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第八章:ドドスでのエルフ料理?
8-10なんで私が
しおりを挟む秘密結社ジュメルのアンダリヤの襲撃でここ「鉄板亭」は食堂業務が当分出来そうもない。
本当はアンダリヤが悪いのに何故かみんな私に詰め寄って来た。
おかげで店が直るまでいろいろと手伝いをさせられる羽目になってしまったのだが……
「不幸中の幸いでクレープ焼き台と冷やし台は無事だったわ。なのでお持ち帰り業務をします!」
メリーサさんはそう言ってめちゃくちゃになっている厨房でクレープ焼き台と冷やし台をドンとテーブルに置く。
「ええぇとぉ、それでここで作れと?」
「ウスターさんが屋台を作ってくれることになったの。勿論お代はクレープで。だからどんどん働いてどんどん儲けなきゃだめなのよ!!」
ぐっとこぶしを握るメリーサさん。
屋台店でクレープ売りの仕事をさせられるとは思わなかった。
「それでお店の前でやるんですか?」
「それがウスターさんの話だとお店の前に材料とか置くから屋台は別の場所でやってくれって話なのよ」
ここじゃない場所で屋台を開かなきゃいけないのか……
そうするとそこそこ人通りがあってお客が付きやす場所で……
「じゃあさ、神殿の前でやればいいじゃん? 銭湯もあるから女のお客さんにも目に付くよ?」
ルラは瓦礫の中から道具を拾いながらそう言う。
確かに神殿の前は広場にもなってるし、人通りも多い。
そして豊胸のお店が無くなった事によりまた銭湯への女性客も増えている。
「確かに悪くないわね。それじゃあ早速お役所に行って許可を取って来るね。リルちゃんとルラちゃんは道具の発掘をしていてね」
メリーサさんはそう言いながらお役所に許可を取りに行くのだった。
* * * * *
「あの、ここで出店の申請が取れてクレープ焼いて稼ごうと言うのは分かるんですけど、何故『エルフ料理のクレープ』なんですか?」
出店の垂れ幕には何故か「エルフ料理のクレープ」とか言う見出しでデカデカと宣伝されていた。
クレープは決してエルフ料理ではない。
ましてやこんなおいしいものと故郷のあの素朴過ぎる食べ物たちを比較するのは流石に悪い気がする。
だってお菓子と言ってもエルフの郷土料理はどんぐりの実を潰して蜂蜜と混ぜたクッキーが唯一お菓子っぽい食べ物だと言うのに。
クレープのような女子御用達の品物なんてエルフの村には絶対に無い。
無いったら無いのである。
「いい事リルちゃん、客寄せにはインパクトが必要なのよ。リルちゃんはエルフ、そのリルちゃんが作った料理。それつまりエルフ料理よ! 噓は言ってないわ、嘘はっ!」
「いや、それでも普通はエルフの郷土料理か何かと間違えるんじゃ……」
私がそう言うとメリーサさんは親指を立てて言い切る。
「それは受け取り側の人の自由よ!」
それって詐欺なんじゃ……
私がそう懸念していると早速お客さんが来る。
しかも女性客。
「へぇ~、エルフ料理だって。面白そうね、このクレープって何?」
「はいはいいらっしゃいませ~。パンケーキの薄皮に森の果物と生クリームを包んだ一品ですよ! 是非ご賞味あれ!!」
とてもいい笑顔でそう言い切るメリーサさん。
すると女性客は試しにとイチゴ味のクレープを注文してくる。
私はため息を吐きながら注文のあったイチゴクレープを焼き始める。
クレープ焼き台に魔力を与えて生地の元をお玉で載せて竹とんぼみたいのでくるりと引き伸ばし、すぐにへらで剥ぎ取り裏返す。
それをまたすぐに剥ぎ取り半分に折ってイチゴジャム、生クリーム、小さく切った果物を乗せて包んで紙でくるくると。
「はい、イチゴクレープです」
お客さんに渡しながらそう言うとお客さんは驚き私を見る。
「本当にエルフの人だ! それじゃこれって間違いなくエルフの料理なのね?」
「あ、ええとぉ……」
「そうですよ、ご覧の通りエルフのリルちゃんが今目の前で作った正真正銘のエルフ料理です。ささ、どうぞどうぞ」
私が何か話そうとする前にメリーサさんはお客さんに勝手に誤解しやすい説明をしてお代をもらう。
「毎度ありぃ~」
営業スマイルでお礼をいながら次にやってくるお客さんの接待を始める。
そしてどう言う訳か「エルフ料理」と題したせいかどんどんと女性客が寄って来る。
「はい、はい、イチゴとバナナに桃ですね? 少々お待ちください!」
次々に注文が入ってくる。
私はルラと一緒にせっせとクレープを焼いて行くけど、これって「鉄板亭」で出している以上に売れているのでは?
「なにこれ! 美味しい!!」
「ほんと甘くてふわふわ~」
「このパンケーキを薄く焼いたのももちもちしっとりと美味しいわぁ~」
「エルフってこんなおいしいもの食べていたんだ!?」
そしてやはり女子には分かるこのおいしさ。
最初のお客さんから徐々に増えて行って気付けば行列が出来始めていた。
「うはぁっ! 凄いお客さん、リルちゃんどんどん作って行ってね!!」
「作るのは良いですけど後五つくらいで材料なくなりますって!!」
「お姉ちゃんここまでで材料終わり、後イチゴだけ!!」
なにがどう言う事か分からないけどもう材料が無くなってしまう。
メリーサさんは並んでいたお客さんに平謝りしながら今日の分は売り切れだと伝える。
お客さんも残念そうにしてはいるけど、まさかここまで短時間で売り切れるとは思わなかった。
「凄いよリルちゃん! 明日は仕込みもっと増やそう!!」
「それは良いんですけど、これ焼くの結構疲れるんですよ~」
「大丈夫、お店が直るまでだって!」
「う”っ!」
笑顔でそう言うメリーサさんに思わずうなる私。
なんで私がこんな苦労を……
今はもいなくなったアンダリヤを心底恨めしく思う私だった。
* * * * *
かぽーん
「ふわぁ~いいお湯~」
「お姉茶の風呂出たらフルーツ牛乳ね!」
「ルラちゃん、その前に私たちは『育乳の女神様式マッサージ』よ!! 何としても豊胸のあのお店の時以上に大きくするんだから!!」
仕事終わりに道具は片付けて広場の片隅に置いておいた。
メリーサさんの話では許可は取ってあるから通行の妨げにならなければ問題無いらしい。
なので目の前に銭湯があるので入ってから帰る事にする。
一応は労働した後なのでお風呂がとても気持ちいい。
湯船に手足を伸ばしながらう~んと伸びてみる。
と、時間的にお風呂からあがってマッサージ受けた後だと夕食の時間位になる。
私は湯船に一緒につかっている二人に聞いてみる。
「そう言えば晩御飯どうしよう?」
「まだ厨房も使えないから帰りに外で食べて行こうか?」
「あたしお肉!」
湯船につかりながら晩御飯をどうするか聞いてみると外食してから帰ろうと言う事になった。
まあたまには外で食事して帰るのも良いか。
私たちはお風呂上りに外で食事してから帰る事にするのだった。
……ちゃんと「育乳の女神様式マッサージ」は受けたよ?
それはそれは気持ちよかっ…… おほんっ。
効果が出る感じだったのは言っておきましょう。
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