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「旦那様、ずっとその言葉を待っていました。」
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「3日も?!」
確かに体がだるいとは思ったけど…まさか3日も寝ていただなんて。
「はい、本当に目覚められて良かったです。」
「心配かけたわね。」
「いえ。」
私はとても幸せだわ。私のことを気遣ってくれる使用人たち。最後に少しだけ近づけたかも、と思えた旦那様。離婚するけじめがつけられたかな。
これで後悔なく、旦那様とお別れができる…
ソアラの顔が曇ったのを見てアンナはなにか決心したようにこう言った。
「奥様、非常に差し出がましいとは思うのですが、ひとつよろしいですか?」
「もちろん、いいわよ。」
「これは旦那様にも言ったのですが、奥様一度旦那様と話し合ってみては?」
それを聞いたソアラはびっくりするような困ったような表情でこう言った。
「それができていれば今頃こんなじゃなかったわ。」
当たり前の話である。なにせ彼はこの屋敷にほとんど帰ってこなかったのだから。
「ですから奥様!今、今話し合うんですよ!」
名案と言わんばかりにアンナが言う。
「今更だと思わない?」
「あら?でも奥様。まだ離婚届は書いていないんですよね?」
「まあ、そうなんだけど。でもね…」
困ったように言うソアラにアンナは言う。
「奥様、旦那様の気持ち知りませんよね?離婚するならせめて、本当に旦那様が奥様のこと嫌いかどうかだけでも確認してからにしてはどうですか?」
なかなかのいいようである。
『嫌い』それを認めたくないソアラには随分と突き刺さる言葉である。
「ま、まぁ…そうね…わかったわ。後で声をかけてみるわね。」
にこっと笑ってソアラが答える。
アンナは嬉しそうに
「はい!」
と言った。
30分後
「はい、終わりましたよ!奥様!」
「ありがとう。」
身支度が終わり、部屋から出ようとしてはっとする。
「アンナ、今何時?」
「あ、いい忘れてましたね。今は午前10時ですね。朝食を取りに行きましょうか。」
朝食にしては少し遅いような気もするが…
『誤差』よね!
ソアラは意外と大雑把なのであった。
部屋にはすでに美味しそうな料理の数々。
そして…旦那様が座っていた。
「ソアラ!」
待ちわびていたかのように嬉しそうに自分を呼ぶ旦那様にソアラは呆然とした。
「旦那様?」
な、なんで旦那様がここにいるのでしょう?
というか私に笑いかけるとは一体何事?!
焦りまくるソアラ。
でも、喜んでいる自分がいるのも確かなのよね…
立ちすくむソアラに彼は言った。
「なんでそこで立ち止まるんだ?ほら、ここに座れ。」
ぽんぽんと叩いたその場所はなんと彼の隣の席だった。
「隣…ですか?」
「嫌か?」
で、出ました…いかにも悲しそうなその表情!
断れないじゃないですか…!!
「では、お言葉に甘えて。」
その席に座った。座ったまではいい。だが…
ここから私はどうすればいいの?!
困ったことに彼がソアラのことをじーっと見つめているのだ。
これでは緊張して何もできない。
と、とりあえず?とりあえず朝食を食べましょう。いそいそと用意された朝食を食べるソアラ。
当然会話はないわけで…
き、きまずい!!!
冷や汗だらだらである。
会話がなければ食べん以外にやることもないわけで、病み上がりのソアラのために少し少なめに用意された朝食はあっという間になくなってしまった。
これからどうしましょう。
『これは旦那様にも言ったのですが、奥様一度旦那様と話し合ってみては?』
ごくっ 生唾を飲み込んで私は意を決して口を開いた。
「「あ(そ)の!」」
か、かぶったー(泣)
「だ、旦那さまからどうぞ!!」
「いや、ソアラから!」
「いやいやいやいや…旦那様から。」
「だが…」
不毛な譲り合いの末に折れたのは旦那様の方であった。
「わかった…単刀直入に言おう。ソアラ、新しいドレスや宝石は欲しいかい?」
「え?」
あまりにもなんてことのない内容にぽかんとするソアラを見て彼は深い為息を吐いた。
「やっぱりか…まあ、ここまではわかっていたことではあるし…」
なにかぶつぶつといっているわ…
一体何なのかしら?
「それじゃあ、この前の告白は本当かい?」
「この前…」
はっとして旦那様をにらみつける…
わ、わたしになにをいわせようと…?!
だが、旦那様は思ったよりも真剣な表情で…
「本当、ですよ…?」
火照る顔を背けながらそう言った。
「そうか。」
そういったときの旦那様の嬉しそうな顔ときたら!私が更に赤面することになってしまった。
「ソアラ、私もあなたの事を愛している。」
追い打ちをかけるようにそう言われれば、もう心臓が持たない。
ばくばくとすごい速さで鼓動しているのがわかる。
熱が顔に集まって思わず手で顔を覆ってしまった。
だけど、私も言わなきゃ。
「旦那様、ずっとその言葉を待っていました。」
へにゃ、と笑って私はそう言った。
確かに体がだるいとは思ったけど…まさか3日も寝ていただなんて。
「はい、本当に目覚められて良かったです。」
「心配かけたわね。」
「いえ。」
私はとても幸せだわ。私のことを気遣ってくれる使用人たち。最後に少しだけ近づけたかも、と思えた旦那様。離婚するけじめがつけられたかな。
これで後悔なく、旦那様とお別れができる…
ソアラの顔が曇ったのを見てアンナはなにか決心したようにこう言った。
「奥様、非常に差し出がましいとは思うのですが、ひとつよろしいですか?」
「もちろん、いいわよ。」
「これは旦那様にも言ったのですが、奥様一度旦那様と話し合ってみては?」
それを聞いたソアラはびっくりするような困ったような表情でこう言った。
「それができていれば今頃こんなじゃなかったわ。」
当たり前の話である。なにせ彼はこの屋敷にほとんど帰ってこなかったのだから。
「ですから奥様!今、今話し合うんですよ!」
名案と言わんばかりにアンナが言う。
「今更だと思わない?」
「あら?でも奥様。まだ離婚届は書いていないんですよね?」
「まあ、そうなんだけど。でもね…」
困ったように言うソアラにアンナは言う。
「奥様、旦那様の気持ち知りませんよね?離婚するならせめて、本当に旦那様が奥様のこと嫌いかどうかだけでも確認してからにしてはどうですか?」
なかなかのいいようである。
『嫌い』それを認めたくないソアラには随分と突き刺さる言葉である。
「ま、まぁ…そうね…わかったわ。後で声をかけてみるわね。」
にこっと笑ってソアラが答える。
アンナは嬉しそうに
「はい!」
と言った。
30分後
「はい、終わりましたよ!奥様!」
「ありがとう。」
身支度が終わり、部屋から出ようとしてはっとする。
「アンナ、今何時?」
「あ、いい忘れてましたね。今は午前10時ですね。朝食を取りに行きましょうか。」
朝食にしては少し遅いような気もするが…
『誤差』よね!
ソアラは意外と大雑把なのであった。
部屋にはすでに美味しそうな料理の数々。
そして…旦那様が座っていた。
「ソアラ!」
待ちわびていたかのように嬉しそうに自分を呼ぶ旦那様にソアラは呆然とした。
「旦那様?」
な、なんで旦那様がここにいるのでしょう?
というか私に笑いかけるとは一体何事?!
焦りまくるソアラ。
でも、喜んでいる自分がいるのも確かなのよね…
立ちすくむソアラに彼は言った。
「なんでそこで立ち止まるんだ?ほら、ここに座れ。」
ぽんぽんと叩いたその場所はなんと彼の隣の席だった。
「隣…ですか?」
「嫌か?」
で、出ました…いかにも悲しそうなその表情!
断れないじゃないですか…!!
「では、お言葉に甘えて。」
その席に座った。座ったまではいい。だが…
ここから私はどうすればいいの?!
困ったことに彼がソアラのことをじーっと見つめているのだ。
これでは緊張して何もできない。
と、とりあえず?とりあえず朝食を食べましょう。いそいそと用意された朝食を食べるソアラ。
当然会話はないわけで…
き、きまずい!!!
冷や汗だらだらである。
会話がなければ食べん以外にやることもないわけで、病み上がりのソアラのために少し少なめに用意された朝食はあっという間になくなってしまった。
これからどうしましょう。
『これは旦那様にも言ったのですが、奥様一度旦那様と話し合ってみては?』
ごくっ 生唾を飲み込んで私は意を決して口を開いた。
「「あ(そ)の!」」
か、かぶったー(泣)
「だ、旦那さまからどうぞ!!」
「いや、ソアラから!」
「いやいやいやいや…旦那様から。」
「だが…」
不毛な譲り合いの末に折れたのは旦那様の方であった。
「わかった…単刀直入に言おう。ソアラ、新しいドレスや宝石は欲しいかい?」
「え?」
あまりにもなんてことのない内容にぽかんとするソアラを見て彼は深い為息を吐いた。
「やっぱりか…まあ、ここまではわかっていたことではあるし…」
なにかぶつぶつといっているわ…
一体何なのかしら?
「それじゃあ、この前の告白は本当かい?」
「この前…」
はっとして旦那様をにらみつける…
わ、わたしになにをいわせようと…?!
だが、旦那様は思ったよりも真剣な表情で…
「本当、ですよ…?」
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「そうか。」
そういったときの旦那様の嬉しそうな顔ときたら!私が更に赤面することになってしまった。
「ソアラ、私もあなたの事を愛している。」
追い打ちをかけるようにそう言われれば、もう心臓が持たない。
ばくばくとすごい速さで鼓動しているのがわかる。
熱が顔に集まって思わず手で顔を覆ってしまった。
だけど、私も言わなきゃ。
「旦那様、ずっとその言葉を待っていました。」
へにゃ、と笑って私はそう言った。
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