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第三章:新しい生活
3-21迷宮
しおりを挟む迷宮の入り口には封鎖のロープが張ってあった。
そして看板が掲げられて危険であり、冒険者ギルド権限で立ち入りを禁止していた。
「ここね……」
私はその入り口を見る。
古代魔法王国の遺跡が木々に埋もれ、土砂に埋もれ、迷宮の入り口だけがぽっかりと開いているような所。
何千年も前の遺跡との事だけど、隠し扉が見つかるまではたいした魔物も出ない初心者でも入れるような迷宮だったとか。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、私が先に入って罠を『消し去る』力で消すね。だからルラには魔物やトランさんの仇が出たら……」
そこまで行って私はトランさんに買ってもらった髪留めに指を触れる。
「ううぅん、トランさんの仇だけは私にもやらせて」
私がそう言うとルラは無言で首を縦に振る。
そして私が先頭になってロープを乗り越え迷宮に入ってゆくのだった。
* * *
迷宮の中は所々地面が出ているけどレンガや石畳で出来ている所が多かった。
エルフは夜目が効くので正直明かりが無くても大体見える。
遠くも良く見えるので直線の場所なんか曲がる所の壁まで見えるから明かりは付けない。
「すんすん、うーん、やっぱりかび臭いね。それになんか臭いし」
「うん、地面の下だから大地の精霊力は強いけど他はほとんどいないね……」
トランさんに習った精霊魔法。
使えば使う程精霊との関係も良くなってゆく。
シェルさんに言われた通り命令するのではなくお願いするように精霊を使うと、かなりの確率で協力してもらえる。
私たちはトランさんたちが探し出したと思われる隠し扉を探す。
「そうだ、ルラちょとまって。 大地の精霊よ、この迷宮の隠し扉の場所を教えて」
私が精霊魔法で大地の精霊を呼び出す。
すると地面がぼこっと隆起して人の姿になる。
大体十五センチくらいの泥人形、それは手ぶり身振りで向こうの方だと教えてくれる。
私は手のひらを大地の精霊ノームに向けて降ろす。
するとノームはひょこっと私の手のひらに乗って来て通路の奥を指さす。
「ルラ、大地の精霊ノームが隠し扉の場所を教えてくれる。行こう」
「うん、分かったお姉ちゃん!」
私たちはノームに導かれるまま迷宮の奥へと入ってゆくのだった。
* * *
どれ位進んだだろうか?
この迷宮どうやら建物の一部だったらしい。
それが地中に埋もれたようで迷宮と言うよりお城か何かの様な作りだった。
先に進むと大きな広間や小部屋、そして更に奥には上に行く階段なんかがあったけどそちらは崩れていけない。
しかし大広間の奥に地下に行く階段が有ってそこへノームは私たちを導く。
「昔の建物だったんだね。土に埋もれたのかな?」
「そうみたいね。でも地下にノームは行くように言ってるわ。ここまで魔物も何も出なかったけどこの先は要注意ね……」
普通の建物に罠なんかないから今まではすんなりと入ってこれた。
魔物が何処からかやってきて住み着かない限りこの辺は特に危険では無いのだろう。
ぼろぼろになったじゅうたんを見ながらかつては立派なところだったのだろうと思いながら地下へと続く階段を下りる。
するとそこはしっかりとした石造りの通路だった。
「いかにもって感じね…… ルラこの先は私のスキルを使いながら行くよ」
私はチートスキル「消し去る」で見える範囲の罠を常に消し去りながらら進む。
と、次の曲がり角を曲がったところで向こうに何かがいる?
「ルラ、何かいる!」
「やっとあたしの出番かな? 魔物だったら任せて!!」
ルラは私の前に出てそのうごめくモノと対峙する。
そしてそれはこちらに気付いたようでもぞもぞとこっちへやって来る。
「人の形をした木の人形?」
それはルラを見つけると腕を振って襲って来た。
「なんだかわからないけど、あたしは『最強』!!」
まるで呪文でも唱えるようにそう言ってルラも前に出ると木の人形の振り下ろす腕を簡単に片手で止める。
ぱしっ!
「必殺ぱーんち!!」
ばきっ!
パーンっ!!
振り下ろされた腕を片手で受け止めたままルラは拳を木の人形にぶち込む。
すると木の人形はバラバラになって飛散した。
「あ、あれ? なんか弱い……」
「この辺の魔物はまだ隠し扉の外だからそれほどでは無いのかもね…… この程度ならトランさんたちが後れを取るはず無いもの……」
トランさんたちはかなりの腕前を持つ冒険者って聞いていた。
レッドゲイルでも上級冒険者って。
それがあんな事になるのだ。
隠し扉の向こうはきっとかなり強敵な魔物がいるはず。
私たちは先を急ぐのだった。
* * * * *
「何ここ?」
「地下の洞窟みたいね…… でも所々人の手が加えられている」
さらに先を進むといくつかの部屋が有ってその奥にはさらに下へ行く階段があった。
何度か弱い魔物を撃破して私たちはその階段を降りるとそこは鍾乳洞の様な洞窟だった。
しかし所々に人の手が加えられ、先に進む事が出来る。
「自然に出来た迷宮って感じね。ノームはこの先だって言っているみたい」
手のひらの泥人形は奥へと指さす。
そちらを見るとキラキラした鉱石が壁に埋まっているのがちらほらと見えた。
そう言えばトランさんたちは鉱石を取り行くって言ってたな……
私たちはそのキラキラした鉱石を見ながら先を進む。
するとロックキャタピラーたちがいた。
「ルラ、あいつは確か酸性の毒を吐き出すわ! ここは私がやる!!」
言いながら私は手を向けチートスキル「消し去る」をロックキャタピラーたちに向ける。
「消えろ!」
私がそう言いながら力を使うとまるで最初からいなかったかのようにロックキャタピラーたちは消えてしまった。
そして何もいなくなったそこを私たちは通る。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「問題無い。でもこれでわかった、私のスキルでも魔物が確実に倒せる。倒せるんだ……」
心の奥底にいつの間にか燃え上がっていた恨みの炎に今はまだ気付かない私だった。
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