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第六章:ドドス共和国
6-8天候の塔
しおりを挟むネッドさんが調べた古代魔法王国時代の天候を操る魔道具がこのユエバの街近くにあるらしい。
ネッドさんの話では現存するかどうかわからないけど魔力さえあれば今の時代でも稼働は出来るらしいとの事。
なのでもっと詳しい情報とか無いかどうか確認に冒険者ギルドに来ていた。
「古代魔法王国時代の遺跡だと? このユエバの街の近くにはそれこそごまんとあるぞ?」
もともと世界最大の迷宮も近いせいもありこの辺は古い遺跡が多いらしい。
まだ手付かずの所もあるらしいのだけど逆にどんな魔法の罠が有るか分からないのでよほど注意しないと命を落とすとか。
なので通常は開拓済みの迷宮とか遺跡に有る鉱石やそこに自生する薬草、どう言う訳か常に発生する魔物たちを倒してその素材を手に入れるとかが多いらしい。
「とは言え、目ぼしいのくらい分からないの? 古代魔法王国で天候を操る塔なんてそんなに多くは無いと思うけど?」
カリナさんにそう言われカーネルさんはしばし思案顔をして資料を引っ張り出す。
「今まででギルドに報告の有った遺跡の情報だ。その形状、内容、捜索の結果が書かれている。こいつを貸すから調べてみてくれ」
「ん、ありがと。とにかく一刻も早くこの問題を解決しなければ食糧問題どころか洪水でユエバの街も危なくなってくるわ」
カリナさんはその資料を受け取りながらカーネルさんにお礼を言う。
しかしカーネルさんは口元に手を組んでしばしカリナさんを見てから言う。
「何が起こっている?」
「流石にそれは分からないわよ。誰かが何かの目的でやっているのか、何かの拍子にその魔道具が暴走しているのか。ただ、今までに無かった事よ? 十分に気をつける方が良いわね」
そう言いながらカリナさんは資料をネッドさんに渡す。
「これで伝承や記録と照らし合わせそれらしい遺跡を特定します」
「うん、お願いね。とにかくカーネルも気をつけてね。悪意が何を考えているかなんて善人には分からないモノよ」
「確かに、な」
カーネルさんはそれだけ言うとふと思い出したかのように言う。
「カリナ、今回はまだ街からの依頼は無いからギルドでは依頼料なんぞ出んぞ?」
「分かってるって、その代わり魔道具は高く買ってよね?」
それを聞いてカーネルさんは苦笑を浮かべる。
手を振って「分かった分かった」とだけ言うけど、カリナさん抜け目ないわね。
私たちは受け取った資料を持ってトーイさんたちと合流するのだった。
* * * * *
「ありました。ここから二日くらい西に行った岩山の近くに天候を操る為に古代魔法王国の遺跡があるらしいです。ただ、この遺跡は途中までしか探索をされておらず危険度はかなり高いようですね」
「途中までしか探索されていない?」
ネッドさんは資料と今まで調べていた伝承や記録と照らし合わせそれらしい遺跡を選出していた。
しかしギルドの資料にはその遺跡の探索記録は途中で終わっているらしく、危険度が高いとか。
「なあネッド、なんで途中で探索が終わってんだ?」
「資料によると七百年くらい前にその遺跡を見つけた冒険者たちがいたそうですが、パーティーのほとんどが遺跡で罠やそれを守るゴーレムにやられているようですね。その後も腕に覚えのある冒険者たちが何度か挑戦しているようですが、魔法の罠やゴーレムにことごとく撃退されているそうです。今ではあまりに危険なので誰も近づかなくなっているようです」
ザラスさんの質問にネッドさんはギルドの資料を読んでそう言う。
「と言う事は、その遺跡を探索すればまだお宝があるかもしれないって事か?」
「しかも天候を操る魔道具とかもあるかもしれないしな」
トーイさんとザラスさんは顔を見合わせにっと笑う。
こう言う所は冒険者っ気が強いんだよなぁ。
「でもその記録からするとかなり危ない場所のようね? 私もこんな話聞いた事が無かったわ」
「多分、天候などと言うかなり重要な事を操作する魔道具です、古代魔法王国時代のセキュリティーが生き残っているのかもしれません。となれば相手は古代魔法王国そのものです」
ネッドさんはそう言って資料の本を閉じる。
「とにかく分かったわ。準備が整い次第出発するわよ!」
カリナさんのその一言で私たちは立ち上がるのだった。
* * * * *
「う~、このフード動きずらい~」
「仕方ないわよ、この雨なんだもん」
私たちは準備を整えユエバの街を後にしていた。
今回は私とルラもカリナさんたちについて来る事を許可された。
と言うか、道中の食事当番だったり途中に現れる強い魔物はルラのチートスキル「最強」でサクッと片付けていたりと何となくカリナさんたちが楽しているような気がして来た。
「いやぁ~リルとルラには期待してるわよぉ~。遺跡に行ったら魔法の罠も消し去ってね♡」
「カリナさん、最初からそれが狙いなんですね……」
「だって、ガチンコしそうなゴーレム何て相手するのは嫌よ? その辺はルラにお願いするから今までの魔物同様サクッとやっつけちゃってね」
「うん、あたし頑張る!」
ルラは秘密の力であるチートスキルを存分に使えて、今まで戦った事の無い魔物たちと戦うのが楽しいらしい。
まったく、この子と来たら。
私はため息をつくけどここまで来たのだ、この問題はきっちりと片付けたい。
「どうやら見えてきたようですね。あの岩山のふもとにその遺跡は有ると書かれていました」
先を歩いていたネッドさんがおもむろに顔を上げ雨の降る中見えて来た岩山を見る。
あそこに古代魔法王国時代の遺跡があるんだ。
私たちはその岩山を見上げるのだった。
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