168 / 437
第九章:道に迷う
9-12オーガの軍団
しおりを挟む「有ったっ!」
私は宝物庫の中からひょうたんを取り上げる。
それは何の変哲もない本当にひょうたんだった。
昔の絵とか漫画で出て来そうな茶色の乾燥したひょうたんは首元に赤い糸が縛られていてその口にはコルクのような栓がされていた。
私はそれをイリカさんに見せる。
するとイリカさんは慌てて私に言う。
「リルさん、それの栓は絶対に開けないでくださいね。栓を開けて相手に向けるとひょうたんの中に閉じ込められると言うマジックアイテムなんです」
なんかどこかで聞いたような話だった。
私は首をかしげながらイリカさんに聞く。
「あの、もしかしてこれって名前を呼んで返事しないと吸い込まれないとかってのでは無いのですね?」
「名前? いえ、相手に向けて呪文を唱えれば良いはずですが、そんな仕様になってましたっけ?」
いやいや、私はその説明書的な古代文字読めないからわからないってば。
でもその昔聞いたお話でそんなのがあったような気がしたのでつい聞いてしまったのだ。
私とイリカさんがそんな話をしているとオーガの人がこちらに話しかけて来る。
『なぁ、イリカさ。この武器や防具って使ってもええがね?』
『んだんだ、これさえらいええもんだでよ』
『長老さ、巨人族しばくに使っても良いだがや?』
とりあえず目的のひょうたんが見つかったので今度はオークたちが武器や鎧を手に取りそう言う。
まあマジックアイテムらしいので長い間放置されても錆一つ無いし、私が見たってなんかすごそうな武具ばかりだ。
すると長老さんのオーガは首を縦に振って言う。
『そうさね、魔王様の言いつけで巨人族さしばきに行くんでええっちゃろ』
長老がそう言うと途端にオーガたちは歓声を上げてニコニコ顔で武器や鎧を抱え込む。
やっぱり本来はオーガだからこう言った乱暴な事って好きなのかな?
思わずそう思ってしまう私。
「取りあえず目的の物は手に入りました。準備を整えて石版に記された封印の場所へ向かいましょう! そしてこのひょうたんに巨人族七万を封じ込めましょう!!」
イリカさんはそう言ってひょうたんを掲げ宣言するのだった。
* * * * *
『あんれまぁ、爺様えらい格好がや。ごっつぅかっこ良くなっただに。儂、惚れ直しただがや』
宝物庫から戻って来て次々に武具を運び出してそれを身に着ける。
それを見たお姉さんオーガ (中身はお婆さん)は頬を染めて長老の雄姿を見ている。
まあ見た感じは確かに強そうだし、何より長老もオーガになったとたん筋骨隆々の勇ましさはある。
年齢もなんか中年くらいに若返っているし……
『がははははは、こんげ歳になってこっぱずかしいだがや。けんど魔王様の言いつけ守らにゃならんでよ、いっちょ巨人族さしばきにいってくるさね』
なんか鎧に身をつけた長老は意気揚々としている。
うーん、まさしく戦国時代の鬼武者のような感じ。
違うのは兜から突き出ている角くらい?
みんな強面だから知らないと見てておっかない。
『そだ、巨人さしばきに行くんだ、これさ持って行くだに』
そう言ってお姉さんオーガ (中身はお婆さん)は他の女の人のオーガと一緒にみんなに袋をよこして来る。
オーガの皆さんは心得たようにそれを受け取り腰に括り付ける。
私やルラの分もあるようで、何かと思って渡された袋を開けてみると黄色っぽい丸いモノがいくつも入っていた。
『村さ取れるジビの実でこさえた団子だがや。栄養あっから腹すいたら食うだがや』
お姉さんオーガ (中身はお婆さん)はそう言ってウィンしてくる。
うん、この姿でやられたらきっと長老も喜ぶのではないだろうか?
それ程今のお婆さんはこの姿になって色っぽい。
言われてルラは私を見ながら聞いてくる。
「えーと、途中で犬さんと猿さんとキジさんをお供にするの?」
「いや、そんなことする必要ないし退治される側になっちゃうでしょうに……」
ルラはそのジビの実の団子を一つ取り出して口に放り込む。
「もごもご…… んっ、おいしぃ~」
「ルラ今食べちゃ……」
『なぁ~に、腹さ減ったらまだまだあるでよ、もっと持って行くだがに?』
そう言ってまだまだあるといいながらお姉さんオーガ (中身はお婆さん)はお皿に山ほど出来上がったお団子持ってくる。
同時に他の女性オーガも同じくジビ団子を山ほど持ってくる。
『うん、ジビさ団子出てくんならこれだっぺ!』
『ほやな、景気づけに一杯だがや!!』
『おう、ええのぉ!』
「え? いや、ちょっと……」
他のオーガの人たちもお酒と思われる物を取り出してジビ団子を食べながら酒盛りが始まる。
それは村全体に伝染するかのように広まりいつしか広場で焚火をしながら飲めや歌えやが始まってしまった。
「うわっちゃぁ~、始まっちゃった。こうなると落ち着くまで酒盛りが続いちゃうわね」
「え”?」
思わずイリカさんの顔を見る私。
しかしイリカさんはそう言ってあきらめ顔でジビ団子を一つ手に取って口に放り込むのだった。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる