37 / 61
呼んでいる声がする(その37)カップラーメン
しおりを挟む
真っ白い雪の街は怪しい程綺麗で純粋でそして危険だった。
特にイエローハウスの急階段はイエローハウスの住人の獣道が作られていたので
手すりに捕まって上がって行く事が出来た。
しーんと辺りは静まっている。
蓮花は先に階段の上で待っていた。
蓮花は階段の上から瑠子のおぼつかない様子に心配そうに見守っていた。
「ああ、怖かった。」
そう瑠子が言うと蓮花が安堵した表情をした。
彼女は勇敢なんだなと瑠子は思った。
「あ、なんか誰のアパートかわからないよね。」
と、首をすくめて瑠子は言った。
蓮花には、コタツで眠ってもらおうと思った。
少しでも暖房費を削ろうと苦肉の策で、格安コタツを
買ったのが良かった。
「今は、夜だから真っ暗で見えないけれど、海が向こうに見えるんだ。」
そう言って瑠子は、蓮花を開いた窓辺に呼んだ。
にこにこして蓮花はそこに来たので二人で窓を開けて眺めた。
こんな暗い中でも雪は薄っすらと白く見える
蓮花は耐えず嬉しそうにしていた。
「いいな、私も一人暮らししたい。」
「出来るよ。私も始めは無理だと思ったけれど
飲まず食わずでね、お金を貯めたの。だから蓮花ちゃんも出来るよ。」
「飲ます食わず?」
「まあ、それはオーバーだけれど。」
蓮花は笑った。
「高校の時さ、先生が引っ越すには敷金礼金、そして引っ越し代、莫大なお金がかかるから無理だって言って、信じちゃってた。
けれどね、ある日、本気で出ようと思った時、本当に無理なのかなって疑問が湧いたの。
それで調べてみて、1年間節約して貯めれば何とかなるんじゃないかって思った。」
「それで?」
「いつも、お菓子とか本とか買って無くなっていたお金を家に渡す以外何も使わず、我慢した。でもそれって希望があったから。必ず一人暮らしするんだ。この家から出るんだってさ。」
「希望・・・・。」
「だから我慢できたの。ああ、だからこのイエローハウスに越せた時は本当に嬉しかった。」
その時
北風が二人の体を吹き付けた。
「さぶっ」
そう瑠子が言うと蓮花は笑った。
蓮花は、ずっとその晩笑っていた
瑠子は、二人分のカップラーメンを作ってる時も。
そしてそれを差し出した時も
蓮花は美味しいと何度も連呼した。
「ふふふ、ただのカップラーメンだよ。」
「あたしも、カップラーメンがこんなに美味しいなんて思って無かったです。」
そう蓮花が言った。
初めて会った時、暗い表情だった蓮花を思いだした。
それが、今はこんなに笑っている、それが瑠子には嬉しかった。
つづく
間が開いてすみません 読んでいただいてありがとうございます
特にイエローハウスの急階段はイエローハウスの住人の獣道が作られていたので
手すりに捕まって上がって行く事が出来た。
しーんと辺りは静まっている。
蓮花は先に階段の上で待っていた。
蓮花は階段の上から瑠子のおぼつかない様子に心配そうに見守っていた。
「ああ、怖かった。」
そう瑠子が言うと蓮花が安堵した表情をした。
彼女は勇敢なんだなと瑠子は思った。
「あ、なんか誰のアパートかわからないよね。」
と、首をすくめて瑠子は言った。
蓮花には、コタツで眠ってもらおうと思った。
少しでも暖房費を削ろうと苦肉の策で、格安コタツを
買ったのが良かった。
「今は、夜だから真っ暗で見えないけれど、海が向こうに見えるんだ。」
そう言って瑠子は、蓮花を開いた窓辺に呼んだ。
にこにこして蓮花はそこに来たので二人で窓を開けて眺めた。
こんな暗い中でも雪は薄っすらと白く見える
蓮花は耐えず嬉しそうにしていた。
「いいな、私も一人暮らししたい。」
「出来るよ。私も始めは無理だと思ったけれど
飲まず食わずでね、お金を貯めたの。だから蓮花ちゃんも出来るよ。」
「飲ます食わず?」
「まあ、それはオーバーだけれど。」
蓮花は笑った。
「高校の時さ、先生が引っ越すには敷金礼金、そして引っ越し代、莫大なお金がかかるから無理だって言って、信じちゃってた。
けれどね、ある日、本気で出ようと思った時、本当に無理なのかなって疑問が湧いたの。
それで調べてみて、1年間節約して貯めれば何とかなるんじゃないかって思った。」
「それで?」
「いつも、お菓子とか本とか買って無くなっていたお金を家に渡す以外何も使わず、我慢した。でもそれって希望があったから。必ず一人暮らしするんだ。この家から出るんだってさ。」
「希望・・・・。」
「だから我慢できたの。ああ、だからこのイエローハウスに越せた時は本当に嬉しかった。」
その時
北風が二人の体を吹き付けた。
「さぶっ」
そう瑠子が言うと蓮花は笑った。
蓮花は、ずっとその晩笑っていた
瑠子は、二人分のカップラーメンを作ってる時も。
そしてそれを差し出した時も
蓮花は美味しいと何度も連呼した。
「ふふふ、ただのカップラーメンだよ。」
「あたしも、カップラーメンがこんなに美味しいなんて思って無かったです。」
そう蓮花が言った。
初めて会った時、暗い表情だった蓮花を思いだした。
それが、今はこんなに笑っている、それが瑠子には嬉しかった。
つづく
間が開いてすみません 読んでいただいてありがとうございます
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる