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第四章:帰還への旅
4-2イザンカ王国とドドス共和国
しおりを挟む魔物も無事撃退して私たちを乗せたキャラバンの荷馬車はゴトゴトと動き出す。
そんな中、私とルラはネコルさんにイザンカ王国とこれから向かうドドス共和国について話を聞く。
「イザンカ王国とドドス共和国は昔から仲が悪かったんだよ」
そう話し始めてくれたネコルさん。
イザンカ王国はレッドゲイルにいたから少しはその成り立ちや歴史は聞いていた。
しかしこれから向かうドドス共和国については何も知らない。
ネコルさんの話ではその昔イザンカ王国とドドス共和国は何度も戦争をしていたらしい。
しかしそれは相手国を攻め滅ぼすようなものでは無く小競り合いがほとんどだったらしい。
それにはイザンカ王国とドドス共和国の間にジマの国という極東の小さな国があり、その国とイザンカ王国は昔から同盟を組んでいてドドス共和国としてはそれが目の上のたん瘤で強くは出れないらしい。
しかしそんな小国がそれほどの影響力を持っているモノなのだろうか?
「あの、そのジマの国って何なんですか?」
「ジマの国は特別な国なんだよ。あの国に手を出そうという馬鹿はいないだろうね。何せあの国には黒龍様が付いておられる。女神様の僕で神殺しの太古の竜だと言われているからね」
それを聞いて私はある事を思い出していた。
確かシェルさんとレッドゲイルで喧嘩したって言うのは黒髪の少女だけどその正体が黒龍様だったって……
「あ~黒龍様ってレッドゲイルの『鋼鉄の鎧騎士』全滅させちゃったっていうあれ?」
「ほう、そっちの嬢ちゃんはあの惨劇を知っているのかい? あの時女神様が降臨なされなければレッドゲイルが壊滅していたと言われるあの惨劇を」
いや、レッドゲイルが壊滅って一体何やってんのよシェルさん!?
「それでその黒龍様というのはジマの国にいるんですか?」
「いや、ジマの国とイザンカの国境近くに有る世界最大の迷宮の最下層に住まわれていると言われている。ただジマの国はその黒龍様の血を引く者が王となっていると噂されているのでジマの国の守護者として黒龍様はおられるそうだ」
うーん、ジマの国って近寄らない方が良いような気がする。
何故かはわからないけど、そんな気がする。
もの凄くする。
「それで、ドドス共和国ってどんなところなの? あたしドワーフ見てみたい」
私がそんな事を思っているとルラはドドス共和国について聞く。
「そうだねぇ、共和国というだけあって小さな町や村、ドワーフ国を含めた集合国家と言う事になっているけどドドスの街以外に住んでるものは自分がドドスの国の人間とは思っていないのが多いね。だからこうして交易がかなり自由にできるんだよ」
共和国って言うからには確かに一つの大きな国って訳では無さそうだけど、そこに住んでいる住民がドドス国民という自覚がないなんてどう言う事?
私のそんな疑問にネコルさんは気付いたようで話を続けてくれる。
それは驚くようなものだった。
ドドス共和国を名乗っているのはドドスの街に有る公王を名乗る人たちだそうだ。
たまたまそこにドワーフ族が多くいて、たまたま近くの鉱山で質の良い鉱石が採取でき、たまたまそこへ女神教の「天界」に繋がる道があると言う事で自然と街は豊かになりそれを背景に自己防衛という名の下に軍隊を編成して力をつけてきたという事らしい。
そしてその公王ってのが歴代どうしようもない人たちばかりで過去にはジマの国にまでちょっかいを出した事もあるそうな。
その時にはさすがに黒龍様の怒りを買って攻めた軍隊が「鋼鉄の鎧騎士」共々あっさりと殲滅されたらしい。
「なんかとんでもないような国なんですね、ドドス共和国って……」
「ははは、だから大きな声では言えないが『愚者の国』とも呼ばれているんだよ。まあお陰でこうして商談にも行けるのは良いのだけどね。それとドドス共和国は南のサージム大陸との交易も有るからね、南の珍しい品物の入ってくるので余計にドドスの街は栄えてしまうのだけどね」
うーん、これが地の利ってやつなのかぁ。
交易の要って自然と人も物も集まるからなぁ。
昔学校の授業でもそんな事を言っていた気がする。
と、ルラは首をかしげながらネコルさんに聞く。
「でもレッドゲイルにはシーナ商会が有ったからいろいろなものが手に入るよね?」
「確かにシーナ商会は凄い。あの商会で手に入らないモノは無いと言われるほどだ。但し戦争の道具以外という事でだがね」
ネコルさんはそう言って腕を組んでため息をつく。
どうやらシーナ商会は生活必需品を中心に商売をしているので戦争に使えるものは扱わないらしい。
それは冒険者が使う武器からネコルさんが欲しがる防具なんかも含まれるのだとか。
だからネコルさんはわざわざ質のいいドワーフ族が作った防具を仕入れに行くために商談をしに行くのだとか。
このイージム大陸は人が生きてゆくには厳しい場所だ。
城壁の外には魔物、魔獣がうようよいる。
土地だって痩せていて作物だって沢山は取れない。
それでも人々は生きてゆくために最善を取る。
そんな事を思いながら私たちは更にネコルさんに話を聞かせてもらうのだった。
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