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第十章:港町へ
10-12アスラックの港町
しおりを挟む「もうじきアスラックの港町に着くわね」
そう言いながら岩のような肌を持つ魔物を踏み越えて行く。
多分トロールとか言う化物だろう。
でもルラに簡単にぶっ飛ばされてご覧のように気を失っている。
いくら魔物でも気絶している相手を殺してしまうのは忍びないのそのまま放置しておくことにするのだけど、流石に道のど真ん中に倒れていると邪魔だった。
「こいつ、もう起きないかな?」
「うーん、まあ私たちが踏み越えて行って気が付かなきゃ起きないでしょう?」
ぶぎゅる!
あ、踏んでみると表面は固いけど意外と中は柔らかいのかな?
哀れトロールは私とルラに踏み越えられてしまうのだった。
「そう言えばさ、さっきの『小さな悪魔』って二人組の話、一体どんなのだろうねぇ~」
「さぁ、イーオンの町の付近だからこっちにはいないんじゃない? それにそんな魔物ばかり狩っている危なさそうなのとは出来れば出会いたくないわよ」
面倒事はごめんである。
あ、でもちょっと前に出会った「ザ・スキンヘッド」の皆さんのように「女神の伴侶シェル」さんの名前出しただけでも逃げ出すのならシェルさんの名前をもっと使わせてもらおうかな?
魔物とかには通用しないけど、以前に町のチンピラなんかはシェルさんの名前出して面倒事は回避できたしなぁ。
そんな事を思いながら歩いていると、丘を過ぎたあたりでいきなり目の前が開けた。
「海だぁ!!」
ルラは思わず指さして騒いでいる。
見れば入り江になっている所に大きな城壁の町があった。
この丘から多分半日もしないで着く有ろう。
「あれがアスラックの港町ね……」
やっとここまで来られた。
考えても見ればエルフの村からこちらのイージム大陸に飛ばされてなんだかんだ言ってもう一年半くらいが経ってしまった。
今までこちらの世界に来て十六年間、ほとんどエルフ族の村の人にしか会っていなかったけど、この一年半くらいでいろいろな人と出会った。
いろいろな街や村でいろいろな事もあった。
でもやっとここまでやってきたのだ。
「海、こっちの世界では初めて見るね。前世の世界の海と見た感じは変わらないんだ……」
考えても見れば凄い事だ。
本当は死んでしまってそれで私の人生は終わりのはずだった。
でもたまたまあの駄女神に出会って、あっちの世界でもう体が無いからこっちの世界に異世界転生を進められ、いろいろ有ってこの第二の人生であるエルフとしての生活にも慣れた。
前世の事を覚えていると言うのは色々とこの世界との比較をしてしまい、不便を感じるもそれなりに忙しい毎日だったから寂しさとかは感じない。
それに今は私の双子の妹となった赤城拓人君もいる。
多分私ひとりじゃ気が狂っていたかもしれない。
「ね、ルラはエルフになってよかったかな?」
「ん? どうしたのお姉ちゃん??」
「うん、なんか久しぶりに…… いや、こっちの世界では初めて海見て昔の事思い出しちゃってね」
きょとんと私を見ている双子の妹ルラ。
顔は多分ほとんど同じだろう。
今は私がツインテール、ルラがおさげにしているくらいしか違いが無いから二人とも髪の毛をおろせば見分けがつかなくなるだろう。
あ、胸の事は今は禁句ね!
「エルフの村に戻っちゃったらまたあの生活になっちゃうけど、ルラは大丈夫?」
「う~ん、スキル内緒にしなきゃいけないのはつまらないけど、お姉ちゃんが一緒だからあたしは大丈夫だよ!」
そう言ってにっこりと笑ってくれる。
もう、この子ったら……
私は苦笑してルラに抱き着いて言う。
「うん、そうだね。帰ろう、エルフの村に。そしてトランさんの遺髪も家族の人に渡してみんなでエルフの村に帰ろう」
そう言う私をルラも抱きしめてくれるのだった。
* * * * *
「うわぁ~、近くに来たら思いの外大きな城壁だね?」
「うん、なんか他の町や村なんかよりかなり立派な壁だね」
私たちはアスラックの港町に着いた。
そして他の町や村なんかとはあからさまに違う頑丈そうな城壁を見上げる。
道は真っ直ぐに城門に繋がっていた。
でも近づくとそのあまりにも頑丈そうな城壁に思わず上を見上げ口を開けたまましばし見入ってしまった。
「あんたら町に入るのかい? だったら早い所検問してくれんかね?」
ポカーンと上を向いていたらいつの間にやら後ろに人が並んでいた。
私とルラは慌てて門番の人の所へ行ってギルドの紹介状と教会のペンダントを出して身分証明をする。
すると通行料銀貨一枚、二人で二枚を徴税されてあっさりと町には入れた。
「思いの外簡単に入れたね~」
「うん、ここがアスラックの港町かぁ……」
このイージム大陸と私たちエルフの村があるサージム大陸をつなぐ定期航路のある町。
私とルラは顔を見合わせてこの知らない街を闊歩し始めるのだった。
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