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第九章:道に迷う
9-16岩山
しおりを挟むこの辺は山々に囲まれた盆地ではあるけど、その山々のほとんどが岩山で出来ている。
イリカさんの話ではその岩山の一つにドワーフの王国に繋がる大穴があるらしいけど私がエルフのせいかどうもドワーフは苦手だ。
「見えてきましたね、あれが石板に記されている封印のある場所です」
私がそんな事を考えているとイリカさんは目の前の岩山を指さしてそう言う。
見上げるそれは確かに岩で出来ているらしく、ほとんど草木が生えていない。
「それで、何処にあるんですかその封印?」
「え? 私が知る訳無いでしょう?」
「……」
しばし沈黙。
そして私はもう一度イリカさんに聞いてみる。
「巨人族を封じた封印の場所は何処なんですか?」
「だから私が知ってるわけないでしょうに?」
「……」
またまたしばし沈黙。
「えーと、イリカさんは石版でこの辺い魔王様が封じた巨人族の封印のひょうたんがあるって知ってるんですよね?」
「ええ、それは記されています」
「じゃあ封印の場所は?」
「封印の場所は書かれていません。この岩山にあるとしか」
そこかーいっ!
私は思わずイリカさんに突っこみを入れそうになるのをぐっと我慢して聞く。
「そうすると封印されているそれっぽい目印とか何かとかは書いてないんですか?」
「えーと、無いですね。この岩山としか書いてありません!」
ふん!
何故かその大きな胸を張って偉そうに言うイリカさん。
きっとそうなんだろうけどそうじゃない!!
「じゃあ、この岩山全部調べなければならないって言うんですか!?」
「そうなりますね!」
なに元気に面倒な答えを言ってるの!?
いくらオーガの皆さんもいるとは言え、この岩山をイリカさんが抱える様ひょうたん一つ探し出すのって一苦労なんてものじゃない。
私は大きくため息をついてから聞く。
「封印の場所は探すとして、前の一個はひょうたんが壊れてましたけどずっと野外にでもあるんでしょうか?」
「えーと、封印したひょうたんは祠に有るらしいので、前回のように何らかの理由で野外に放り出されているのは稀だと思います。で無ければ封印はもっと早い段階で解けているでしょうから」
イリカさんはそう言いながら岩山を見る。
確かにひょうたんが野外に有れば何かの拍子で壊れる事もあるだろう。
落石とか風化で。
となると、この岩山のどこかに祠があると言う事になる。
つまり、その祠を探せばいいわけだ。
「じゃあ、目印としてはどこかに祠があるって事ですね?」
「だと思います。ただ、その祠が埋まっていたりすれば探すのが大変ですけど……」
イリカさんはそう言ってため息をつく。
一応考えてはあるんだ。
だったらさっきの会話も最初に祠を見つければいいとか言ってくれればいいのに……
「それでですね、リルさんは精霊魔法が使えるって話じゃないですか? 土の精霊にも協力はしてもらえないのですか?」
「……最初から精霊魔法を見たいと言えばいいのに。使えますよ、やります、やればいいんでしょう?」
そう言う事か、エルフについて研究していたと言っていたから精霊魔法についても興味があると言う事か。
通常の魔法と違って精霊魔法はエルフ語で精霊たちにお願いをして協力をしてもらうモノ。
【水生成魔法】とか【着火魔法】とか【念動魔法】みたいに魔力をマナに干渉させ、その効果を発揮するモノとは違う。
あくまで精霊にお願いをしてその代価として魔力を供給するのが精霊魔法。
魔術師であるイリカさんにはどうもその辺が理解できないらしい。
「それじゃ、土の精霊を呼び出してみますね」
私は早速意識を集中して土の精霊、ノーム君を呼び出す。
程無く地面の土が盛り上がり手のひらサイズの泥人形が出来あがる。
私は手のひらにそのノーム君を乗せ、エルフ語で「この岩山のどこかにある祠を探して欲しい」とお願いをするとノーム君はしばし考えこむかのように腕組みをして唸っている。
……なんかそのしぐさが可愛いんだけど、もしかして範囲が広すぎて難しいのか?
私がそう考えているとノーム君は手ぶり身振りで私に話しかけて来る。
残念ながら精霊の言葉を正確に聞き取る事は出来ない。
大体こんな意味的なモノしか伝わってこない。
上級の精霊とかだと会話できるのもいるらしいけど、私のレベルではとてもとても。
しかしその意味する所はやはり範囲が広いので仲間を呼んで探すと言っているようだ。
「えーと、岩山の範囲が広すぎて仲間を呼ばないと無理らしいですね。やってみます」
イリカさんにそう言ってノーム君を介して魔力を更に注ぎ込む。
すると足元にやはり同じくらいの泥人形がポコポコ出来あがる。
その数約十体。
「うっ、結構魔力持って行かれちゃったな。イリカさん、とりあえずノーム君たちに探してもらいますね」
そう言って私はもう一度エルフ語でノーム君たちにお願いをするのだった。
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