上 下
10 / 14

9.保健室と俺の悩み

しおりを挟む






目を瞑ったまま、梓の体温、匂いを堪能していると、


「平太、やっぱまだ調子悪いんでしょ。保健室行くよ。」


と梓に、座った形のまま、所謂お姫様抱っこの形で抱き上げられた。


「ちょ!?!待て待て待て待て!大丈夫だって!俺元気だし!ってか歩けるし!!」


慌ててそう言うけど、今度は梓に無視され、そのまま足早に保健室に連れていかれた。






保健室の扉には『今日先生は出張です☆何かあれば担任の先生に言ってね☆』の貼り紙。


その紙も無視して保健室に入る梓。
そして、ポスンッとベッドの上に降ろされた。


「だ、大丈夫だって、梓..........ね?」


そんなに心配させてしまったのか、確かにちょっと様子おかしくし過ぎたな、と反省していると、梓が俺と目線を合わせながら、そっと口を開く。


「平太、何悩んでるの?」

「へ?」

「元気なのはわかってる。体温もいつも通りだし。.........先週もなんか考えてるみたいだったけど、今日はもっと......................何を考えてるの、平太。」

「い、いや................」


言えない。言えるわけない。『本気であなたに惚れてしまいました。お願いだから俺に飽きないで。』なんて。


「........................俺には言えないのに、あの3人には言えるの?」


そりゃ本人には言えないでしょうよ。....................これも言えないけど。


「え、えと...........」

「そんなに俺って頼りない?平太の事、誰よりも好きなのに、平太は俺の事そんなに信用できない?」


誰よりも、だって。


「はは.............」


その好きは俺の好きとは違う癖に。


「何がおかしいの。」


ちょっと冷たい、拗ねたような、怒った声。


「ん~?だって、好きだって。」

「.........好きだよ。」

「ふふ、俺も好きだよ。」


この流れだったらネタとしていえる。そう思って、俺も『好き』を口にした。いざ言ってみると、スッキリするし、嬉しい。例え一方通行だったとしても、こんなに嬉しいんだ。


「へへ、好き。だいすき。」


1度口に出したら、吹っ切れたのか、1本切れたのか、なんだよくわかんないけど、次々に口から滑り落ちてく。


大丈夫、大丈夫。だって梓にそんな感情ないんだから。俺の『好き』だって、まさか恋愛の方だなんて考えもしないでしょう?









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

俺(受け)に容赦ないダーリンをどうにかしたい

丸井まー(旧:まー)
BL
受けに物理的に容赦ない攻めのちょっとしたお話。 超絶照れ屋な童貞攻め✕溺愛誘い受け。 ※ツイノベで書いたものです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

処理中です...