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25 新生活の中で
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体調が完全に良くなったのは、孤児院で世話になり始めて二ヵ月も過ぎた頃だ。
その頃にはすっかり子供たちと仲良くなっていたわたしは、孤児院を離れがたくなっていた。それで神父様に頭を下げて頼み込み、恩返しのためだと孤児院で働かせてもらうもらうことにしたのである。もちろん、ほぼ無料奉仕で。
教会のすぐそばに建つ小さな家を購入して、そこから毎日孤児院に通うことにしたのだった。
働かせてもらうといっても、なにせわたしは元貴族のご令嬢。掃除も洗濯も料理もなにもできやしない。
最初の頃はシスターや子供たちに仕事を教えてもらうばかりだったが、少しずつ色々なことを覚えて行った。
今ではもうなんでもできるし、畑仕事を手伝うことも珍しくない。
とはいえ家事ができない間も、わたしは単なる役立たずだったわけではない。料理や掃除ができずとも、子供たちに勉強を教えることができたからだ。
子供たちが孤児院を出て仕事を見つける時のためにと、文字や算術を教えた。女の子には刺繍も指導したし、礼儀作法も覚えさせた。
この町に腰を据えて半年が過ぎる頃になると、わたしが孤児院で無料で勉強を教えているという噂は町中に広がっていた。それを聞きつけた一般家庭の子供たちまでが、自分たちも一緒に授業を受けたいと頼んでくるようになった。
もちろん、わたしはすべて引き受けた。
嬉しかったのは、一緒に勉強をすることで、一般家庭の子供たちと孤児院の子供たちが仲良くなったことだ。
わたしがこの町に来たばかりの頃は、孤児たちへの不当な差別やイジメがたくさんあった。けれど、最近はまったく見かけることがない。
子供たちが共に学び、笑いながら楽しそうに遊び、また、一緒に畑仕事をして汗を流しているところを見ると、嬉しくてジンと胸が熱くなる。
子供同士が仲良くなると、町の大人たちも孤児院に関心を持つようになった。
結果、院に対する寄付金が少しずつ増えていったし、成人して院を出る子供たちの就職先にも困らなくなった。
「クリステルさんが来てくたおかげで、子供たちの未来が明るくなりました。近頃は少し離れた町からも、子供たちの働き口の話がくるようになりましたしね。ここの子供たちは皆、あなたのおかげでとても優秀だから」
神父様からそう言ってもらえて嬉しいばかりだ。
今、わたしは町の人たちから「先生」と呼ばれて親しまれている。
おそらく皆、わたしが元貴族か裕福な商人の娘で、訳ありでこの町に逃げてきたと分かっているだろう。けれど、それを気にする素振りなく仲良くしてくれている。とても有難い。
わたしはもう貴族の令嬢ではない。肌は日に焼けて健康的な色になったし、手先は水仕事で荒れている。着る服は粗末なものだし、食事だって王都にいた頃に比べるとかなり質素だ。
それでも、わたしは幸せに暮らしている。
周囲の人たちが全力で支えてくれるおかげだ。
なによりの喜びは、この町で愛する人ができたことだ。
わたしはその人のことを大切に想っているし、誰よりも愛している。その人がいてくれるおかげで、お父様やお義兄様と離れて暮らす寂しさや辛さに耐えることができたのだと、断言できるほどだ。
今はその人と二人、わたしが買った小さな家で幸せに暮らしている。
その、愛する彼の名はユリウス。
三年前に生まれた、わたしとお義兄様と間にできた最愛の息子だ。
その頃にはすっかり子供たちと仲良くなっていたわたしは、孤児院を離れがたくなっていた。それで神父様に頭を下げて頼み込み、恩返しのためだと孤児院で働かせてもらうもらうことにしたのである。もちろん、ほぼ無料奉仕で。
教会のすぐそばに建つ小さな家を購入して、そこから毎日孤児院に通うことにしたのだった。
働かせてもらうといっても、なにせわたしは元貴族のご令嬢。掃除も洗濯も料理もなにもできやしない。
最初の頃はシスターや子供たちに仕事を教えてもらうばかりだったが、少しずつ色々なことを覚えて行った。
今ではもうなんでもできるし、畑仕事を手伝うことも珍しくない。
とはいえ家事ができない間も、わたしは単なる役立たずだったわけではない。料理や掃除ができずとも、子供たちに勉強を教えることができたからだ。
子供たちが孤児院を出て仕事を見つける時のためにと、文字や算術を教えた。女の子には刺繍も指導したし、礼儀作法も覚えさせた。
この町に腰を据えて半年が過ぎる頃になると、わたしが孤児院で無料で勉強を教えているという噂は町中に広がっていた。それを聞きつけた一般家庭の子供たちまでが、自分たちも一緒に授業を受けたいと頼んでくるようになった。
もちろん、わたしはすべて引き受けた。
嬉しかったのは、一緒に勉強をすることで、一般家庭の子供たちと孤児院の子供たちが仲良くなったことだ。
わたしがこの町に来たばかりの頃は、孤児たちへの不当な差別やイジメがたくさんあった。けれど、最近はまったく見かけることがない。
子供たちが共に学び、笑いながら楽しそうに遊び、また、一緒に畑仕事をして汗を流しているところを見ると、嬉しくてジンと胸が熱くなる。
子供同士が仲良くなると、町の大人たちも孤児院に関心を持つようになった。
結果、院に対する寄付金が少しずつ増えていったし、成人して院を出る子供たちの就職先にも困らなくなった。
「クリステルさんが来てくたおかげで、子供たちの未来が明るくなりました。近頃は少し離れた町からも、子供たちの働き口の話がくるようになりましたしね。ここの子供たちは皆、あなたのおかげでとても優秀だから」
神父様からそう言ってもらえて嬉しいばかりだ。
今、わたしは町の人たちから「先生」と呼ばれて親しまれている。
おそらく皆、わたしが元貴族か裕福な商人の娘で、訳ありでこの町に逃げてきたと分かっているだろう。けれど、それを気にする素振りなく仲良くしてくれている。とても有難い。
わたしはもう貴族の令嬢ではない。肌は日に焼けて健康的な色になったし、手先は水仕事で荒れている。着る服は粗末なものだし、食事だって王都にいた頃に比べるとかなり質素だ。
それでも、わたしは幸せに暮らしている。
周囲の人たちが全力で支えてくれるおかげだ。
なによりの喜びは、この町で愛する人ができたことだ。
わたしはその人のことを大切に想っているし、誰よりも愛している。その人がいてくれるおかげで、お父様やお義兄様と離れて暮らす寂しさや辛さに耐えることができたのだと、断言できるほどだ。
今はその人と二人、わたしが買った小さな家で幸せに暮らしている。
その、愛する彼の名はユリウス。
三年前に生まれた、わたしとお義兄様と間にできた最愛の息子だ。
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