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第九章:道に迷う
9-8村の封印
しおりを挟む村の結界の封印が不幸にも壊されると、しばらくしてこの地に地鳴りが始まった。
「な、何ですかこれ?」
「なんかゴゴゴゴゴぉ~って言ってる!!」
ものすごい揺れという訳ではないけど地面が揺らいでいる。
この世界で地震って感じた事が無い。
だからこの地鳴りも地震ではないだろう。
そしてイリカさんを見るとやはり動揺している。
「分かりません、こんなの初めて。まさか結界が壊れたから?」
イリカさんはそう言って青ざめる。
不注意で村の結界を壊した張本人なのだから。
しかしいくら結界が壊れたとしても地鳴りがおこるってあるのだろうか?
私は不安がっているイリカさんに言う。
「とにかく長老さんに聞きに行った方が良いのでは?」
「そうですね、行きましょう!!」
私は長老さんなら何か知っているかもしれないと思い、そう提案する。
イリカさんもすぐにそれに同意して私たちは長老さんの家に向かうのだった。
* * *
「あんれまぁ、エルフの嬢ちゃんにイリカでねか、どったん?」
「あ、お婆さん! 長老さんは何処ですか? この地鳴りってなんだかわかりますか??」
慌てて長老さんの家に来たけど姿が見えない。
仕方なく家の中を探していたらお婆さんがいたので長老さんが何処か聞いてみる。
「あんれま、あの人さ畑で問題さあった言うて村のんと行ったがに」
「ええぇとぉ……」
やっぱり分かり辛いコモン語だった。
なんか用があって出かけてるっぽいのは分かる。
でも正確には何言ってるか理解できていない。
するとそんな私の様子を見てイリカさんが言う。
「どうやら畑に行っているみたいですね、村の人と」
「イリカさん、分かるんですか!?」
「伊達にここに住んでませんよ。長老は畑ですね、行ってみましょう」
ナイス、イリカさん!
イリカさんに説明してもらい何を言っていたか理解した私はお婆さんに言う。
「お婆さん、長老さんの所へ行きますね!」
「ほうかい? んだば気ぃ付けてな」
私はそう言ってお婆さんに畑行くと伝えて急いでイリカさんについて畑へ向かうのだった。
* * *
村の畑は北側の森がぽっかりと開けた場所にあった。
そこは結界内なのだろう、普通の畑だった。
まさしくほのぼのとした田園風景。
しかしそこにあろうはずの無い者がいた。
私は思わずそれに声を上げる。
「何あの化け物、魔物!?」
「お姉ちゃん下がって!!」
「あ、あれはオーガ!? なんで村の中に!?」
到着した畑の真ん中に化け物が立っていた。
屈強そうな身体に人の倍近くあるのではないだろうかと言う程の巨体。
申し訳程度に腰に布らしきものを巻いている。
そして肌は赤茶色く、いかつい顔には角が生えている。
イリカさんがオーガと言った。
あれが鬼。
確かに鬼そのものだった。
そんな化け物を見ていたらルラが叫ぶ。
「お姉ちゃんあそこ! 長老さんが!!」
ルはそう言って駆けだす。
「あたしは『最強』!!」
「長老さん!!」
まずい、オーガの陰に隠れて発見が遅れたけどそこには間違いなく長老さんの姿があった。
もし伝承の通りであればオーガは狂暴で場合によっては人の肉も食べる。
長老さんのようなご老体なんか一発でやられてしまう。
このままでは!!
『あんれぇ、ずいぶんめんこい娘っ子だなや。長老、あれが言っとったエルフの娘っ子かえ?』
「ほうさな、うちさ泊めてんだ。それよりお前さんちぃと見んね間にえらい体さおっきくなったすな?」
ルラはチートスキル「最強」を使って長老さんを助け出そうとしたら長老さんはほのぼのとそのオーガと話をしている。
『なんさ言うがね? おらぁ今までどおりっぺ? おんや、服破れとんけね??』
「あれ?」
ルラは拳をそのオーガに叩き込もうとして止める。
そして更に驚くことが目の前で起こった。
みし、みしみしみしみし!
びりびりびりっ!
むきむきむき……
「え? あ、あれぇっ!?」
ルラが素っ頓狂な声を上げる。
でもそれは誰だって目の前でそうなれば同じだろう。
「ちょ、長老さんがオーガになっていく!?」
「ちょ、長老!?」
それは正しく変身と言ってもいいだろう。
長老さんはその体を膨らませ、衣服を破りながらオーガの姿になってゆく。
『あんれぇ? 何ぞ体さおっきくなっでねか?』
『んだよ、長老さまるでオーガみたいだなや!』
いやいや、オーガになってんのよ!
いったいこれってどう言う事!?
その光景に私もルラもそしてイリカさんも驚愕するのだった。
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