呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その31)天使の秀子ちゃん

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 夕凪書店に行くと、またもや猫男がいた。

「昨日は、話聞いてくれてありがとう。」

「いいえ。」

 わざと冷たく言った、佐季店長の言葉がぐるぐる頭を廻ったからだ。

「猫のごはん、今日は俺がやるよ。」

「あ、ありがとう。」

 何でお礼を言うのだ私よと瑠子は反省した。

「猫の世話、これからも頑張ろうよ。」

 そう言うと笑った。

 一緒になんかやりませんと言おうとしたが

 昨夜の猫男の傷心した姿を思い出し飲み込んだ。

 きっとまだ、心に傷があってそれをばれまいと明るく振る舞っているに違いない。

 と思ったからだ。それなので頷いただけにした。

「今日は何読んでいるの?」

「色々。」

と、掴みかけた本の手を離した

「じゃあ、俺猫のご飯あげとくね。」

「ああ、うん。」

 猫男は、夕凪書店を出た。

それから1時間位立ち読みして、寒い中を帰った。

 その日は寂しい心持ちであった。一人暮らしが出来た高揚感に嬉しかったが昨日の蓮花と猫男の会話で、幼い頃の事が思いだされてしまったせいかもしれないと瑠子は思った。

心が孤独で覆われている気が瑠子はした。

そして、蓮花は大丈夫だろうかと涙が少しこぼれそうであった。

また、チョコレートをまりもで買おうと思った。

 一人暮らしが出来た高揚感に嬉しかったが蓮花と猫男との

会話で、幼い頃の事が思いだされてしまったせいか夜の闇がいつもより寒々しく感じた。

「チョコレートはあたしにとっての抗鬱剤かな。だとしたら安くて良いよね。」

と、瑠子は思った。

 まりもは、遠くから見るとほんのりと灯っていてオアシスの様に見える

「やあ、また来てくれたね、今日も秀子ちゃん居るよ。」

 店主は笑顔で言った。

 猫の秀子ちゃんは確かにレジの隣の椅子に座っていた。

そのちょっこりと座って自分を見ていてくれている。

そして今日もお菓子の売っている場所まで一緒について行ってくれた。

本当に頭が良いのだと瑠子は思い感激した。

「また来てね。」

 店主はニッコリほほ笑んで、秀子ちゃんもレジの隣の椅子の上で見送ってくれた。

店から出ると、北風は寒かったが、温かな気持ちになっていた。

 秀子ちゃんは、天使の様だと瑠子は思った。



つづく


いつも読んでいただいてありがとうございます。(猫ってかわいいですね)
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