82 / 437
第五章:足止め
5-8古代遺跡
しおりを挟む「こんな所に遺跡だなんてね~」
カリナさんはそう言って生い茂る蔓を退けて遺跡の入り口に立つ。
そして何かに気付く。
「ん? この遺跡、人の出入りが有ったみたいね……」
そう言って蔓の様子を見ながらしゃがんで地面を見る。
そして私たちに言う。
「葉っぱが誰かに踏まれた跡があるわ。それもまだ新しい。しかし、こんな分かりにくい動きをするってなんかおかしいわね?」
そう言うカリナさんが見ている地面を見ても何が違うかわからない。
私は首をかしげてカリナさんに聞く。
「何が違うのか全く分かりませんけど……」
するとカリナさんは呆れた顔で私を見る。
「エルフなのにこれくらいの事分からないの? もしかしてリルたちってまだ弓矢や狩りの仕方教えてもらってないの?」
「うっ、まだ教えてもらってません。精霊魔法だってまだ早いってお母さんも教えてくれないし……」
「え? じゃあ、あの精霊魔法て誰に教わったの??」
「それはトランさんに……」
私がそう言うとカリナさんはもう一度まじまじと私を見る。
そして納得したように言う。
「若木にしてはあまりにもしっかりしているけどやっぱりまだまだ子供って事かぁ。そりゃそうか、十五歳じゃ普通は母親にべったりくっついている時期だもんね」
そう言って軽くため息を吐く。
うーん、確かにエルフの村ではもの凄い子ども扱いだったけど。
するとカリナさんはもう一度地面を見ながら指さし教えてくれる。
「いい事、森の中とかはその周辺の変化をしっかりと読み取る事。例えばど獲物の足跡なんかでもそうだけど草や葉っぱを踏んだ場合それらは折られてちぎれない限り元に戻ろうとするわ」
そう言って葉っぱを持ち上げる。
そして葉の裏を見せてくれる。
「でもダメージは残っているの。ほら、葉っぱの付け根が折れかかっているでしょう?」
「あっ」
「本当だぁ~」
葉の上からでは分かりづらいけど、裏から見るとその異変に気付く。
確かに葉っぱの根元が切れては無いけど折れている様だった。
「これが自己修復するのだけど、まだ新しい場合は完全に折れきれてない限り元に戻ろうとするの。ただ、この足跡の主は人ね。ほら……」
カリナさんはそう言って近くの枝で地面を軽くたたく。
するとふまれた葉っぱや草が人の足跡の形になる。
「これって人の足跡……」
「そう、踏まれた場所だけもう一度叩いてみるとその形が分かるでしょ? だけどこの足跡、普通の歩き方じゃないの。こう、つま先に重心がかかっているのよね……」
カリナさん言いながらいくつかの足跡を木の棒ではっきりと見えるようにすると、確かにどれもこれもつま先に重心が行っているようでそこだけ踏み込みが強い。
「単に蔓をよけようとしたからじゃないのですか?」
リュックスさんはそう言いながら遺跡の中を覗き込む。
「だとすれば普通は踵に重心がもっと行って邪魔な蔓を退けるでしょう? それにこの蔓も可能な限り傷つけないようにしている。まるでここに誰も入って来ていないかのように」
言いながらカリナさんはトーイさんやザラスさんに目配せをする。
するとトーイさんもザラスさんも短めのナイフを引っ張り出し蔓を切って入り口を広げる。
「とにかく中に入ってみましょう。この足跡、中に続いているわ」
そう言いながらカリナさんは光の精霊を呼び出す。
そしてその明かりを元に私たちは遺跡に入ってみるのだった。
* * * * *
「やっぱりね……」
カリナさんは遺跡に入ってしばらくすると壁や床、天井まで確認しながら歩いて行く。
そしてぽつりと言う。
「何か分かったのですか?」
私がそう聞くとカリナさんは手で何か合図をする。
それを見たトーイさんやザラスさんは静かに剣を引き抜き、ネッドさんも小声で何か呪文を唱え始める。
そしてカリナさんは無言で指だけこちらに向けて私やルラ、リュックスさんに近づくよう合図する。
何だろうと思ってカリナさんに私たちが近づいた時だった。
ガキーンっ!
きんっ、きんッ!!
「おっと!」
「ちっ!」
「【防壁魔法】!」
がきーんっ!
「何者よ!? いきなり襲ってくるとは!?」
カリナさんの前にいつの間にか現れたのはあの黒づくめだった。
カリナさんたちは襲われる事を予想していたかのような動きで飛んでくる短剣や襲い来るあの黒く塗りつぶされた剣を受け止める
しかしそれには毒が塗られているようで刃先がぬめぬめとしていた。
まずい!
私はすぐにこの周辺を範囲に設定して「毒」と「火薬」に関するモノを「消し去る」標準に設定する。
そしてチートスキル「消し去る」を発動させる。
「消し去る!!」
途端に私のチートスキルが発動してカリナさんと剣を交えていた黒ずくめの黒塗りの剣に付いた毒が消えさる。
「カリナさん、こいつらの毒を消し去りました!!」
「よしっ!」
カリナさんはそれを聞きつばぜり合いになっていた黒ずくめの剣を払い間合いを取る。
「よしっ! ルラ!!」
「うん、あたしは『最きょぅ……」
「我らにお任せをでござる!」
ばっ!!
カリナさんたちに加勢しようとしたら何処からともなく忍者装束のスキンヘッドのおっさん三人が飛び出て襲い来た黒づくめたちと剣を交えるのだった。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。
アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。
捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!!
承諾してしまった真名に
「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。
ハッピーエンドを待っている 〜転生したけど前世の記憶を思い出したい〜
真田音夢李
恋愛
『やぁ‥君の人生はどうだった?』86歳で俺は死んだ。幸せな人生だと思っていた。
死んだ世界に三途の川はなく、俺の前に現れたのは金髪野郎だった。もちろん幸せだった!悔いはない!けれど、金髪野郎は俺に言った。『お前は何も覚えていない。よかったな?幸せだ。』
何言ってんだ?覚えてない?何のこと?だから幸せだったとでも?死ぬ前の俺の人生には一体何が起こってた!?俺は誰かも分からない人物の願いによってその人生を幸せに全うしたと?
一体誰が?『まさに幸せな男よ、拍手してやろう』そう言って薄ら笑いを浮かべてマジで拍手してくるこの金髪野郎は一体なんなんだ!?そして、奴は言う。ある人物の名前を。その名を聞いた途端に
俺の目から流れ落ちる涙。分からないのに悲しみだけが込み上げる。俺の幸せを願った人は誰!?
分からないまま、目覚めると銀髪に暁色の瞳をもった人間に転生していた!けれど、金髪野郎の記憶はある!なのに、聞いた名前を思い出せない!!俺は第二の人生はテオドールという名の赤ん坊だった。此処は帝国アレキサンドライト。母親しか見当たらなかったが、どうやら俺は皇太子の子供らしい。城下街で決して裕福ではないが綺麗な母を持ち、まさに人知れず産まれた王子と生まれ変わっていた。まさか小説のテンプレ?身分差によって生まれた隠された王子?おいおい、俺はそんなのどうでもいい!一体誰を忘れてるんだ?そして7歳になった誕生日になった夜。夢でついに記憶の欠片が・・・。
『そんな都合が言い訳ないだろう?』
またこいつかよ!!お前誰だよ!俺は前世の記憶を取り戻したいんだよ!
初恋に敗れた花魁、遊廓一の遊び人の深愛に溺れる
湊未来
恋愛
ここは、吉原遊郭。男に一夜の夢を売るところ。今宵も、一人の花魁が、仲見世通りを練り歩く。
その名を『雛菊』と言う。
遊女でありながら、客と『情』を交わすことなく高級遊女『花魁』にまでのぼりつめた稀な女に、今宵も見物人は沸く。しかし、そんな歓声とは裏腹に雛菊の心は沈んでいた。
『明日、あちきは身請けされる』
情を売らない花魁『雛菊』×吉原一の遊び人『宗介』
華やかな吉原遊郭で繰り広げられる和風シンデレラストーリー。果たして、雛菊は情を売らずに、宗介の魔の手から逃れられるのか?
絢爛豪華な廓ものがたり、始まりでありんす
R18には※をつけます。
一部、流血シーンがあります。苦手な方はご自衛ください。
時代考証や廓言葉等、曖昧な点も多々あるかと思います。耐えられない方は、そっとブラウザバックを。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる