?」

 オオトカゲから降りたルラはオオトカゲの顔を見ている。
 私も降りて様子を見ると前足に自分の頭を載せて目を閉じ鼻ちょちんを膨らませて寝ている。

「ほんとに今日はここで休めってことなんだ。凄いねこのオオトカゲ!」

「うん、オオトカゲさんお疲れ様~。お姉ちゃんあたしたちも野宿の準備しよ!」

 言われて私たちはここで野営の準備を始めるのだった。


 * * * * *


 ぱちぱちと燃える焚火にポーチから追加の薪を出してくべる。
 

 地面が乾いている場所なので大地の精霊ノーム君を呼び出し何時もの土で出来たベッドを作ってもらう。
 地面から少しでも高くしておくと虫とか寄って来ないんだよね~。
 なので毎回野宿の時は最低でもベッドを作る。

 土壁で出来たドームを作ってもいいけど、ここは結構温かい。
 だからドームは今回作らないし、オオトカゲが周りの警戒をしてくれている様だ。

 晩御飯も食べ終わり片づけをするとオオトカゲがのっそりと動き出し草むらの草を食べ始める。


「本当にその辺の草をご飯にしているんだ~」

「うん、草食性だって言ってたもんね。ツエマの港町と水上都市スィーフの間ではオオトカゲが良いって言うのはこう言う所らしいからね」

 移動手段であるオオトカゲの食事はその辺に生えている草で良いと言われた。
 馬車とかだったら馬用の食料は別に準備しなければならないけどオオトカゲは現地でそれが調達できる。
 それは旅をするのに対してとても便利ではある。

 オオトカゲはある程度その辺の草を食べ終わるとまたこちらに戻って来て先ほどの場所で寝始める。

 うーん、本当に手間いらずね。


「さてと、一応警戒しながら休みましょう。ルラ、先に寝ていいよ」

「ん~、それじゃ先に寝るね。お休み~」

 ルラはそう言って土のベッドの上で毛布にくるまって寝る。
 私はその様子を見てから焚火に又薪をくべる。


 ぱちぱちと踊る炎を見ながら思う。

 水上都市スィーフにはお米がある。
 エルフのいる迷いの森から水上都市スィーフは二番目に近い都市。
 なのにエルフの村にはお米が知らされていない。

 保存だって効くし、取り扱いも便利、更にエルフでも受け入られると思う味なのになんであの村では出回ってなかったのだろう?
 いや、港町ツエマでも見なかった。

 もしかしてこの世界の人には不人気なのだろうか?


「でも何が何でもお米は手に入れたいなぁ~。出来れば二百年分くらい……」

 エルフの村に戻ったら最低でも二百歳くらいになるまで外の世界には出してもらえないだろう。
 あの村にいると変化を望まない人たちばかりだし、食事だって変わらない物ばかり食べている。

 そう言えば昔よりは開放的になったとは聞いたけど、それってメル長老たちの息子さんたちがいるせいかな?
 確かロンバさんだけど、どう見てもメル長老の方が若く見える。

 ロンバさんはハーフエルフらしいけど、耳がちょっと短いくらいにしか外見上は変わりがない。
 ロンバさんには家族が多いってのは聞いた事あるけど、精霊都市ユグリアに住んでいてたまに村に来るからよくわからない。
 お孫さんとか曾孫さんとかも連れて来るけど、人間族に近かったりエルフに近かったりするらしい。
 私はちらっとしか見たことが無いけどね。


「精霊都市にいるならロンバさんたちはエルフの食事じゃないもんねぇ~。そう言えばメル長老たちが食事している所見た事無いなぁ。やっぱりエルフ豆とかなんだろうなぁ~」

 薪を放り込みながら独り言を言う。

 二百年かぁ……

 シャルさんに相談してもう少し食生活の改善してみようかな?
 エルフの村で取れるものや栽培できるものとかも増やして。

 じゃなきゃ二百年も食材買いこんでそれでまかなうのって大変だよ。

 それにエルフのお母さんやお父さんだって一緒以食べるだろうし、シャルさんも……


 うーん、お米ってエルフの村でも栽培できないかなぁ~。


 そんな事を考えていたらオオトカゲがいきなり立ち上がった。
 そして私の前に来て背を見せなんか立ち塞がるような感じがする。

 オオトカゲが見るその先は草むら。
 もしかして何かの魔物が来たのだろうか?


「ルラ、ルラ起きて! もしかしたら魔物よ!!」

「ううぅ~ん、お姉ちゃん?」


 ここはサージム大陸。
 今までいたイージム大陸に比べたら魔物の出現率は低い。
 でもそれは全くないという訳ではない。



 私はルラを叩き起こしオオトカゲが見据えるその先の草むらを睨むのだった。 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

女体化してしまった俺と親友の恋

無名
恋愛
斉藤玲(さいとうれい)は、ある日トイレで用を足していたら、大量の血尿を出して気絶した。すぐに病院に運ばれたところ、最近はやりの病「TS病」だと判明した。玲は、徐々に女化していくことになり、これからの人生をどう生きるか模索し始めた。そんな中、玲の親友、宮藤武尊(くどうたける)は女になっていく玲を意識し始め!?

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...