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10.涙と展開

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「平太。嫌だったら殴って。」

「へ..............?」


1人へらへらしてたら聞こえてきた言葉。
頭の上にはてなマークを飛ばしながら前を向くと、真剣な顔をした梓が目に入った。その梓の顔がだんだん近づいてくる。



え、え、え、え、き、きす........?


『キスされるかもしれない』と思ったらもう頭はパニックだ。とりあえずぎゅうっと目を瞑ってその時を待つ。












........................でもいっこうにその時はこない。


不思議に思って目を開けると、目の前に梓の顔があった。


内心パニックの俺に梓は




「.........止めないんだ。」




とだけ。














......................は?


え、なに、からかわれた?『好き』の意味を確認されただけ?ただ............それだけなの?




普段の俺ならここですぐ殴ってた。「ふざけんな!!!!」って。「していい事とダメなことがあるだろ!!!!!!」って。






でも今の俺は内心めちゃくちゃ期待した、馬鹿で愚かで平凡な、ただの男子高校生でして。





ツゥ.................



嗚咽すらでない、静かな涙。


ただただ、悲しくて、哀しくて、残念で。


キスしたかった、されたかったうんぬんではなく、『好きな人に感情を弄ばれた』ことに。大事で大切な、あたたかいものに、いきなりナイフを突き立てられたかのような痛みを感じた。




滂沱の涙を流す俺に、梓は慌てて「ご、ごめん!!!!ち、違うんだ、泣かないで............!!!」って言っているけど、俺には全然響かない。俺の心は血を流しているんだから。














「き、キスは!!!!!!」


しばらくそのまま泣いていると、焦りすぎたのか梓は随分と大きな声を出した。流石に俺も驚いて梓に意識を向ける。


「き、キスは............俺達の、はじめてのキスは............両思いになってからしたくて....................」

「.......................は?」

「だっ、だって平太が好きって、好きって初めて言ってくれたけど........どうせ友達の好きでしょって.................俺の好きはこんなにドロドロしてるのにって................だから、そんな嬉しそうに好きなんて言ってくれるなって、勘違いするぞって、思って............」

「.......................」

「泣かせる気なんて、なかったんだよ、平太.....................」

「梓って............」


梓の言っていること、俺まだ4割くらいしかわかってないけど。でも。もしかして、もしかしたら....................


「梓の好きって、ちゅーしたいの好き?」

「ンッグッフッ! ........もちろん。」

「................................................................................................ねぇ、ごめん流せなかった今の何?????」


いやちょっと、今超いい雰囲気だったしめちゃくちゃ本心聞きたいけど流石に流せなかった「ンッグッフッ!」って何???


「い、いや、ちょ、『ちゅー』って........いや、本当『ちゅー』ってかわいすぎ............あ゛ぁ゛あ!!平太可愛いすぎる!!!!!!!俺最初から言ってたじゃん!『俺の運命、大好き、愛してる。』って!!!!」

「だ、だって!!!ペットかぬいぐるみみたいな扱いかと思って................」

「なんでだよ!!!!!恋人みたいに大事にしてたじゃん!!!!!もはや恋人だと思って接してたのに!!!」

「梓が、あ、飽きたら............それでおしまいなんだろうなって、思って........」

「はあ゛????????」


ビクッ!!!


「え、あ、梓............?」


い、今のいい雰囲気は幻だったのか?????何今の声....どこから出てるの........?超びっくりしたんだけど........


「平太に『飽きる』............?さすがにそんなこと思う暇なんてないくらい可愛がってると思ってたけど................足りなかった................?不安にさせてたんだ............?ふーーーん........?」

「え、あ、え.........???」

「ふーー..........仕方ないね........。平太、今日はもう早退しよっか♡」




タンタンターンッとスマホで誰かに連絡をいれたかと思ったら、サッとまた姫抱っこされて、あれよあれよと知らない家に連れ込まれてた。






展開が............展開がはやい!!!!!












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