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第四章:帰還への旅
4-26ジマの国の料理
しおりを挟む私たちはコクさんたちの事はお任せしてユエバの町に戻る事にした。
しかしせっかくジマの国に来ているし、報酬もしっかりともらったのでこの国の料理を食べて行く事にした。
「さてと、事前に聞いておいた『ジマの国一亭』はっと……」
トーイさんは大通りを歩きながらきょろきょろとしている。
そして「ジマの国一亭」とか言うお店を探している。
「あの、なんでその『ジマの国一亭』ってのを探しているんですか?」
「ん? ああぁ、カリナがなぁ」
トーイさんはそう言いながらカリナさんを見る。
そして話を続ける。
「カリナがまずい店に連れて行くと暴れるんだよ。この私をこんな店に連れて来るなーっ! てな」
「なっ! 私は暴れないわよ、ただ同じお金を出すのならちゃんとした食事のできる店じゃなきゃ嫌なだけよ!!」
少し顔を赤くして文句を言うカリナさん。
うん、分かる。
私らエルフは村のマズ飯に散々悩まされ、外の世界である人間の街で美味しいものにありつく。
これほど至高な時は無い。
「お腹減ったぁ~、あたしお肉食べたい!」
そんな話をしているとルラがお腹を押さえながらそんな事を言う。
「だったら『ジマの国一亭』は良質の餌で育ったジマの国産の獅子牛が有名らしいぞ? 後なぁ……」
トーイさんはそういいながらいくつかの料理の話をしながら指を折る。
「勿論海の幸も新鮮なのを毎朝仕入れるらしいし、山の幸も毎日取り寄せているらしい。そこの店は素材にこだわっているらしいからな」
「一体何処でそんな情報を仕入れて来るんですか? 私たちも聞き込みで忙しかったというのに??」
ネッドさんは得意げに話すトーイさんに呆れてそういう。
しかしそれをルラがズバリとトーイさんの本心を言ってしまう。
「トーイさんってカリナさんが好きだからカリナさんが好きそうなお店探したんだよね~。さっき冒険者ギルド出る前にカウンターのお姉さんにお店のこと聞いてたもんねぇ~」
「な”っ! ル、ルラぁっ!! //////」
トーイさんは赤くなりながら拳を振り上げるもルラはさっとカリナさんの後ろに隠れる。
そしてカリナさんにじろりと睨まれると振り上げたこぶしを静々と下げる。
「まったく、トーイは小さい頃から…… でもまあ、ありがとね。美味しい店であることを期待しているわ」
カリナさんにそう言われトーさんはまんざらでもなさそうだった。
「あれが『ジマの国一亭』じゃないか?」
ザラスさんの指さすそこには「ジマの国一亭」と言う看板がぶら下がっていたのだった。
* * * * *
「うん! これも美味しいぃっ!!」
テーブルいっぱいにお料理を並べてそれをカリナさんはパクパクと食べながらご満悦だった。
確かに美味しい。
素朴な味付けだけど素材が新鮮でそしてその味を引き出すようなお料理。
感覚としては和食に近いかな?
焼き物も塩だけで炙り焼きにしたり、煮物もごちゃごちゃと食材を入れるのではなく味の相性の良いモノだけで煮込むとか、相当の腕の料理人だった。
「お姉ちゃん、この獅子牛の炙り焼きすごく美味しいよ!!」
「ルラ、あまりお肉とか魚ばかり食べるとまたお腹壊すわよ? 程々にしなさいね?」
お食事中なんだけど、私たちエルフは肉も魚も食べられる。
でも食べ過ぎると消化不良を起こしたりしてお腹を壊したりもする。
前にルラはお肉ばかり食べてお腹を壊し、何度もトイレと部屋を往復した事が有る。
赤竜亭の時は勝手がわかっているけど、ここでお腹なんか壊したら借りた部屋とトイレの往復で大変になる。
「分かってるよぉ~。 でもこれもの凄く美味しいんだもん!」
私もさっき食べたけど、確かに美味しかった。
獅子牛の脂がギュッと旨味を出し、表面をこんがりと焼いた香ばしさに程よい塩加減。
串焼きにしているから食べやすいし結構柔らかい。
まさに素材の味を十二分に引き出している。
私たちは出てくる料理を十二分に堪能した。
「ところでカリナ、本当にこのままユエバの町に帰るつもりか?」
酔いも回って来てトーイさんは本音でカリナさんに話を聞く。
カリナさんは果実酒を飲みながらピクリと眉毛を動かし、杯を置いてからため息を吐いて言う。
「はぁ~。あんたたちもそうか…… いい事、短い人生だから自分の命を大切にしなさい。私はあんたたちみたいな仲間をたくさん見て来た。でもね、冒険者は自分の命を最優先しなければすぐに死んでしまうわよ? 黒龍様の事は黒龍様たちに任せておけばいいの。あなたたちも見たでしょ? ミスリルゴーレムをいとも簡単に倒すクロエ様や竜の姿になって『鋼鉄の鎧騎士』をあっさりと倒すあの力を」
カリナさんにそう言われトーイさんは黙ってしまう。
しかしカリナさんは話しを続ける。
「昔、ユエバの町がホリゾン帝国に占領されそうになった時にエルハイミさんと黒龍様が助けてくれた。あの当時黒龍様は再生されたばかりでまだ幼い少女の姿だったのにエルハイミさん共々魔法騎士団をあっさりと撃退した。それだけ力のある黒龍様よ? 私たちが伝えた情報で十分に対応できるわよ」
過去にどんな事が有ったか知らないけど、カリナさんの話では情報さえ渡せば対応できると見込んでいるみたいだった。
「それにね……」
カリナさんは私とルラを見る。
「この二人をエルフの村にまで送ってゆく事は出来ないけど、キャラバンか何かの手配をして送ってあげなきゃだしね……」
「カリナさん……」
カリナさんは私たちを見てにこっとする。
やっぱりエルフって同族思いが強いんだなぁ。
ちょっとうれしいようなご迷惑かけっぱなしで気が引けるような……
「でもまあ、今日はとことん飲んで食べましょう! せっかくこんなおいしい料理とお酒なんだから!!」
そう言いながらカリナさんは私たちのコップにも果実酒を入れて来る。
そしてその場の雰囲気で私たちはまた乾杯を始めるのだった。
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