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第十章:港町へ

10-15シスターの話

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「どちら様でしょうか?」


 その声のする方を見るとシスターが立っていた。
 見た感じまだ若い。
 多分二十歳そこそこじゃないだろうか?

「あの、私たちこう言った者でして……」

 言いながらバーグ神官から渡されたあのペンダントを出してみる。
 するとシスターは少し驚いてすぐに私たちのそばまで着て丁寧にあいさつをする。

「これはこれは、ドドスの神殿の巡回者の方でしたか。お見受けする限りエルフの方のようですが?」

「ああ、はい、えっとリルと言います。こちの子は双子の妹ルラです。えーと、厳密に言うと巡回者って訳じゃないんですが……」

 ドドスの共和国ではドドスの神殿はやはり知名度が高いのかな?
 まあ、エルハイミさんが直接来ているらしいからやっぱり女神信教としては有名な場所なのだろう。


「リル様とルラ様は巡回者の方ではないと?」


「はい、訳あって教会から協力を頂いてます。それでこのペンダントも渡されたんですよ」

 それを聞いたシスターは不思議そうな顔をする。


「信者の方では無いのですか?」


「えっと、信者という訳では無いんですが……」

 エルハイミさんを崇拝する気には到底なれない。
 確かに女神様としていろいろやってくれているのだろうけど、どう考えてもあの人が女神様として有能には思えない。

 
「我らが女神様は素晴らしい御方ですよ! どうですか、これも何かのめぐり合わせです。我が教会に入教してみませんか!!」


 シスターはここぞとばかりに私とルラの手を握ってそう言う。

「はははは、お気持ちはうれしいのですがもう女神様関連の方とは知り合いなので……」

「女神様関連の方とお知り合い? はっ! エルフの方、と言う事はもしや『女神の伴侶シェル様』とお知り合い!?」

 まあ、知り合いと言えば知り合いなのだけど。
 しかもその妹さんのシャルさんとはかなり仲が良かったし……


「あああぁっ! 何と言う僥倖!! シェル様のお知り合いに会えるなんて!!」


「いや、あの、そんな大それたものでは……」

 シスターはその場で跪き天を仰いで祈りを捧げる。
 なんか感動して涙まで流している。
 
「と、とにかく立ち上がってくださいよ。私たちは単にシェルさんの知り合いってだけですから」

「いえいえ、シェル様に直接お話しできるだけでもうらやましい限りです。ああ、シェル様とはどんな素晴らしいお方なのでしょか!?」


 どうも宗教に関わっている人は色々見えなくなっているような気がする。
 確かにシェルさん自体は悪い人ではないと思うし、精霊魔法とかいろいろ教えてくれた。
 エルハイミさん自体も悪い人には思えないけど、どことなくお気楽な感じの人という感じでとても女神様には見えなかった。
 むしろ黒龍のコクさんの方が何とも言えない威圧感があって偉そうに感じる。

 あ、そう言えばエスハイミさん呼ばわりされてたエルハイミさんの分体はもっと女神様っぽく無かったしなぁ……


「と、とにかく私たちは今ここアスラックの港町まで来たと言う事を伝えに来ただけなんですよ」

「と、言いますと?」

 私は軽くため息をついて簡単に今までの経緯を話すのだった。


 * * * * *


「なるほど、そう言う事でしたか。確かに邪教である秘密結社ジュメルは万死に値しますね!!」


 かなり過激な事を言うシスター。
 ジュメル自体は厄介な連中だし、関わり合いを持ちたくはない。

 でもなんかこのシスターを見ていると女神信教もあまり変わらないような……


「分かりました、リル様やルラ様の事はこの私、ネヴェリアが責任をもってドドスの神殿にお伝えいたします」


 シスターネヴェリアさんはそう言ってどんっと胸を叩く。


 ぷるん


「ぐっ、そ、それではよろしくお願いします。私たちはこれで」

 くそうぅ~、ネヴェリアさんって結構大きいな。
 修道服であまり目立たなかったけど、胸を叩いてあの揺れ。
 かなりの大きさでなければああは揺れない。

 ちょっとダメージを受けながら立ち上がり教会を後にしようとすると、ネヴェリアさんは私たちに声をかける。


「時にリル様たちはシェル様にご連絡できる手段はお持ちですか?」

「はい? いえ、私たちはまだ未熟でエルフのネットワークへつなげる事は出来ないので……」

 それが出来ればこうして教会や冒険者ギルドに立ち寄る必要はない。
 自分たちでファイナス長老に連絡を入れればいいのだから。


「そう、ですか…… 慈愛満ちた女神様の伴侶であらせられるシェル様にならこの問題もご相談できるかと思ったのですが……」

「シェルさんに? 一体何を??」

 どう考えてもシェルさんに何か相談してもうまくいくかどうか不安しか残らない。
 だって今までの事を聞いていると各地でいろいろやっていてどちらかと言うとあまり好い噂が残っていない。

「はぁ、司祭様も海獣討伐でお亡くなりになり、この教会も人手が無く私が代理司祭を務めていると言うのに……」

「え? 海獣!?」

 意外な所で意外な話が出てきた。
   
「はい、海獣を討伐に協力して欲しいと我が教会にも依頼があり、回復魔法が使える司祭様が第一陣で同行したのですが帰らぬ人となってしまったのですよ……」

 そう言ってネヴェリアさんはため息をつく。

「ねぇねぇ、そう言えばその海獣てどんなの~?」



 ルラは興味を持ったらしくネヴェリアさんに海獣について聞くのだった。  

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