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第六章:ドドス共和国

6-6こんな時だからこそ

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「風の精霊や水の精霊が変な動きしてるのよ。本来はもっと流れが有って自由気ままに動いているはずなんだけど……」


 カリナさんはそう言って窓から空を見上げている。
 私も目に魔力を込めて空を見上げているとシルフやウンディーネたちがなんか空の上でぐるぐる回っている。

「見えましたけど、なんかぐるぐる回ってます?」

 通常がどうだかよくわからないけど今私が見ているそれは正しくぐるぐる上空で回っていた。
 カリナさんは唸りながら言う。

「ああいう風に風の精霊と水の精霊が入り乱れて回っているのは大抵が嵐の時や台風の時が多いのよ。でも今のこの動きはこの場から離れられない様に出口を探してぐるぐる回っている感じね?」

 一体どう言う事だろう?

「あ~、ほんとだ。風の精霊や水の精霊がぐるぐる回ってるねぇ~。あっ、あの風の精霊何かに弾かれて戻って来たみたい~」

 ルラも目に魔力を込めて空を見上げていたらしいけど、変な事を言う。
 しかしルラのその言葉にカリナさんは反応する。

「ルラ、何処?」

「うーんと、西の方かな? ほらみんながぐるぐる回っている所からはぐれた風の精霊がまた弾かれて元の所に戻っていくよ~」

 ルラがそう言うので私もカリナさんもそちらを見る。
 すると風の精霊一体がぐるぐる回っている所から離れ西の方に向かっていると見えない壁にでもぶつかったのかまたぐるぐる回る方へと引き返してゆく。


「ちょっと、何あれ? 精霊がこの場に閉じ込められているとでも言うの?」


「カリナ、どうしましたか?」

 カリナさんはそれを見ると驚きの声を上げる。
 そしてそんなカリナさんにネッドさんが気付き聞いてくる。

「風の精霊や水の精霊がこの街の上空でぐるぐる回っているのよ。しかもそこから離れられないでいる。まるでこの空間に閉じ込められているかのように!」

 それを聞きネッドさんも怪訝そうな顔をする。

「それって、精霊力がこの空間に閉じ込められているって事ですね? まるで古代魔法の天候を操る魔法みたいだ……」

「そんな魔法があるのか?」

「まさか、この長雨もそれなのか??」

 ネッドさんのその言葉にトーイさんもザラスさんも空を見上げる。
 
「もしそうだとすると何が目的? このユエバの街を洪水で流すつもり?」

「いえ、カリナ。あの魔法はここまで長く持続するには『賢者の石』でもない限り出来ないはずです。もしそれをするなら膨大な魔力が無ければ持続などできないはずです」

 ネッドさんはそう言ってやはり空を睨む。


「カーネルの所へ行くわよ!」


 カリナさんはそう言って立ち上がるのだった。


 * * * * *


「精霊たちがこのユエバの街の上空に閉じ込められているだと?」


 冒険者ギルドのギルドマスターの部屋に乗り込んだカリナさんはカーネルさんに精霊の事を話していた。

「普通じゃないわ。ネッドの話だと古代魔法に天候を操る魔術が有るらしいけど、もしかしたらどこかの古代遺跡に有るマジックアイテムの暴走かもしれないわ。情報が欲しい、とにかくこのままだとずっとユエバの街は雨が降ったままになるわ!」

 カリナさんのその言葉を聞き流石にカーネルさんは驚きカリナさんに念を押す。


「間違いなく精霊力が異常なんだな?」

「ええ、普通じゃあり得ないわ。それにここを離れようとした精霊たちが見えない壁で押し返されるのはこの子たちも見たわ」


 そう言って私とルラの方を見る。
 ギルドマスターカーネルさんは私とルラを見て頷く。

「エルフが三人もそれを見たなら間違いないだろうな。分かった、すぐに調べさせよう」

 そう言ってカーネルさんはギルド職員を呼ぶのだった。


 * * * * *


「カリナ、この後どうするつもりだ?」

 トーイさんはカリナさんに聞く。
 カリナさんはしばし考えこんでから私たちを見て言う。

「まずはギルドの情報を待つわ。もしこれが魔法か何かの暴走で起こっているならそれを食い止めなきゃいけないし、そうでなければこの状況を作り出している連中を止めないと」


「カリナ、これは人為的だと?」


「多分ね。目的が分からないけどこのユエバの街に害を成そうだなんていい度胸じゃない?」

 なんか目が座っている。
 かなりご立腹のご様子。


「でも一体どうやってこんな事が出来んだ?」

「分からないわよ、だから余計に苛立つっての!」


 ザラスさんは外の様子を見ながらそうつぶやくとカリナさんはより一層苛立つ。
 分からなくはないけど何か好い方法は無いのだろうか?

「リル、リルのスキルで上空の雨雲を消し去る事は出来ませんか?」

 しかしここでネッドさんが私にスキルで上空の雨雲を消せるかどうか聞いて来た。
 私はしばし上空を見てから手をかかげる。

「分かりませんけど、やってみます」

 あの濁流の水を消し去る事が出来たのだ。
 だからネッドさんの言う通りこの雨雲も消せるかもしれない。

 私は上空の雨雲を対象に設定する。
 そしてそれはすぐに頭の中に最終判断の確認を思い浮かべさせる。


「出来る、見たいですね……」

「やはりそうですか。ではリル、雨雲を消し去ってください」


 ネッドさんにそう言われ私は消し去ることに了承をする。
 そして声高々にスキルを発動させる。


「雨雲を『消し去る』!」


 私がスキルを発動させるとすぐに上空の雨雲は無くなって青空が見える。


「おおぉっ! 雨雲まで消し去ったか!」

「すげえな、リル!」


「いや、待って。なんか精霊力が……」


 上空を見上げていたみんなが喜んでいるとカリナさんはすぐに異変に気付いたようだ。
 それはまたすぐに何処からともなく雲を発生させすぐに上空を分厚い灰色で埋め尽くしまた雨が降り出す。


「なんだこりゃ?」

「雨雲がまた現れた?」


「やっぱり、風の精霊も水の精霊も消え去らずまだこの上でぐるぐる回っているわ!」


 私も魔力を目に込めて上空を見るとカリナさんの言う通り精霊たちがぐるぐると回っていた。


「リル、それでは今度はその精霊たちを束縛する力を消し去ってみてください」

「束縛する力?」


 ネッドさんは今度は雨雲では無くその力を消し去ってみろと言う。
 なるほど、雨雲自体が何かで作り上げたのではなく精霊たちを閉じ込めること自体が問題でそれを消し去るという訳か。


「分かりました、やってみます!」



 私はまた手をかざしチートスキル「消し去る」を使うのだった。

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