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第九章:道に迷う
9-11宝物庫
しおりを挟むガシャン!
宝物庫のさび付いてどうしようもなかった南京錠のような鍵が壊され外された。
長老の話だと先々代の長老以来の開門だそうだ。
石で出来たその扉は長らく開かれていないようで、ものすごい音を立てながら開いて行く。
ぎがぎぃギギギギギギギギギぃぃ……
『開けんのは久しぶりじゃけん、中がどうなっちょるかの?』
『長老は見たことあんのけ?』
『うんにゃ、儂もはずめてずら』
長老でさえ見た事無いんだ。
先々代って言ってたから長老のお爺ちゃんくらいかな?
今まで人の姿でいたんだからもう何十年も開いていないって事かな??
その塚の扉が開かれるとそこには何も無かった。
「あれ? 何も無い?? 長老、これって……」
『あんれまぁ、ほんとになんもなかがね? 先々代は中広くていろんなモンしまってある言ってただがに??』
そう言って長老は中に入ってゆく。
中はオーガであればちょうど一人くらいは入れるくらいの大きさ。
その宝物庫の真ん中に長老が入った時だった。
ひゅんっ!
「えっ? 長老!?」
足を踏み入れ真ん中あたりに行ったらいきなり長老が消えた。
慌ててイリカさんも中に入り様子を見るとうっすらと床が光っていた。
「これ、魔法陣??」
イリカさんは注意深くその魔法陣を読み取る。
しかしその魔法陣は徐々にその輝きを消して行きただの床に書かれた絵に戻ってしまった。
「これは……なんて高度な魔法陣なんでしょう! えーとここが時空についての方程式で、こっちがその制御式で……」
「あの、イリカさんそんな事より長老さん何処行ったんですか?」
魔術師の悪い癖なのだろう。
目の前に興味のあるモノがあるとそちらが優先になってしまう。
「ああ、ええと、これってどうやら異次元の宝物庫への転移魔法陣のようです。使い方は単純にこれの真ん中に入ればいいみたいですね」
そう言って自分もその魔法陣の中央へ行く。
すると先程の長老さんと同じく床淡い光を放ってイリカさんの姿も消えてしまった。
『すんげぇ! 儂こんな魔法初めて見ただがや!!』
『面白そうずら、おらもやってみてぇずら!!』
『おいこら、押すなだがや!! あっ!』
前言撤回、興味があれば魔術師でなくてもやってみたい様である。
「面白そう! あたしも!!」
「え、あ、ちょっとルラぁっ!!」
勿論身内もそう言うのがいれば姉の苦労も一手間どころではない。
ルラも早速その魔法陣に飛び込みこの場から消える。
『あんれまぁ、みんな消えてしまっただね。儂は爺様の戻ってくんのまっとるだがね』
若返ったナイスバディ―のお婆さんだったオーガがそう言う。
「あ、えっと、おばぁ……いや、お姉さん、私も行ってきますね!」
『あいよ、気ぃ付けてな~。それとこっぱずかしいから今までとおんなじ婆さんでええでよ?』
お姉さんオーガ(中身はお婆さん)はそう言って笑う。
うーん、このお姉さんをお婆さん呼ばわりはちょっと……
「と、とにかく行ってきますね!!」
私はそう言って魔法陣の真ん中に飛び込んでいくのだった。
* * *
そこは薄暗いけど何処からともなく薄っすらと淡い明りが照らして周りの様子が見て取れる。
もっとも、エルフの私は夜目が効くので多少の暗いくらいは昼間と同じく見えるから問題は無いのだけど。
「あ、お姉ちゃん、見てみてこのお面! なんかかっこよくない?」
「ルラ、あんたって娘は…… とは言え、なにこれ?」
見ればオーガやイリカさんが山のように積まれた品々に飛びついて喜んでいる。
「すごい! これって古代魔法王国より前のマジックアイテム!? エンチャントの技術が確立する前にはルーン文字を直接アイテムに刻んでその力を行使していた!?」
『あんれまぁ、こげな鉈見たことなかだよ』
『長老さ、それ鉈でね、刀だがや』
『あんれま、鎧もたくさんあるっぺ』
山と積まれたそれらは武具一式やいろいろなマジックアイテムだった。
しかも私でもわかるほどなんかやばそうなものまである。
「ねぇねぇお姉ちゃん、これかぶって悪いやつやっつけたらヒーローっぽくない?」
「いや、ルラそれって多分マジックアイテムでしょ? イリカさんの言っていたルーン何とかって文字がびっしり書かれてるわよ?」
なんかやたらとお面が気に入ったルラはそれを掲げて喜んでいる。
しかしマジックアイテムとか言うのはその使い道が分からないと何となく怖い。
「すんばらすぅぃいいいいいいぃぃっ!! まさしくここは宝の山! これを研究するのにどれだけ時間がかかるか分からない程!!」
『これさ狩りするとき便利でねか?』
『ほうだな、こっちの鎧の兜も鍋に使うにちょうどいい大きさずら』
『これこれ、勝手に持って行ったらどれがどれか分かんなくなるっけ、もってぐのは手前からにしよっけな』
オーガたちも手にその道具や武具を取って喜んでいる。
「あの、皆さんそれよりも目的のひょうたんを探さないと!!」
「『『『あ”っ!』』』」
見かねて私がそう言うと見事にみんなの声がハモる。
この人たち当初の目的忘れてるな……
私はため息をついてからお面で遊んでいるルラも引っ張ってこの中からひょうたんを探し始めるのだった。
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