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第三章:新しい生活
3-6練習
しおりを挟む「よっと! 水の精霊よこの水をタルに運んで!」
ルラは精霊魔法を使って井戸のバケツから洗濯タルに水を運ぶ練習をしている。
あの後ここ「赤竜亭」でアルバイトをする事になったけど、忙しいのは夜の部なのでその時に手伝うと言う事になった。
なので午前中の時間があいた時は精霊魔法の練習とかコモン語の勉強とかをする事にした。
必要な物も午前中に買い出しに行くし、結構と時間的には良い感じでいろいろできるのでここ数日は充実した日々を過ごしている。
「うーん、ウンディーネってやっぱり女の人の姿なんだね。サラマンダーとかはトカゲの姿だったのに」
「お姉ちゃんウンディーネ見えるの? あたしまだぼんやりとしか見えないって言うのに~」
エルフ語で精霊にお願いをして魔力を渡す事もだんだんとうまくいくようになってきた。
そしてトランさんから習った目に魔力を流すと精霊たちの姿が見えるようにもなって来た。
だから洗濯がてらに練習を今しているのだけど、今度は私の番だ。
「水の精霊よ、このバケツの中の水を掻き回して」
私はルラが水を運んできたバケツの中に服とかを入れて水の精霊にお願いして中の水を掻き回す。
それは洗濯機みたいにぐるぐると回り始める。
「お姉ちゃん、石鹸入れる?」
「もう入れたよ、それに石鹸は高いから無駄遣いしないでね?」
この世界にも石鹸があった。
結構高級で生前のようには使えないけど、洗濯物や体を洗う時に石鹸水を作っておくと意外と節約しながら使える。
やっぱり女の子、汚れとか匂いとか気になるもんね~。
私たちエルフは森の香りがするってアスタリアちゃんは言っていた。
でもそれって汗臭いって事なのよね。
どうやら私たちの体臭は森の香りのようなんだけど、エルフの私たちにしてみればそれって匂いにもよるけど汗臭いって事になる。
口臭だって清々しい香りがするとか言ってるけど、ちゃんと歯を磨かないとだんだん笹の様な香りになって来る。
実はそれってかなり口臭が匂ってしまっている状態。
そんな事を思いながら人間からしてみれば臭いのではなく清々しいとかいい香りとかになるらしいのだけど、エルフ同士ではあまりに匂うと流石に嫌われる。
「お姉ちゃん、石鹸の香り好きだよね?」
「うん、あの花の香りが混ざっているのってすごく良いと思うんだけど?」
ルラも女の子になったから匂いには結構敏感だ。
やっぱり体が女の子だからそう言うのにも気を使うようになってきたのかな?
私は水の精霊がぐるぐると回してくれる服から泡が立ち始め、汚れを落としていくのを見ながらそんな事を思い出す。
そう言えばトランさんって香水付けてたなぁ。
香水。
うーん、私たちには早いかな?
でもトランさんも汗臭い女の子なんて嫌だろうしなぁ……
「ねえお姉ちゃん、これはどうするの?」
言いながらルラは私の下着を引っ張り出す。
両手に持って三角の端と端を持ってびよ~んと。
「ル、ルラ! 恥ずかしいから引っ張らない!」
「ん~でもお姉ちゃんていつも下着汚すからこの中だけじゃ奇麗にならないんでしょ?」
「ルラっ! 違うわよ! よ、余計な事言わない!!」
思い切り赤面しながらルラから私の下着を奪い返す。
汚れると言っても別にそんなに汚くなるって訳じゃない。
ただ、やっぱり下着は手洗いで奇麗にしておきたい。
ルラなんかは面倒がって服と一緒に洗っているけど、やっぱり下着だけは特別なの!
「ああ、いたいた。リルちゃんにルラちゃん。今時間ある?」
レナさんが洗濯している私たちのそばまで来た。
裏庭に有るここは結構皆さんが洗濯を干しているのでこうやって洗濯をしていて顔を合わす機会が多い。
「はい、どうしましたレナさん?」
「うん、実はお母さんがお店手伝う時の給仕服を準備したから袖を通して見て欲しいって言うのよ。ほら、私たちが着ているようなあの服ね」
私はレナさんがホールで注文を受けている時のあの服を思い出す。
ひらひらのリボンが結構多くついていて、可愛らしいエプロンをかけたあの服装。
少し気になるのは胸の大きいレナさんにはとても似合うのだけど、私たちのサイズではどうなのだろうか?
胸の大きさで言えば人間族のアスタリアちゃんも結構大きい。
「う~ん、裏方の私たちも着るんですか?」
「あれ聞いていないの? 今行われている『鋼鉄の鎧騎士祭』ってひと月近く行われるからその間お店もにぎわうし、シフト入れながらまかない飯食べたり休憩とかをしないときついからね。だからリルちゃんやルラちゃんにもホールに立ってもらうのよ」
あの、聞いてませんがそんな話。
てっきりお料理とお皿洗いがメインだとばかり思っていました。
「私たちに出来るでしょうか?」
「大丈夫だって、それより服の合わせしよっ!」
なんかものすごく楽しそうなレナさん。
洗濯物も大体終わったし、干してから私たちはレナさんにくっついて行くのだった。
* * *
「えーと、こんなのでいいんですか?」
「きゃーっ! やっぱりかわいいっ! ねね、お母さんそう思うでしょ?」
「確かに可愛らしいねぇ。これはリルとルラをお目当てにお店にくるお客も増えそうだね」
おかみさんはそう言いながらうんうんと頷いている。
確かにこの給仕服は可愛い。
はっきり言って前にテレビで見たアキハバラのメイド喫茶の服装に似ている。
……こっちの世界でもやっぱりこう言うのが流行っているのか?
いや、それを目当てにくるお客さんって……
「なんかひらひらぁ~。可愛い服だけどスカート短いね?」
「その方が私が萌えるの! いいわよぉ~ルラちゃんも可愛いわよぉ~!!」
なんかレナさんが興奮している。
確かに私とルラのスカートが短く感じるのは気のせいではないだろう。
「いきなり凄いね、リルちゃんとルラちゃんは…… 姉さん二人に絶対領域求めるなんてやり過ぎじゃないの?」
「何言ってんの! この膝上二十センチで二―ソックスとの間が七センチは譲れない仕様よ!? このくらいの歳の子にはこの絶対領域が一番可愛らしく見えるのよ!?」
「あの、姉さん私もリルちゃん、ルラちゃんと同じ年なんだけど……」
そう言えばアスタリアちゃんは膝下十センチになっている。
なんで私とルラだけ膝上二十センチなのだろうか?
「可愛いは正義なの!」
何故かぐっとこぶしを握り締めてレナさんは力説する。
まあ気を付ければ下着が見える事は無いだろうから良いかな?
現役女子高生であった私も当時は結構攻めた短さだった。
勿論ショーツは見せパンだけどね。
「それじゃぁホールでの仕事教えるからよく聞いていてね」
「はい」
「はーい」
私とルラはレナさんにホールでの仕事について教わるのだった。
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