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第二章フジヤマゲイシャスシテンプラハラキリデース!
2-6(月)調理実習デース
しおりを挟む「はぁぁああああぁぁぁぁんっ!」
ぼたっ!
どこかで牡丹の花が落ちるビジュアルが映っている‥‥‥
「ふっ、まだまだデース。由紀恵の行動パターンは把握したデース!」
深夜にリンダに豊胸マッサージをされ私はベッドではぁはぁと荒い息をついている。
満足げなリンダはすっとベッドから立ち上がり自分の部屋に戻っていく。
おのれリンダ!
襲われない様に目覚ましの時間まで変えていたと言うのにまさか寝静まった頃を襲ってくるなんて!
脱力した私はそのまま気を失って朝まで眠ってしまったのだった。
* * * * *
「ふぁぁああああぁぁぁ、昨日の夜はとんでもない目にあったわ」
あくびをしながら階段を降り、洗面所に行く。
するとお兄ちゃんが顔を洗い終わったところだった。
「おはよ、由紀恵。ちょうど空いたぞ」
「うん、おはよお兄ちゃん。ありがとね」
私はそう言って洗面所を使う。
ほどなく準備が終ってリビングに行くと既に準備が出来ていたリンダとお兄ちゃんが朝食を食べている。
「由紀恵! おはようデース!!」
「うっ、お、おはよう‥‥‥」
「あれ? 元気ないデース。今日は調理実習あるデースよ?」
そう言えば今日は家庭科の授業で調理実習が有るんだったっけ?
食材は昨日のうちに準備しているから大丈夫だったよね?
私は自分の朝食を取りながらリンダに聞く。
「そう言えばオーストラリアって学校で調理実習って有るの?」
「無いデース。だから今日は楽しみデース!!」
文化の違いかな?
私は何も考えずトーストを食べるのだった。
* * * * *
「え、えぇとぉ‥‥‥」
本日私たちのクラスは調理実習でお約束のクッキーを焼く事になっている。
そうなると当然朝からクラスの男子等はそわそわと。
しかし私の分はもう行き先が決まっていてる。
そう、お兄ちゃんに行くのだ。
だけど今私の目の前にある光景はなんと言ったらいいのか‥‥‥
「OH-! 上手く焼けませんデース!!」
いや、焼くと言ってもフライパンじゃ無理があるのじゃないだろうか?
その他にもカルシウムは必要とか言って生地に卵の殻そのまま入れたりバターは体に悪いからと言って勝手にごま油に変えたりと‥‥‥
リンダの出来上がったクッキーらしきものは既に一般的なそれでは無くモザイクが必要になりそうなものになっていた。
「うわぁ、リンダちゃん独創的~」
「いや、紫乃、これって独創的ってレベルじゃないわよ‥‥‥」
何処をどうやったらこんなものが生まれ出るのだろう?
そんな危険物をリンダはお皿に載せて私の目の前に持ってくる。
「出来たデース! 由紀恵味見するデース!」
「いや、それ食べたら死んじゃいそうだから嫌よ!」
「ポイズン?」
にこにこ顔のリンダ。
いやがる私。
それをなぜか羽交い絞めする紫乃。
「って、ちょっと紫乃、なんで羽交い絞めするの!?」
「いやほら、せっかくリンダちゃんが作ったわけだし~」
何それっ!?
裏切るの紫乃ってば!
慌てて周りを見るとなぜかみんなも視線を外す。
「大丈夫デース、食べれるもので作りましたデース!」
「いや、違うから! 食べ物にはそんな触手やカニの足みたいの飛び出てないからぁッ!!」
ぽいっ!
「ぐはぁっ!!!!」
なにこれっ!?
焦げた苦みに砂糖の焦げ付いた味が加わりそこへごま油の独特な風味が加わりじゃりじゃりと卵の殻が口の中を制覇していく。
私はその脳天に直撃する味覚に思わず気を失いそうになる。
「OH-! 由紀恵大丈夫そうデース! ではこれを友也にも食べさせるデース!」
「ううぅ、リ、リンダお兄ちゃんを殺す気?」
「何言ってるデース、女の子から手作りクッキーをもらうのはフラグデース! 友也フィーバーデース!!」
いや、無いから!
お兄ちゃんそんなの食べたらフィーバーじゃなくて爆死だから!!
何としても止めなければならない。
私は薄れゆく意識の中そう思うのだった。
* * * * *
「はっ!?」
「あ~由紀恵ちゃんやっと気が付いたぁ~」
私は気づくと本当に保健室のベッドの上にいた。
状況的に本当にリンダのクッキーのせいで気を失っていた?
「紫乃っ! リンダは!? あの凶悪なクッキーはっ!?」
「あ~、リンダちゃんなら友ちゃんの所へ行ったよ~」
本気でお兄ちゃんに食べさせるつもり!?
ダメだって、あれは食べ物じゃないわ!!
「紫乃急いでお兄ちゃんの所へ行くわよ!!」
私は慌てて起き上がりお兄ちゃんのいる教室へと向かうのだった。
* * *
「お兄ちゃん! リンダ!!」
「OH-! 由紀恵復活デース!」
「あれ? どうした由紀恵?」
見れば正にリンダがお兄ちゃんにクッキーの包みを渡そうとしている所だった。
「おにいちゃん、それ食べちゃダメぇ! 危険物よ!」
「はぁ? 何言ってるんだ由紀恵?」
「とにかくダメぇっ!」
私はリンダの手からそれを奪い取ろうとする。
しかしリンダはそれを阻止しようともする。
「OH-! 由紀恵駄目デース! これはデース!!」
「良いからこっちによこしなさい! そんなのお兄ちゃんに食べさせるわけにはいかないわよ!!」
「でもデース!」
廊下で取り合いになったそのクッキーの包みを私とリンダがもめているとポーンと飛んで行ってしまった。
ぽん。
それは見事にお兄ちゃんの手のひらに落ちる。
「だめっ! お兄ちゃん!!」
「由紀恵の方が駄目デース! 友也、食べるデース!!」
リンダはあたしを羽交い絞めにする。
お兄ちゃんはそん私たちを横目に袋を開ける。
そして中身をそのまま口に入れる。
うわっ!
間に合わなかったか!?
「もごもご‥‥‥ うん、美味しいじゃないか?」
「へっ?」
お兄ちゃんはまた袋からクッキーを出して食べる。
「うん、上手にできてるじゃないか? 美味しいよ」
なっ!?
そんな馬鹿な!!!?
あんな危険なものをお兄ちゃんは平然と食べている!?
「そんな、お兄ちゃん大丈夫なの!?」
「もごもご、ごくん。 なんで? 美味しいじゃないか、由紀恵が作ったクッキー」
「はぁ?」
私はお兄ちゃんがまた取り出したクッキーを見る。
それはちゃんと焼き上がっている普通のクッキー。
「だから言ったデース」
状況が理解できず私はぱちくりと瞬きする。
一体どう言う事?
リンダのクッキーが私のクッキー?
「あ~、リンダちゃん由紀恵ちゃんにちゃんと言ってあげないと分からないよぉ~」
「え、え? どう言う事リンダ?」
「由紀恵、友也にクッキー食べさせたがってましたデース。だから私のクッキーと由紀恵のクッキー持ってきたデース。両方渡そうとしたら剛志が欲しがるので仕方なく私のクッキーあげたデース」
リンダはそう言ってにっこりと笑う。
と言う事は、これは私が焼いたクッキー?
そしてよくよく見ればお兄ちゃんお後ろで泡を吹いて倒れている下僕その一‥‥‥
「うん、美味しかった。由紀恵は将来良いお嫁さんになれるな」
お兄ちゃんはそう言ってポンと私の頭に手を載せる。
「ううぅ、お兄ちゃんのバカぁ////」
思わずにやけてしまう私。
「料理実習面白かったデース! 今度は由紀恵の家でやるデース!」
「いや、それはやめて!」
思わず反応する私にけらけらと笑うリンダであった。
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