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「旦那様、行きたいです!是非!」

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いつものようにあんなに起こされて、いつものように一人で朝食を食べる。なのに今日はなぜか男の人の声がする。
「ソアラ、朝だぞ。朝ごはんを食べよう。」
「ん…?」
もうそんな時間なのか。そう思って眠い目をうっすら開けた。そこに飛び込んできたのは
「旦那様?!」
私の旦那で恋した相手だった。
そうだ、私昨日…
思い出してまた照れてしまう。
赤くなった顔を手で覆う私。
『愛してる。』
そう言ってくれた。
ずっとこれは叶わない恋なのだと思っていた。
まだ戸惑っているけど、これは現実なんだわ。
同じベットで寝て、起こしてもらった。
紛れもない事実で、それが同仕様もなく嬉しい。
顔を抑えて幸せそうに笑うソアラに彼は優しく笑いかけて、
「やっと目が覚めたのか?ほら、もう起きよう?」
そう言う。
す、素敵すぎるわ…
こんなに柔らかく笑う旦那さまは初めて見た。
「わかったわ。支度をするから先に行っててくださいますか?」
「わかった。」
部屋を去る旦那様。
そう思ったらドアの前で立ち止まった。
「?」
そしてソアラの方に戻ってくると、彼女のおでこにキスをした。
「愛しているよ。じゃ、また後でな。」
え?今、キスをされた?愛してるって…
やっと冷静になってきた頭がまたぐちゃぐちゃになった。


部屋を出た俺は口を手で抑えた。
びっくりしたような顔、可愛かったな…
アクアマリンのような水色の目が大きく見開かれる。
かわいい唇がぽかんと開く。
すべてが愛しくて仕方がない。
だから、俺は彼女を守りきる。
これから起こる波乱から。
彼は知っている。
今が嵐の前の静けさだということを。
あと少しでまた、のんびりしていられなくなることを。
そんなことを考えながら彼は朝食を取りに向かった。

最低限の支度をして、私はアンナと共に旦那様のまつ部屋へ向かう。
今日は水色の落ち着いたドレスだ。
髪はストレートにおろしている。
早く、行かなきゃ。
旦那様が待っているのだもの。

席にはもう旦那様がいて、私を見てにこっと笑って隣に来るよう促してくる。
隣に座っていいんだ。
隣に座れるのが嬉しい。
一緒に要られて嬉しい。
だから、旦那様から
「旅行に行こうと思うんだが、どうだろう?」
そう聞かれたときは本当に嬉しかった。
こんなのもう、即答よ即答。
「旦那様、行きたいです!是非!」
「そうか、じゃあ3日後に行こうかと思っている。近場だから準備できると思うんだが…」
その言葉にすかさずアンナが言った。
「大丈夫でございます。」
「アンナもそういうことですし、決まりですね!」
「ああ。それとソアラ、行き先は当日まで秘密だ。」
「楽しみです。」
幸せな気分でその日も次の日もその次の日もあっという間に終わってしまった。
今日は待ちに待った旅行の日だ。
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