150 / 437
第八章:ドドスでのエルフ料理?
8-13狙われるエルフの姉妹
しおりを挟む私とルラは広場の向こうにそびえたつ女神信教の神殿へと向かっていた。
「お姉ちゃん、神殿に行ってどうするの?」
「あのバーグって神官のメモ、エルフの姉妹って私たちの事よ? 神殿で詳しく話をしてくれるって言うのなら早めに行った方が良いじゃない」
ご丁寧にジュメルの名前まで出しているのだ、いろいろと知っているのだろう。
たぶん、あの豊胸のお店を壊滅させたのが私たちだって言う事も知っているだろう。
まったく、どうしてこうもいろいろと面倒事があちらからやって来るのだろうか。
「ジュメルが私たちを探しているって言うのは気になるわね?」
「悪の組織がとうとうあたしを正義の味方と認め排除に出たんだよ!」
うん、確かにルラ相手に暴力沙汰では敵わないだろう。
何せルラのチートスキル「最強」は多分黒龍事コクさんでも敵わないだろう。
それだけの力を持つ私たちを探しているってのは一体どう言う事だか。
そんな事を思いながら広場を過ぎ、神殿に入ってゆく。
ここドドスの女神神殿はこの街の領主のお城より大きい。
まるで神殿ではなくお城みたいな門をくぐり中に入ってゆくと礼拝堂になっていた。
礼拝堂は天上がもの凄く高く、上の方がかすんで見えるほどだ。
様々な装飾品は品があり、何処か神聖な感じもする。
所々椅子に座って信者らしき人がお祈りを捧げている。
祭壇の奥にはこめかみの横にトゲのような三つづつの癖っ気があるエルハイミさんの大人バージョンっぽい神像が祀られ、背中に羽が生えて後輪があり、愁いを持った表情で両の手を開き私たちを迎えている。
「お姉ちゃん、エルハイミさんって言うよりコクさんそっくりだね?」
「うん、まあ女神様としてみんなの前に出る時は大人の姿になっているって言ってたもんね。しかしうらやましいわねあのスタイル……」
エルフの村で会った時は同じくらいの年頃に見えたけど、やたらと可愛いうえに胸だって同世代では大きい方だった。
あれでエルフで無く人間族って言うのだから反則だと思う。
とは言え、女神様だって言われれば納得するしかないけど。
「珍しいですね、エルフの方がお見えになるとは」
礼拝堂の中に圧倒されながら神像を見ていたら神官さんに声をかけられた。
「あ、ども」
「こんにちは。あのこちらにバーグさんと言う神官さんいますか?」
声をかけられたので挨拶しながら目的の人物について聞いてみる。
するとその神官さんは頷き言う。
「バーグさんに御用ですか。呼びますのでどうぞこちらへ」
そう言って私とルラを礼拝堂の横の扉へと呼び込む。
私とルラは大人しくそれについて行き応接間のような場所へ通される。
「今呼んでまいりますのでこちらでしばしお待ちください」
そう言ってその神官さんは出て行ってしまった。
残された私とルラはとりあえず備え付けのソファーに腰を下ろす。
「さてと、一応シェルさんの知り合いって言ってるから変な事にはならないと思うけど注意はしなきゃな」
「そうなの、お姉ちゃん?」
きょとんと首をかしげるルラだけど、バーグと言う神官はジュメルの存在を知っていてあの身のこなし。
ただの神官じゃないだろう。
流石にこの一年色々あったから私にだってその位は分かるようにはなって来た。
「早速の訪問、感謝するぞ」
私がそんな事を考えていたら扉の開ける音すらさせずいきなりその声は後ろからかかって来た。
内心驚いてはいるけどなるべく顔に出さないように振り返るとあの疲れた顔をしたバーグと名乗った神官が立っていた。
「いきなり声をかけて来るとは、女性に嫌われますよ?」
「なに、もともと女性には人気が無いからな。それに俺なんかよりあんたらのシェル様の方がよっぽどたちが悪い。いきなり目の前に現れるんだからな」
そう言って苦笑を浮かべる。
そして私たちの前にまで来てソファーに腰掛ける。
「さてと、単刀直入に言う。あんたら姉妹が普通のエルフじゃないってのは調べがついている。そしてあんたらのその特殊な力についてもだ。で、秘密結社ジュメルだがあんたらを探している。そしてあんたらを自分たちに取り込んで洗脳でも何でもしてでも女神様に対抗する戦力にするつもりだ」
懐から煙草を引っ張り出し火を付けながら一気にそう言う。
そして上を向いてふぅ~っと煙を吐く。
「そこまで分かっているんですか。で、バーグさんはそれだけを伝えるつもりだったんですか?」
「勿論それだけじゃないさ。ジッタと言うエルフは知っているか?」
「ジッタさん? 狩りが上手だったあのジッタさん?」
出てきたその名は懐かしい名前だった。
エルフの村でよく話しかけて来てくれたエルフの狩人。
特にルラなんかはジッタさんが狩りで狩って来た動物たちがあると大喜びでお父さんに配給のお肉をもらいに行こうとか言っていた。
「ジッタさんがどうしたって言うの?」
ルラはやはり聞き慣れた名前があったのでジッタさんについて聞いてみる。
「彼は死んだよ。ここドドスでジュメルに殺された」
「「!?」」
あまりにも唐突でそして衝撃的な言葉だった。
ジッタさんが殺された?
しかもジュメルに??
「い、一体どう言う事ですか!?」
思わず声を荒げてしまう。
「彼はエルフの村からあんたらを迎えに来ていたんだ。そしてシーナ商会とうちの神殿に顔を出してあんたらの事について情報収集していたんだ。そんな折、ジュメルに目をつけられたって事さ」
そう言いながら目の前の神官は三本目の煙草に火を付けるのだった。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。
広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ!
待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの?
「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」
国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる