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第九章:道に迷う

9-29次の封印のひょうたん

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「あったぁ!」

 
 ルラはそう言って岩山の絶壁の中ほどにある祠から封印のひょうたんを持って降りて来た。
 私たちは次の封印のひょうたんを求めカリナさんの指示があった岩山と岩山の間の渓谷付近に来ていた。
 
 渓谷の下の方には街道があって、このままこの岩山の渓谷を抜けると町があるそうだ。
 結構落石が多い場所らしく危険な通りではあるけどここと通らないとかなりの回り道になってしまうらしい。


「お疲れ様ルラ、大丈夫だった?」

「うん、あたしは『壁上りも最強』を使ったから楽勝だよ!」

 ルラのチートスキル「最強」は使い勝手が難しいけどそれだけに特化するならかなりの応用範囲がある。
 ただ、基本的には身体能力とかの強化しか出来ないのでお料理と作るのを「最強」とやってみたら作る量だけは凄かったけど味はとんでもない物になった。
 以来ルラはお料理に絶対に手を出したがらない。

 ……意外と女の子としてショックを受けていたみたいだけど。

 まあお料理なんて経験の積み重ね。
 基本の味のイメージが明確であれば何とかなるものだ。


「お疲れ様です。これで残り一つですね」

「今回はすんなり見つかってよかったですね」

「魔物も少なくて済んだしね~」

 ここへ来る間にはぐれサイクロプスがいたけど、私たちに瞬殺された。
 最初は封印のひょうたんにでも閉じ込めようかとしたけど、ルラが先走ってサクッとやっつけてしまった。
 その後出て来る魔物たちもルラとオーガの皆さんが競うかのようにサクサクと倒して行って、多分この辺の治安はかなり良くなったのではないだろうか?



 がさがさ!


「なんだ? エルフか?? おお、結構上玉じゃないか! お前ら大人しくしろ、俺たちが可愛がって・・・・・・」

『なんね、お前さたちは?』


 私とルラ、そしてイリカさんが話をしていると近くの茂みから野盗の皆さんが出現。
 最初は女たちだけかと思い鼻の下伸ばしてやって来たけど、すぐにオーガの皆さんが現れ野盗の皆さんを囲む。


「なっ!? オ、オーガだと!!!?」

「しかも群れでいるだと!?」

「しまった囲まれた!」

「くそぉっ!!」

 
 オーガの皆さんに囲まれて焦る野盗たち。
 ガクガクブルブルとして剣とかとか抜いて構えているけど、あっさりとオーガの皆さんにフルボッコにされる。

 うーん、今までが今までだったので平和だねぇ~。

 フルボッコになって泣きを入れている。
 そんな和やかな風景を見ながら私は街道を見ると、どうやら旅人らしい人たちが慌てて逃げて行く。
 
 うん、野盗に襲われずに済んでよかったね~。

  
『こいつらどんすっか?』

『す巻きにして川流すんかね?』


 オーガの皆さんはそんな事を言っているけど、面倒だからこのまま放置する事にした。
 運が良ければ誰かに助けてもらえるかも知らない。


「さて、最後の封印のひょうたんですが、ここからさらに南に行った岩山に滝が流れています。その滝の裏側に祠があるらしく、封印のひょうたんはそこにあるよですね」

 イリカさんはそう言って石版に書かれていた内容を写し書いたメモを引っ張り出して確認をしている。

 どこかの村とか町にあるのではなく、そんな場所に隠されたようにあるんだ。
 でもあとひとつでこの封印のひょうたんの回収騒ぎも終わる。
 そしてデルバの村に戻って……

「ところでイリカさん、封印のひょうたんは魔王様の意思を引き継ぎ再封印とかしてますけど、コルネル長老たちってどうするんです?」

「うーん、オーガの姿になっちゃいましたけど意識も性格も変わっていない様だし、どうしたもんでしょうねぇ~」

 このまま村に戻ったってガリーの村や行商人との交流が無くなる訳じゃない。
 事情を知らない人がデルバの村に来たら大騒ぎになるだろう。

「まあ、最悪は幻影魔法か何かでしばらくは姿を元の人にしますね。後は追々考えていくか、過去の石版とかを研究してまた再封印の方法を探すしかないですね……」

 イリカさんはそう言ってコルネル長老たちを見る。
 しかし野盗たちをふん縛っているオーガの皆さんは楽しそうだ。

 ……なんかオーガになってから生き生きしていない?


「まあ何とかなるか……」

 私は深く考えない事とした。


 ◇ ◇ ◇


「あれが最後の封印のひょうたんが納められている祠があると言われている滝ですか……」


 目の前に見上げるほど大きな滝がある。
 たぶん何十メートルもあるのだろう。
 滝つぼに水が落ちる事には霧雨のようになっていてその大きさを示していた。


『これで最後だがに?』

『まんずこげな遠くに来たのはずめてだなっす』

『すんげー滝だがに』


 各地を回る毎にオーガの皆さんは観光状態。
 先導する私たちはオーガ様御一行の添乗員状態でもある。


「ほらぁ、遅れるとはぐれるよぉ~。また魔物出てもあたし一人でやっつけちゃうよ?」

『儂らもやるだがに! ルラの嬢ちゃんだけにいいとこ取られるわけにはいかないだがに!!』

『んだんだ!』


 遅れるオーガの皆さんにルラがそう言うと慌ててこっちへ来る。
 なんかいつの間にか魔物を倒すのを競い合ってもいるみたい。

 うん、平和なんだよねぇ~。



 私はそんな事を思いながら最後の封印のひょうたんのある滝を眺め直すのだった。
 
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