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1章
12話
しおりを挟む「間違った対応?」
夜安の質問に、灯我は一度地面に置いた木の棒をもう一度手に取って、今まで書いた分類わけされたものたちを円で囲っていく。
「例えば百鬼系。これらは種族で、人に仇なす可能性が高いから即祓うのが基本。でも、逆に地獄とか天国にいる異界系の者たちは共存関係にある存在だ。だから、仲が悪くならないように見つけたら送り返すのが基本になってる。」
「へぇ…そ、それってさ…都市伝説とかをそのまま殺しちゃったらどうなるの…?」
少し冷や汗をかきながら、ちらちらと鏡のほうを見ながら灯我に問いかける夜安。それに少し不思議に思いながらも、質問に答えようとまた灯我は木の棒で書き足していく。
「都市伝説は噂を力の源にしてるからね。だから祓っても祓ってもきりがないんだよ。だから分散して器になってもらうのが一番楽なんだ。」
「じゃあ祓ったからって悪いことは…」
「面倒なだけで何も起きないよ。手を出すなって言われてるのは異界系だけだよ。」
よかったぁ、と小声でつぶやく。それは灯我には聞こえなかったようで、灯我はそのまま話を進めていく。今度円に囲んだのは呪物だった。
「最後に残ったのは呪物。これらはなんていうんだろ。そのまま能力に寄るんだよな。」
「能力?」
「俺ら祓い師には、個人個人に向き不向きの能力があるんだよ。」
そういって灯我は自分の懐から小さなお札を取り出す。そして聞き取れるか取れないかぐらいの小声で何かを唱えた後に、そのお札は小さな炎を上げて燃えていく。
「こんな感じに、俺は炎の適性が一番高い。ほかにも風と水とかあるんだけど、その二つはあんまり攻撃力もない。ほかの家にはその二つが強い奴もいる。一つの能力が強ければ強いほど相対的に他が弱くなるんだ。」
「じゃあ葉風は炎がめっちゃ強いってこと?」
「そうゆうこと。だからめちゃくちゃじいちゃんの期待がかかってるんだよな。」
疲れたように言う灯我はどこか遠い目をしている。やけに自分の戦い方にコンプレックスを持ってる灯我からしてみれば、祖父の期待は重たいものなのだろう。
気を取り直して、というかのように一息ついて、今度は真剣な表情を作る。
「で、説明に戻るけど、呪物は力づくなんだよな。自分の得意な属性の攻撃を最大限攻撃するのが条件なんだよ。」
「さっきまで結構専門って感じだったのに、最後だけは脳筋なんだね。」
「そうそう……ん?あ。」
「ん?」
しまった、というかのように灯我が表情を変える。それに合わせて夜安が素っ頓狂な声を上げた。そして、また枝を持ち上げて灯我は新しく絵を描きだした。その絵は幽霊だった。
「何これ?貞子?」
「と思ってくれて構わない。これが本当に最後、幽霊とかに分類される魂系の者たち。これに関しては悪い奴もいい奴もいるから、基本見つければ、地獄の者か天国の者に引き渡す。」
「悪霊とかは?」
「度が過ぎたら、除霊だよ。浄霊とは違って、完全に魂ごと消すことになるから転生も何もできないけどね。完全な消滅だよ。」
物騒な言葉に夜安の表情がこわばる。どうやら、消滅という言葉に重さを感じたらしい。空気がほんの少しだが強張って冷たくなる。それに気づいた灯我が焦ったように言葉を訂正する。
「で、でも、それまで行くのは少ないよ!俺もしたことないし。」
「そっか…そうだよね。あんしんした。」
しかし気まずい空気は霧散しなくて、二人の間の空気が重たくなる。それを破るかのように中庭に校内放送が聞こえてくる。
『1年C組葉風灯我くん。至急職員室に来てください。繰り返します、1年C組…』
「うわ…何言われるんだろ。」
「葉風最近学校に来てなかったのにな。」
「いや、原因十中八九それでしょ。」
いやだ…とつぶやきながらゆっくりと立ち上がる。いってらっしゃーいと手を振る夜安を恨めしそうにみて校舎に戻っていく。
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