上 下
151 / 437
第八章:ドドスでのエルフ料理?

8-14秘密結社ジュメル

しおりを挟む

 バーグさんと言う神官の口から出た衝撃の言葉に思わず固まる私とルラ。
 エルフの村でも顔見知りのジッタさんと言うエルフの人が殺された?



「ちょっと待ってください、なんでジッタさんが殺されるんですか!?」


 私は思わずバーグさんに詰め寄る。

「そうだよ、なんでジッタさんが!!」

 ルラもそのあまりの事に同じくバーグさんに詰め寄った。


「まあ落ち着いてくれ。順に話す。まずあんたらエルフの姉妹が特殊な力を持っているってのはジュメルの情報から知った。シェル様の事もあるからあんたらエルフにはそう言う特殊なのが稀に生まれるのだろうくらいに思っていたら、あんたらの力は女神様にも匹敵するって事らしいじゃないか?」

 そう言って煙草を灰皿に押し付けて三本目の火を消す。
 私とルラは言われた内容に思わず黙り込んでしまう。

「でだ、俺らの女神信教も西の大陸の聖地ユーベルトとそれ程交流がある訳じゃなくてな、世界的に信仰をされている女神様だがその組織力はまちまちさ。唯一その力が世界規模で及んでいるのがあのシーナ商会。俺らとシーナ商会はここドドスで手を組んだって訳さ。だからシェル様がここドドスへ女神様をお連れした。おかげでここドドスは数年に一度女神様にお会いできる場所として大いに発展をしたのだがな」

 言いながら四本目の煙草を取り出しくわえるけど火は付けない。


「おかげで俺みたいな雑用係も必要になったって訳さ。だからいろいろと情報が入ってくるって訳だ」


「……ドドスの女神信教とシーナ商会が繋がっていると言うのは理解しました。そしてその組織力で私たちの事を知ったと言うのも。でもジッタさんが殺されたって言うのはどう言う事ですか?」

「それはあんたらエルフが特殊な魂を持っているからさ。もうわかっているだろう? ジッタと言うエルフがどうやって殺されたか?」

 そう言いながら火の付いていない煙草をぐしゃっと灰皿に押し込む。
 それはこの疲れた様子の神官が一瞬見せた感情だったのかもしれない。


「『賢者の石』ですか…… アンダリヤの作っていた『賢者の石』にジッタさんは魂を取られたって言うんですか?」

「ご名答だ。まさかエルフが標的になるとは思ってもみなかったがな。もともとここドドスでは女性ばかりが失踪していたと言う事件があったんだが、ジッタが殺されてからは失踪事件も無くなった。そしてあの店が出来た」

 つまり私たちがもっと早くドドスに来ていればジッタさんは死なずに済んだかもしれないと言う事だ。


「ジュメル!!」


 ルラはそう言ってこぶしを握って立ち上がる。
 そして私を見て言う。


「お姉ちゃん、ジュメルの連中をやっつけに行こう! 許せない、ジッタさんを!!」

「ルラ、落ち着きなさい。多分ジッタさんを殺したのはアンダリヤよ。あの『賢者の石』を作るのにジッタさんは犠牲になった。そしてその後また『賢者の石』を作ろうとして私たちに壊滅させられた。そして『鉄板亭』の強襲時にアンダリヤは言っていた、他の支部から応援を呼んだって。だから今はここドドスには奴らの拠点がないかもしれないわ……」


 実際あの豊胸の店の地下施設もなにも私たちによって壊滅した。
 他にアジトみたいなのがあるかどうかは分からないけど「鉄板亭」に乗り込んできた時点では戦力がほとんど無く他の支部から支援を受けていたみたいだった。


「あんたの言う通り今はジュメルの連中の拠点はこのドドスには無くなった。しかし連中は叩いても叩いてもまた湧いて出て来る。全く余計な雑用ばかり増やしてくれる」

 バーグさんはそう言って懐から封筒を取り出す。

「これはあんたらに持って行ってもらいたい、ジッタと言うエルフの遺髪だ。既に精霊都市ユグリアのフィナス市長には連絡を取っている」


「ファイナス市長? ファイナス長老と連絡が取れるんですか!?」


 バーグさんの言ったそれは連絡のつけようがなかったファイナス長老と連絡が取れると言う事であった。

 私やルラはまだまだ未熟でエルフのネットワーク、風の精霊によるメッセージの送信も受信も出来ない。
 人の街などでもエルフ族に対して風のメッセンジャーは設置されておらずやはり連絡の取りようがなかった。

 しかしここドドスでは精霊都市ユグリアとの連絡が取れると言う事らしい。
 そして思い出すのが精霊都市の市長はエルフの長老の一人、ファイナス長老がやっていたと言う事を!


「ファイナス長老に連絡が取れる……」


 それはカリナさんたちから離れ私とルラの二人だけでエルフの村へ向かう心細さに一筋の光が差し込んだ気がした。


「あの御仁もあんたらの事は気にしていたが、今回のジッタの件で少し考えが変わったようだな。悪いがあんたらの力については暴露させてもらった」

「えっ!?」

「ばくろって、秘密の力の事教えちゃったの!?」


 バーグさんのその言葉に私もルラも驚きを隠せなかった。
 エルフの村ではこの力は絶対に秘密にしようとしていた。
 そしてカリナさんからもそうする方が良いと言われた。

 だからカリナさんもこの力については秘密としていたのに……


「あんたらの力は特殊過ぎるんだよ、ジュメルの連中が目をつけるほどにな……」




 そう言いながら又たばこを取り出し今度は火を付けるバーグさんだったのだ。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜

真田音夢李
恋愛
『やぁ‥君の人生はどうだった?』86歳で俺は死んだ。幸せな人生だと思っていた。 死んだ世界に三途の川はなく、俺の前に現れたのは金髪野郎だった。もちろん幸せだった!悔いはない!けれど、金髪野郎は俺に言った。『お前は何も覚えていない。よかったな?幸せだ。』 何言ってんだ?覚えてない?何のこと?だから幸せだったとでも?死ぬ前の俺の人生には一体何が起こってた!?俺は誰かも分からない人物の願いによってその人生を幸せに全うしたと? 一体誰が?『まさに幸せな男よ、拍手してやろう』そう言って薄ら笑いを浮かべてマジで拍手してくるこの金髪野郎は一体なんなんだ!?そして、奴は言う。ある人物の名前を。その名を聞いた途端に 俺の目から流れ落ちる涙。分からないのに悲しみだけが込み上げる。俺の幸せを願った人は誰!? 分からないまま、目覚めると銀髪に暁色の瞳をもった人間に転生していた!けれど、金髪野郎の記憶はある!なのに、聞いた名前を思い出せない!!俺は第二の人生はテオドールという名の赤ん坊だった。此処は帝国アレキサンドライト。母親しか見当たらなかったが、どうやら俺は皇太子の子供らしい。城下街で決して裕福ではないが綺麗な母を持ち、まさに人知れず産まれた王子と生まれ変わっていた。まさか小説のテンプレ?身分差によって生まれた隠された王子?おいおい、俺はそんなのどうでもいい!一体誰を忘れてるんだ?そして7歳になった誕生日になった夜。夢でついに記憶の欠片が・・・。 『そんな都合が言い訳ないだろう?』 またこいつかよ!!お前誰だよ!俺は前世の記憶を取り戻したいんだよ!

初恋に敗れた花魁、遊廓一の遊び人の深愛に溺れる

湊未来
恋愛
ここは、吉原遊郭。男に一夜の夢を売るところ。今宵も、一人の花魁が、仲見世通りを練り歩く。 その名を『雛菊』と言う。 遊女でありながら、客と『情』を交わすことなく高級遊女『花魁』にまでのぼりつめた稀な女に、今宵も見物人は沸く。しかし、そんな歓声とは裏腹に雛菊の心は沈んでいた。 『明日、あちきは身請けされる』 情を売らない花魁『雛菊』×吉原一の遊び人『宗介』 華やかな吉原遊郭で繰り広げられる和風シンデレラストーリー。果たして、雛菊は情を売らずに、宗介の魔の手から逃れられるのか? 絢爛豪華な廓ものがたり、始まりでありんす R18には※をつけます。 一部、流血シーンがあります。苦手な方はご自衛ください。 時代考証や廓言葉等、曖昧な点も多々あるかと思います。耐えられない方は、そっとブラウザバックを。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...